2022年11月5日〜6日、2デイズで開催される韓国のハードエンデューロレース「SANLIM EXTREME ENDURO(サンリム・エクストリーム・エンデューロ)」に4人の日本人ライダーが出場している。ライダーは全日本ハードエンデューロ選手権の#1山本礼人、# 3原田皓太、#4水上泰佑、#6佐々木文豊。
いよいよレース1日目が始まった。早朝7時にレースを主催するバイクショップ 、ユン・ファクトリーに集合したチームジャパンは、そこからバイクに乗って約10分離れたスタート地点まで移動した。永同郡の朝の気温は-3℃。寒さに凍えるライダーたちのためにヒーターがたくさん用意されていた。
スポンサーのテントやイベントのバルーンアーチなどが設置され、まるでRedBull主催の世界選手権のような雰囲気が会場を包んでいた。
車検を終えたバイクが整然と並べられ、会場内の緊張感も増してくる。バイクはKTM、ハスクバーナ 、GASGAS、Shercoがほぼ100%を占めていて、日本車は一台も見当たらない。また、大会スポンサーになっていることもあり、Leattのライディングギアの使用率が圧倒的に高かった。
各自が用意したGPS機器にDAY1のルートがインプットされ、受付で配られる。ライダーはこの赤線とわずかなコーステープを頼りに正しいコースを探し、ゴールを目指す。
2018年、2019年と日野ハードエンデューロにも来日してくれた台湾のトップライダー、杜中豪(写真左端)とチームジャパン。
受付を済ませたライダーはオフィシャルフォトグラファーにより1人ずつ撮影される。
韓国では先日の梨泰院事件を受けて、自粛ムードになっており、このレースも本来よりもかなり規模を縮小して開催されたという。
オープニングセレモニーでは韓国のトップライダー尹根洪(ユン・ドンゴン)が挨拶。実はこのユンこそが韓国におけるハードエンデューロの第一人者。2015年にサハリンのハードエンデューロラリーに参加したことでハードエンデューロの楽しさに目覚めたユンは、それまでクロスカントリー競技しかなかった韓国でこのSANLIM EXTREME ENDUROを普及させていった。サハリンの元チャンピオン、セルゲイを韓国に招いて教えを乞い、レースのフォーマットもサハリンのものを踏襲している。韓国の現チャンピオン・チェホンもウラジオストックにあるセルゲイの家に2週間泊まり込み、修行をしたとのこと。
なお、大会名に使われているSANLIMは「山林」の意味。
開会式が終わるとすぐに暖機運転が開始される。
開会式会場となった公園の石段を駆け上るところからレースはスタートする。3台1組で、ゴールドクラスの#1、シルバークラスの#101、ブロンズクラスの#201が同時にスタート。1分間隔で次の組がスタートしていき、各ライダーのスタート時間からゴールまでのタイムで順位が決まる。
チームジャパンは#24水上泰佑、#25佐々木文豊、#27原田皓太、#30山本礼人の順でスタート。写真はスタートして30分ほどの地点、川を渡る橋の上から取材班を見つけ、ウイリーでアピールする山本。この時点ですでに一つ渋滞を乗り越えており、山本は佐々木、原田をパスしてチームジャパンの2番手へ浮上していた。
レース時間が2時間ほど経過した時に取材班が到達したヒルクライムでのワンシーン。ここはシルバークラスとゴールドクラスの共通ルートで、シルバークラスには派手なクラッシュを犯すライダーも多かった。
コースは全般的にかなり路面が乾燥しており、硬い土の上に細かい砂が積もっているようなコンディション。ヒルクライムではこのように砂を浴びてしまうライダーも多く見られた。しかも、たまに岩が埋まっているからたまらない。
チームジャパンは全員がこのヒルクライムを軽々と一発登頂。
こちらはコース内に2箇所設置されたチェックポイントの一つ、CP1。CPでは10分間の休憩義務があり、食料と水、ガソリンの補給を受けることができる。また、CP1は14時、CP2は15時までに通過しなければタイムアウト、その場でDNFとなってしまうルールだ。
