「これまでのハーレーとは違う!」跨った瞬間、直感的に感じる〝新世代〟
水冷60度Vツインを搭載する『ストリートロッド』は、既存のクルーザー路線とは一線を画すアーバンスポーツとなっている。
Vツインという伝統を踏襲しつつも、750㏄というハーレーにしては排気量の小さいエンジンを積み、空冷、OHV、別体式ミッション、ドライサンプといったオーソドックスな機構と決別し、スムーズな吹け上がりを見せるSOHC4バルブを採用。足まわりも現代のスポーツバイクがスタンダードとする、前後17インチにラジアルタイヤを組み合わせ、倒立フォークやリザーバータンク別体式リアショックで武装。
そしてライディングポジションもまた日欧のスポーツネイキッドに近く、跨った瞬間に「これまでのハーレーとは違う」ということをライダーへ直感的に伝える。ニーグリップがしっかりキマり、上半身は若干の前傾姿勢でスポーツライディングを楽しもうという気にさせてくれる。
実際に走ってみてもその直感どおりで、Vツインならではの鼓動感を味わい尽くそうといったビッグツインモデルとは違い、ピックアップの鋭いエンジンをどんどん回し、ストップ&ゴーを繰り返す街乗りがエキサイティングなものになる。広大な大陸を夢見るツーリングファミリーとは明らかに異なり、都会に住む者にうってつけのジャストフィットなストリートバイクなのだ。旅の相棒として親しまれてきたハーレーが、都市ライダーに向け開発した次世代のマシンと言えるだろう。
特に気持ちがいいのは首都高速だった。トルクの太いミドルレンジを使ってクルマの流れをぐいぐいリードでき、タイトコーナーも水を得た魚のようにスイスイとこなせる。3000回転前後を使った高速クルージングが実に爽快。高速のランプを上がって横浜あたりを目指し、お気に入りのカフェでひと息つく。そんな使い方をすれば、最高の相棒となりそうだ。
車体とライダーとのフィット感の高さがスポーティな走りを生み出している
Uターンやタイトコーナーもクルッと向きを変え、まさに意のままに操れる。それはラジアルタイヤを履く前後17インチの足まわりや、扱いやすいエンジンの恩恵も大きいが、ニーグリップがしっかりできるといった車体とのフィット感の高さがもたらしているところを忘れてはならない。
言うまでもなく、ニーグリップはライディングの基本だが、スポーツスターでは残念なことにこれができなかった。燃料タンクが極端にスリムで、特に車体左側はヒザで抑え込む場所がシリンダーヘッドしかない。スポーツ派ユーザーは、ニーグリップのためのバーを追加して対応する必要があったのだった。
しかし、ストリートロッドではこれを解消。内モモからヒザ、そしてくるぶしに至るまで両足の内側をピッタリと車体に密着させることができ、高いホールド感を実現。ベースとなったストリート750より燃料タンクのマウント位置を上げ、ステップも若干ながら内側に寄せて後方へ下げ、バンク角を稼いでいることも見逃せない。積極的にカラダを使って車体をコントロールするアグレシッブなライディングに対応し、操作性を飛躍的に向上しているのだ。
もちろんそれだけでなく、エンジンは85×66㎜のボア・ストローク、749㏄の排気量はそのままに、吸気ポートやカムプロフィールを見直し、スロットルボディのボア径を38㎜から42㎜に拡大。デュアルスロットルバルブを採用し、エアクリーナーボックスや2in1マフラーも刷新したことで、パワーを18%、最大トルクを8%増している。パワフルになったと強く実感できるのは4000〜5000回転の中速域で、追い越し時の加速が一段と力強い。
ディメンションも見直され、ストリート750では32度だったフロントフォークの取付け角を27度に立て、1520㎜あったホイールベースを10㎜短縮したことでクイックなハンドリングを獲得した。
前後サスペンションの路面追従性が良く、どこからでもアクセルを開けていける扱い易いエンジンと足まわりを持ち、神経質なところがない。国産からの乗り換え、初の大型2輪としても最適なモデルだ。
〝ニーグリップ〟でSports Riding
内ももでしっかりと燃料タンクをはさみ込むことができ、スポーツライディングの基本となる「ニーグリップ」がしっかりキマる。そしてコーナーではイン側へお尻をずらすといった積極的な体重移動もしやすく、走りは自然とアグレシッブなものに。また、ステップワークのしやすさも考慮され、マフラーヒートガードには踵を乗せるためのラバーグリップもあり、確実にアンクルグリップもできる。「両ヒザは開いて乗るもの‼」と言わんばかりのホースバックポジションが特徴であるハーレーとしては、異次元の感覚なのだ!
PHOTO:松川 忍、井上 演