カジュアルにも楽しめるが、秘めたポテンシャルは相当高い
カワサキの250㏄ロードスポーツにはフルカウルを装着した「ニンジャ」と、ネイキッドスタイルの「Z」があり、それぞれに2気筒モデルと単気筒モデルがある。古くからのライダーはカワサキ=重量車といったイメージを持っているかもしれないが、現在のカワサキは軽二輪クラスにも積極的だ。これは東南アジアをメインとする新興国市場に対応するためだが、日本のライダーにとっても選択肢が増え、市場拡大に貢献している。
国内外のメーカーが数多くの車種を投入している250クラスだが、その中でもZ250SLは東南アジアで売れ筋の2スト150㏄モデルに代わる車種という使命も持つだけに、ライバル車たちより一回り以上コンパクトな車格。148㎏という車重も燃料や冷却水、オイル類を含んだ装備重量表記だから、約10年前まで使われていた乾燥重量表記なら130㎏そこそこという、全盛期の2ストレプリカ車に近い数値。しかもアップハンドルだから取り回しやすさは言うことなしだ。
SLのエンジンはオフロードモデルのKLX用をベースに、ロードスポーツにふさわしい高回転パワーと小気味いいフィーリングを得るためのチューニングを施したもの。単気筒エンジンとしては低中回転トルクがやや細いが、車重が軽いので発進でモタつくようなことはない。本領発揮は約7000回転から1万回転で、この回転を保つように6速ミッションを駆使する走りは実に楽しい。大型車のようにとんでもない速度にはならないし、パワーリフトやスライドも起きないから、思い切りスロットルを開けられる。
ミニサーキットや峠道なら2気筒車よりも速く走れる!
ストリートでは充分過ぎる動力性能で、ミニサーキットや峠道なら2気筒車よりも速く走れるはずだ。高速走行ではエンジン回転が高めなので快適とは言えないが、100㎞/h+α程度の巡航はまったく問題なくこなせる。
意外だったのはハンドリングの鋭さだ。ハードな設定の前後サスペンションとライバル車よりも1サイズ細い前後タイヤ、そしてアップハンドルで、文字どおりヒラヒラと進路を変える。ブレーキングやコーナリングでの姿勢変化が少なく、ライダーは余計なことを考えずにバンクさせるだけでスパッ! とコーナーを切り取れるのだ。こうしたダイレクトな反応は、かつての2スト125㏄モデルに近い。ただ、標準装着のTT900はグリップ力が今ひとつ。スポーツライディングを楽しむならTT900GPなどの高性能タイヤに履き替えたほうがいい。逆にストリートメインならリアサスのイニシャルを弱めることで乗り心地が改善する。
ネイキッドスタイルの小柄な車体と必要充分な動力性能で高いコミューター適性を備えているが、秘めた実力は相当にスパルタン。普段の足代わり+ときには本気のスポーツライディング、といった使い方に応えるキャラクターで、エントリーライダーからベテランまで満足させてくれるはずだ。
全長×全幅×全高:1935×700×1015㎜
ホイールベース:1330㎜
シート高:785㎜
車両重量:148㎏
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
総排気量:249㏄
ボア×ストローク:72×61.2㎜
圧縮比:11.3
最高出力:29PS/9700rpm
最大トルク:2.2㎏-m/8200rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:11ℓ
キャスター角/トレール:24度/90㎜
変速機形式:6速リターン
ブレーキ形式 前・後:φ290㎜ディスク・φ220㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後:100/80-17・130/70-17
価格:43万7400円
(PHOTO:赤松 孝、南 孝幸、森 浩輔)