チームジャパンの中でCP1に一番に現れたのは山本。#30でゴールドクラス最後尾のスタートとなった山本だったが、CP1への到着はクラスで4人目。好調にレースを進めていた。
山本がCP1を出発してからおよそ30分後、原田と佐々木が到着。どうやら登らなくてもいいはずのヒルクライムを2人で協力して押し上げていたようで、そこでだいぶタイムロスしてしまったとのこと。
チームジャパンで最初にゴールしたのは山本で、CP1での順位と同じく、ゴールドクラス4位。1位は韓国チャンピオンのチェホンで山本よりも1時間以上早くゴールしている。2位はルーマニアクスのシルバークラスを完走しているライダーで、チェホンから10分ほど遅れてゴール。そして3位は#1のライダーで、山本とのタイム差は約1分。最終リザルトは2日間の合計で出るため、DAY2での逆転3位入賞は十分に期待できる。
山本礼人
「ルートでスタンディングして走っているとナビを見ることができなくて、たくさんミスコースしてしまいました。さらにゴールドクラスのラインの入り口がすごく狭くて分かりづらい設定で、しっかりGPSを見ていないとすぐに間違えてしまいます。
コースはキャンバーの上に落ち葉がたくさん積もっていてすごくスリッパリーでしたし、今日は下りがメインのコースということで2回くらいバイクを降りて押す場面もありました。走行時間は全部で5時間30分くらいですね。疲れはしましたが、ルーマニアクスの1日の1/3くらいの疲労度なので、体力的にはまだまだ余裕です」
続いて佐々木が8位、原田が11位でゴールした。水上は残念ながらCP2でタイムアウトとなり、公道を走ってゴールポイントに帰投。
佐々木文豊
「細かい砂がすごく多いのですが、路面のグリップはめちゃくちゃいいですね。ただ、体や頭に木の枝がすごく当たるので、走っていてすごく痛いです。ルートがわかりにくいので、他のライダーの後ろについていきたいのですが、砂埃がすごくてあまりついていけないという難しさがありました。
韓国入りするまでバイクの車種がわからなかったので、クロコダイルシートを持ち込めず、久しぶりにノーマルシートで乗りましたが、シートのグリップに苦労しましたね。あとこれはルーマニアでも感じたことなのですが、湿度が少ないせいかマシンのパワーがすごく大きく感じます」
「ブラックバレー広島の前日に指の怪我が悪化して一週間入院していたので、すごく久しぶりのライドでした。右手の中指を曲げるとまだ少し痛いのですが、なんとか問題なく走れています。
コースは小さい石がたくさんあってホワイトバレー松原や日野に似ていると思います。難しくて行けないようなところはないのですが、コースが本当にわかりづらくて、それでだいぶ順位を落としてしまいました。僕らは全員ゴールドクラスに出ていたのですが、シルバークラスのライダーもみんなすごく上手かったです。
途中で前転してフロントブレーキディスクを曲げてしまったのですが、レース後に交換してもらうことができたので明日も安心して走れます」
水上泰佑
「僕は日本人の中でトップを走っていたのですが、前半のキャンバーで崖落ちしてしまって、そこで1時間くらいタイムロスしてしまいました。そのためCP2の制限時間に間に合わず、そこでDNFとなってしまいました。
あのキャンバーはトップ数台が通過した時点で崩れてしまったのですが、韓国チームはロープを持ってきていてみんなで一台づつ引っ張り上げていましたが、僕らは準備不足でそれができませんでした。DAY1はDNFになってしまいましたが、DAY2も走ることができるので、明日も楽しみたいと思います」
ゴールドクラスを完走した山本は韓国メディアのインタビューを受けた。インタビュアーは2019年の台湾遠征の時も会ったサッコー。なお、今回Off1.jp取材班はこのサッコーの車に同乗させてもらい、撮影していた。
ゴールしたライダーには地元で使える商品券が30000ウォン(約3000円)が渡され、夕食や翌日の朝食などに使うことができた。
ユン・ファクトリー に飾られていたSANLIM EXTREME ENDUROのスタッフの集合写真。彼らの尽力がこの素晴らしい大会を支えている。