現在、日本のオフロードバイクシーンの中心にいるのは、日本最大のクロスカントリーシリーズJNCCだろう。2018シーズン、延べ参加台数8000台を超え、星野代表は1万台を超える日を見据え始めた。近年では、ほとんどの週末がJNCCかWEXのイベントで埋め尽くされているというから、その勢いたるや(とはいうものの、CGC開幕戦も例年通りにプレミアチケット化し、さらには20代がもっとも参加台数が多かったというのだから、世はまさにエンデューロブームだと言い切っていいに違いない!)。
JNCCを知らない人のために、開幕戦らしく概観を説明しておきたい。
日本のエンデューロは、元来「耐久」レースの意味を強く内包していて、長いオフロードレースのことを一緒くたに「エンデューロ」と呼んでいた。これ自体は、実はそう間違っていることはなくて、欧州においても、たとえば単にコースが難しいエンデューロをハード「エンデューロ」と呼ぶ。ただ、2000年代に入って日本のフェデレーションが追い始めたのが、ISDE(インターナショナル・シックスデイズ・エンデューロ)とよばれる世界大会であって、その礎には世界選手権があった。エンデューロの世界選手権も、ISDEもいわば耐久レースとは異なっていて、ラリーに近いオンタイム形式をとっていたことから、一時は「エンデューロとは、元来オンタイムエンデューロのことを言う」という風潮が強くなった。そこで、ハリケーンAAGPをはじめとする耐久エンデューロを開催していた、現JNCC代表の星野氏は、エンデューロときっぱり分けて、「クロスカントリー」と呼称するようになった。ジャパン・ナショナル・クロス・カントリーの創設である。
星野氏は、それ以前より北米の東海岸で盛んなGNCC(グランド・ナショナル・クロス・カントリー)と手を組み、ハリケーンAAGPを盛り上げてきたから、「J」NCCとなるのは自然な流れでもあった。かくして、JNCCは「SERIES」という前身のレースシリーズを経て、全日本クロスカントリー選手権を名乗っている。
現在、JNCCはトップカテゴリーのレースとして存在し、サンデーレーサー向けにWEXを展開。延べ年間8000台を超えたというのは、このJNCCとWEXを合わせた数字だ。さらに驚異的なのは、この8000台オーバーが、固定されているのではなく半分ほどが毎年入れ替わっていくこと。つまり、雪だるま式に新規層を取り込みながら、JNCCとWEXは成長しつづけているのである。
全世界のエンデューロをある意味象徴する、サザンハリケーンというレース
JNCCは、長い間、開幕をこの大阪府プラザ阪下でおこなっている。河内長野の街を眼下に望む、世界でも珍しい住宅地にあるモトクロスコースだが、それだけにそう広くはない。
この2010年代に入って、北米や南米をのぞき、世界的にオフロードバイクが走れる場所は減少傾向にある。環境保全や、騒音の問題、コンプライアンスなど様々な要因がそこにはあるのだがともかくレース主催者の命題といえば「魅惑的な、走る場所」。かといって広い場所はそうそう見つからない。だから、このプラザ阪下は「あまり広くはないが、工夫をこらしてクロスカントリーとしてのレースを成立させた」という点で、現代における全世界のエンデューロを象徴している。
具体的には、ログセクションだ。
プラザ阪下は、パドックからすぐ見える場所に、特設でログセクションを作る。これによって単にスピードがあるライダーに偏重しないようにレースをディレクションしてきた。またエンデューロ的な見せ場としても、活用されていることが、特徴だ。