純正でスープアップと対策が行われていたJ系
この車両は、YouTubeのミーティング系映像で見たというブルドックMk.Ⅱのスタイルを気に入ったオーナーが、そのレプリカでとオーダーした2019年後半作のGT-M(コンプリートカスタム)だ。
前後17インチで最適化した車体まわりに、今のGT-Mで標準化した仕様のカワサキZ1000J系ヘッドエンジンを搭載し、車両のフィーリングは現代的かつ上質になっている。このエンジン仕様にする理由は何か。
「J系ヘッドは、簡単に言うなら少ないリスクで出力を高めることができます。Z1のINφ36/EXφ30mmに対してJではINφ37/EXφ31mmなどとバルブ径も大きくなりますし、ポートも同様に拡大されています。ハイリフトカムを入れる場合でもバルブ挟み角などの安全マージンを確保した上で組み込める。つまりJ系は純正でチューニングと対策がされたヘッドと言えます。
その上でまだ先にチューニングの余地も残されますから有利な点も多い。前期型Zでも同じことはできるんですが、まずJ系同等にする分の手間がかかります。ですからJ系ヘッドはローリスク、つまり積み替えによってハイチューンの効果が出せるということです。
同じ角型でもZ1000Mk.Ⅱは前期型=Z1~Z1000の丸型Zから点火系などが変わって、J系ではスープアップ的な変化があった。ヘッドはただ載るだけでなく、カムチェーンがハイボチェーンに代わったり、ヘッドカバー側のガイドローラーがスライダーに代わったりしてますから、そうした部分も合わせて変えていきます。
だからと言ってGT-Mで全部J系にするのかと言うとそうではなくて、Z系がいいという方には無理にJ系を勧めることはありません。それでも前述のようにJ系+チューニング同等の内容を作ることもできます(同店で作業進行中のデモ車、GT-M 002もZ1にこだわっての丸型ヘッドを使っている)。空冷Z系という点では基本は同じ。あとは好みの部分です」
J系ヘッドのメリットは明快。ただブルドックでは、そのメリットをより生かすために多くの工夫を行っている。GT-Mで定番化したピスタルレーシング製鍛造ピストンや、超々ターカロイ鋳鉄製シリンダースリーブには和久井さんがZにより良いものを探している際にPAMSの紹介で巡り会って定番化。クロスミッション(5/6速あり)やTSSスリッパークラッチも用意し、新たにシフトドラム、同ロッドを新作。
発電や充電を担うダイナモワンウェイクラッチキットもその一環。その他のショートパーツも含め、GT-Mを含めたZ系に長く乗るための良質なものを作り、使っているわけだ。しかも、作るならば機能や質は純正以上にしたいという考えで作られる。これでライダーの乗る時、あるいは整備の際の不安は大きく抑えられる。
この車両はそんなベースとしてのJ系ヘッドの優位性を生かしつつ、このようなブルドックの考えを投影したパーツ群が多く組まれたもの。1200cc、6速クロスミッションにスリッパークラッチ等のパッケージは、車両フィールさえも今のバイクと変わらないくらいに現代的かつ上質に仕立ててくれているのだ。
Detailed Description 詳細説明
取材協力:ブルドック
記事協力:ヘリテイジ&レジェンズ
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