画像: <世界耐久>ボルドール24時間でトリックスターが快挙達成!
~フル参戦2年目のTSRホンダは5位発進~

日本の2チームが2016-17世界耐久選手権にフル参戦!

この週末は世界耐久選手権「開幕戦」ボルドール24時間耐久レースが行なわれました。2016年も秋になって「開幕戦」です。そう、ここんところ何度も書いているように、世界耐久選手権は、この「2016」ボルドール24時間が開幕戦となり、「2017」鈴鹿8時間耐久が最終戦となるのです。……とはいえ、第2戦は2017年3月のポルトガル・ポルティマオ12時間耐久なので、2016-17選手権、って感じも薄れちゃうんだけどね(笑)。年内にもう1戦、たとえばカタールとかでやってくれたら、連続したシリーズ戦って感じがするんですが、その案もなくなっちゃったみたいです。
ここまで世界耐久といえば、日本のファンには鈴鹿8耐がそのシリーズの一戦だ、ってイメージでおなじみだったはず。でも、この「2016-17」は今まで以上に注目したくなります。それは、日本から「TSRホンダ」と「トリックスターレーシング」がフル参戦を表明しているからです。もちろん、この2チームは開幕戦から出場! 特にTSRは、8月末の2016年シリーズ最終戦・オシャースレーベン8時間耐久にも出場して、そのままボルドールの事前テストにも参加していましたから、もう毎週8耐の準備してる感じ、でしょうか。

画像: 左から渡辺一馬、藤井正和監督、伊藤真一、ダミアン・カドリン、そして第4ライダーのアルトゥーロ・ティゾン

左から渡辺一馬、藤井正和監督、伊藤真一、ダミアン・カドリン、そして第4ライダーのアルトゥーロ・ティゾン

その開幕戦、ボルドール24時間耐久は、これが第80回目! 鈴鹿は来年で40回大会ですから、すげーな、倍の歴史があるんですね。そのボルドールには、当然のように選手権レギュラーチームが勢ぞろいしました。チャンピオンチームであるスズキ・エンデュランス・レーシング・チーム(S.E.R.T.)はもちろん、GMT94ヤマハ、SRCカワサキ、ヤマハ・オーストリア・レーシング・チーム(YART)、BMWモトラッドらも、もう新シーズンイン。ここに、TSRホンダとトリックスターカワサキが合流したわけです。
ボルドールでは、事前テストから日本からの刺客が大注目! まずTSRホンダは、渡辺一馬/ダミアン・カドリンに加え、伊藤真一の参戦を発表。今年で50歳になる(!)伊藤は、日本ではもちろん、ワールドクラスのレジェンドでもありますから、これで耐久選手権は大騒ぎ。さらにトリックスターは、出口修/井筒仁康/エルワン・ニゴンのラインアップで、事前テストからトップタイムを連発! ドライでもウェットでも、昼でも夜でも速い日本からのニューフェイスに、ボルドールは騒然となったことでしょう(ちょっと大げさかな・笑)。トリックスターは2013年のこの時期にも世界耐久の最終戦ル・マン24時間に出場していますよね。あの時は出口修/芹沢太麻樹/寺本幸司組でした。

画像: ニゴンの走行を見つめるチームクルー。井筒、出口の顔はもちろん、メカニックの中山さんもいますね。ホント鈴鹿のピットみたい

ニゴンの走行を見つめるチームクルー。井筒、出口の顔はもちろん、メカニックの中山さんもいますね。ホント鈴鹿のピットみたい

世界の強豪チームに割って入る日本チーム!

フリープラクティスの1本目(FP1)はGMT94が取りました。GMTはわずか1ポイントで2016年の耐久王の称号を取り逃がしたチームですが、ヤル気ですね、燃えてますね。2番手は元GPライダーのランディ・ドゥ・ピュニエが加入したSRCカワサキ、3番手にS.E.R.T.が入って、BMWモトラッドとYARTをはさんで、トリックスターが6番手につけます! TSRは8番手、ただTSRはご存じのとおり決勝こそすべて、のチーム戦略なので、この順位はまるで気にしていないでしょう。
初日午後のQP1もGMT94がトップタイムをマークして、S.E.R.T.、SRCカワサキをはさんでTSRが4番手、トリックスターが7番手。初日の総合順位は①GMT94/②S.E.R.T./③SRCカワサキ/④TSRホンダ/⑤ホンダエンデュランス/⑥YART/⑦トリックスター/⑧BMWモトラッドで、夜間走行では①GMT94②S.E.R.T.③YART④トリックスター⑤SRCカワサキって順位。この辺が世界耐久のトップチームです。ちなみに世界耐久は鈴鹿を除いて、メンバー2人の合計・平均タイムでポジションが決まります。2人がまんべんなく速くないとダメ、ってことですね。

