JNCCデビューは、鈴蘭のキッズ&トライ
ヨシカズが初めてJNCCに出たのは2012年の鈴蘭。クラスはキッズ&トライ。当時、ヨシカズは小学6年生で、一緒に出場した妹のアスナは小学4年生だった。コンディションは雨上がりのマディ。
「当時キッズ&トライは今みたく短いコースじゃなくて、ゲレンデを一番上まで使ったんです。ヨシカズもアスナも、ちゃんと一番上まで登ったんですよ」と一洋さんは誇らしげに語る。
「初めての鈴蘭で、頂上から見た景色がめちゃくちゃ綺麗で、そこから本格的にクロスカントリーをやりたいって思ったんです。あと前夜祭で家族や仲間と一緒にやるバーベキューが何よりも楽しみでしたね」とはヨシカズの談。今はIAライダー、COMP-AAライダーのヨシカズだが、スタートは僕らサンデーライダーと同じ、「楽しい前夜祭と最高の景色」からなのだ。
そんなヨシカズが本格的にその頭角を現すキッカケとなったレースが、2015年のAAGP。雨の爺ヶ岳だった。マシンはYZ250FX。この時はFUN-Cクラスだったが、台数が多すぎてFUN-Cだけ別にスタートが作られた。なんとFUN-Cだけで162台。ところが、ヨシカズがスタートしてすぐの1コーナーで転倒し、それをキッカケに大渋滞が発生したのだという。
「1周目は100番手以下で返ってきたんですけど、そっから100台抜いて優勝しちゃいましたね。あいつはキッズで初めて優勝した時もすごいマディだったし、昔から雨だとリザルトがいいんですよ。上手くもないし速くもないんですけど、子供の頃から「マディの方が速いよな」って言い続けていたら、本当にマディに強くなってました」と一洋さん。
翌2016年は、飛躍の年となった。爺ヶ岳、鈴蘭、ほうのきとFUN-Bクラスで3連続優勝。さらにほうのきではFUN-BながらFUN総合でも優勝を果たし、次の栗子国際ではFUN-Aに昇格して、そこでもいきなり優勝してしまった。
そして、翌年からはいきなりCOMP-Aでのエントリーが許された。
このあたりから、僕は土曜日の前夜祭で保坂家にお邪魔するようになって(当時中学生のアスナに折り紙を教わりながら)、いろんな話を聞いているうちに、ヨシカズの将来に大きな期待を寄せるようになっていた。
その大きな期待が確信に変わったのは、2017年の夏のJNCC8耐G。宇津野泰地と組んで総合優勝を飾った時だった。そして翌2018年には渡邉誉、佐々木一晃をメンバーに加え、平均年齢18.5歳という若いチームが、日本人チーム最高成績の総合3位を獲得した。
そしてヨシカズは今年、COMP-AAクラスで走っている。彼こそが、JNCC始まって以来初めてのキッズ&トライからCOMP-AAまで駆け上がった最初の一人なのだ。