亀山をトップで走り抜けていった韓国人ライダーのチェ・ホンジョンは、実はKNCCの王者だ。抜群のスピードを持っている若手を擁立して、韓国陣はチーム戦で台湾へ挑みに来た。「台湾の土はとんでもなく滑るね。タイヤはix-09w、韓国ではメジャーなハードED用タイヤになってるよ。中身はタブリスで0.4気圧くらい」とのこと。チェのスピードは、亀山で飛び抜けていたし、さらには韓国チームでタッグを組んでいたのも印象的だ。自転車のロードレースは、明確にチームでの戦い方がある。オンタイムエンデューロも、かつてはオンブラというライダーをレースに参戦させ、本命のライダーのためにスペアパーツを運んだ。いやいや、そもそもダカールラリーは今でも明確に「ウォーターボーイ」の役割を持つライダーが決められている。韓国チームが立ててきた作戦はそれだ。チェを勝たせるために、同等のレベルで走れるヘルパーを用意した。日本では、あまりない風習だ。

ともかく、トップのチェはあっという間に周回を重ねていって大差で優勝。

高橋も、食いしばって3位まで浮上してフィニッシュ。

画像5: TKOの苦さが再び、スピードに勝るKNCCライダー

そして終盤の15分くらいでトップ陣営に追いつき、3位まで浮上
特に最後の1時間くらいかな    自分に「最後まで諦めるな!」と喝を入れました
それはある日ある時、あるお姉さまからいただいた大事なお叱りのお言葉なのです
苦しい時には必ず思い出しています
それが奇跡を生んだとしか思えない  (高橋博ブログより)

画像6: TKOの苦さが再び、スピードに勝るKNCCライダー

充実する日本のエンデューロ文化と、貪欲なアジア

画像1: 充実する日本のエンデューロ文化と、貪欲なアジア

優勝したチェは、KTMディーラーの息子で、14歳からモトクロスを始めたという。だが、韓国ではモトクロスよりクロスカントリーのほうが盛んだから、主戦場をKNCCへ移した。

「なぜ巧くなったって? うーん、ユーチューブを見まくってるからかな。J・ウォーカー、B・ボルト、彼らのユーチューブをよく見ているよ。今年はエルズベルグと、サハリンのハードEDに出るつもり。来年はルーマニアクスにもでたいね」とチェは言う。

画像2: 充実する日本のエンデューロ文化と、貪欲なアジア

18歳で、もてぎのトライアル世界選手権にも参戦したウェン・マオ・チェン。今回の台湾ハードエンデューロでは4位に入った。「将来はトライアル世界戦で活躍したい。土日は8時間くらい練習しているんだけど、工業系の大学で学生をしているので、平日はバランスのトレーニングをする程度かな。将来はバイクでごはん食べていけたらうれしい」と。

日本のエンデューロは、いま静かに盛り上がっている。最たるものとしてのJNCCは年間延べ10000人参戦を目標としているし、公道を使うオンタイムレースも世界に誇れる「HIDAKA」がある。G-NETは歴史古く、難易度も非常に高いハードエンデューロで、CGCが新たなエンデューロ層を創り出している。そして、各地には名レースが散らばっていて、有力なクラブも多い。この数年、エンデューロのイベントはとにかく多すぎて、取材しきれないほどだ。はっきりいって、日本は「日本で十分にエンデューロライフを謳歌できる」国だ。

画像3: 充実する日本のエンデューロ文化と、貪欲なアジア

だが、台湾や中国では、やはりそこまでではない。黎明期だから、常に外国をみて、どんどん貪欲に世界のエンデューロを取り入れ、参戦している。そういった流れの中で、極東ではエンデューロコミュニティがグローバルに形成されつつあるのを、台湾でひしひしと感じた。特に、いろんな意味で今は世界との距離が近い。だから、彼らが世界とむすびついて、爆速的にエンデューロカルチャーを高めていくのは遠い未来の話ではないだろう。

日本は、竹内氏が極東の情報を伝えるまで、なかなか状況を理解できずにいた。ガラパゴス的に進化していくのは、悪いことではないけれど、アジアに出て行くという選択肢もエンデューロにはある。そして、それがとても愉しく、ライダー個々人のエンデューロライフを底上げしてくれることにも、今後は注目してみてはいかがだろう。

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