画像: 写真の渡辺一馬は雨のQP2でトップタイムをマーク! レースでは夜間2時間連続走行を見せるなど、世界の場でもまれ、伊藤とともに走り、ぐいぐい成長中!

写真の渡辺一馬は雨のQP2でトップタイムをマーク! レースでは夜間2時間連続走行を見せるなど、世界の場でもまれ、伊藤とともに走り、ぐいぐい成長中!

2日目のQP2は雨。第1ライダーはトリックスターのニゴン、TSRの伊藤が1-2を取って、第2ライダーではFCRのダミアンがトップ、トリックスターの出口が3番手、第3ライダーではTSRの渡辺一馬がトップタイムを奪取! しかし、当然ながらドライのQP1からタイムは伸びず、QP1のポジションのまま、ポールポジションはGMT94が獲得しました。
決勝日朝(っていうか土曜日の昼イチ)のウォームアップは、①YART②GMT94③S.E.R.T.の順。トリックスターが8番手、TSRは10番手で決勝レースに臨みます。
「年が変わらないうちから16年仕様から17年仕様に交代、変更するっていう初めての経験が大変で、それを乗り越えて開幕戦に臨んでいます。2016年シーズンに(鈴鹿8耐以外の)耐久に出場したことで、耐久ってレースは何をしていいのか、何をしたらダメなのかが明確にわかってきている。マシンのトップスピードが遅くてね、抜いても抜いてもストレートで抜き返されちゃう厳しいレースだけれど、耐久レースらしい仕事をして、80回目という歴史あるボルドールを制したいよね」とは藤井正和監督。
その藤井さんに突然声をかけられてボルドールまでやって来た伊藤さんは
「レーシングマシンに乗るのは2~3か月ぶり、ポールリカールは10年ぶりですけど、楽しんでやってます。このCBRは開発の段階から関わっているから、うまくマシンをセッティングして、一馬とダミアンがラクに乗れるように仕上げていきますよ」と語っていました。
ちなみに伊藤さんが藤井監督に急にさらわれたせいで、オートバイ誌の取材日が急きょ変更になって編集部がアタフタした、って話はナイショです(笑)。

画像: スタートから#111ホンダエンデュランス、#11SRCカワサキがトップへ しかしすぐに#1S.E.R.T.が首位に立ち、その後24時間を制圧します!

スタートから#111ホンダエンデュランス、#11SRCカワサキがトップへ しかしすぐに#1S.E.R.T.が首位に立ち、その後24時間を制圧します!

4周目にトップに立ったS.E.R.T.が独走!

決勝スタートは土曜日15時。ホールショットは#111ホンダエンデュランスが取り、すぐに#11SRCカワサキが、そして#1 S.E.R.T.がトップで通過。#10トリックスターは、スタートライダーをニゴンとして、1時間終了後に3番手につける素晴らしい出だし。しかし#5 TSRはスタートで渡辺が出遅れて20番手あたりからのスタートで、1時間後には10番手あたりまでポジションアップ。ポールポジションのGMT94は、なんと最初の2時間で2度のクラッシュを喫してしまい、おまけにオーバーヒートの症状も出たことで、大きく30番手以降まで後退してしまいます。#7 YARTはガス欠で1時間経過時を18番手で通過し、BMWモトラッドはエンジントラブル、エイプリルモトはギアボックストラブルで脱落。1時間終了時のトップはS.E.R.T.で、SRCカワサキ、ホンダエンデュランス、トリックスター、TSR、YARTがトップ6のオーダーでした。

画像: ポールシッターのGMT94に不運が次々と 序盤に2度の転倒を喫して、そのあと約20時間かけて追い上げに追い上げを重ねました

ポールシッターのGMT94に不運が次々と 序盤に2度の転倒を喫して、そのあと約20時間かけて追い上げに追い上げを重ねました

ここから上位陣は安定して周回を消化し、最初の8時間、ってゆーか鈴鹿ならこれでオシマイなんだけど(笑)、ボルドールではまだまだ1/3しか終わってない時間帯。そう考えると、やっぱり24時間耐久ってスゴい! この8時間経過の順位でTOP10チームまでボーナスポイントが与えられるんですが、①S.E.R.T.②SRCカワサキ③YART④トリックスター⑤MACOレーシング⑥TSRという順。6時間目までトップグループにいたホンダエンデュランスは転倒で大きく順位を落としてしまいます。セーフティカーも何度も介入して、TSRはその時間帯にピットに入って、調子が悪かったシフターを交換するというクレバーな戦略をみせます。
このあたりまでで目立つのは、とにかくチャンピオンチームS.E.R.T.の強さ! 8時間走って2周差という僅差ですが、ミスなくハイペースでトップを独走、2番手以降が集団で走ってる状態です。そして!ここまで大健闘だと現地でも騒がれたのがトリックスターで、S.E.R.T.が逃げた後も、常に2位集団でレースしています。

画像: ポールリカールの地をHYODツナギとAraiのヘルメットが疾走! 写真は出口。いつかじっくり話を聞きたい

ポールリカールの地をHYODツナギとAraiのヘルメットが疾走! 写真は出口。いつかじっくり話を聞きたい

ポールシッターGMT94が最下位から24時間かけて9位フィニッシュ!

この先は、TSRこそル・マンで経験があるとはいえ、トリックスターにはまだまだ未知な深夜のレース。それでもトリックスターは#7 YARTと2番手争いを繰り広げ、TSRは一時、アクスルシャフトのトラブルでポジションを下げたSRCカワサキと5番手争いを展開。そして、2度目のボーナスポイントが発生する16時間経過ごろ(朝方ですね)には、ついにトップグループの一角、#7 YARTがエンジントラブルで後退。16時間を経過したあとに、442周でリタイヤしてしまう。レースは、S.E.R.T.が独走し、2番手に9周のリードを確保。その2番手は、なんとなんとトリックスターで、現地のニュースでも
「Trick Star Racing, which has made a sensational Bol d’Or debut. A Suzuka 8 Hours regular, the Japanese team is racing its very first Bol D’Or with riders Erwan Nigon, Osamu Deguchi and Hitoyasu Izutsu.」
と伝えられています。ゆるーく翻訳すると「鈴鹿8耐のレギュラーチームが、まったく初めてのボルドール24時間耐久でセンセーショナルなデビューを飾っている!ライダーはエルワン・ニゴン、オサム・デグチ、ヒトヤス・イヅツだーッ!」みたいな感じでしょうか。
終盤の8時間には、17時間目ごろにトリックスターがSRCカワサキにかわされてしまうものの、トップのS.E.R.T.は変わらずトップを独走し、ついに2番手SRCカワサキとの差をほぼ10周とし、そのまま24時間の超長丁場で687周してトップのままフィニッシュ! S.E.R.T.は最初の4ラップでトップに立ったまま、その座を譲ることなく、8/16時間のボーナスも10+10のフルポイントで獲得する圧勝! 2位にフランスの24時間耐久に異常に強いSRCカワサキ、3位になんとなんと、初挑戦のトリックスターレーシングが入りました。
そして24時間耐久らしい出来事がひとつ。ポールポジションを獲得した、2016年世界耐久ランキング2位のGMT94ですが、序盤に2度の転倒、オーバーヒート症状が出て、一時は50番手あたりまで転落したというのに、最終的には9位まで追い上げてフィニッシュしたんです。とはいえ、8時間目の順位は37位、12時間時点での順位は24位――24時間耐久でいちばん助かったのが、実はGMT94かもしれません。

画像: 表彰台に上がったトリックスターレーシング まったくのプライベートチーム、初挑戦で素晴らしい活躍をみせました! ちなみにウィーク中にマークしたトリックスターZX-10Rのトップスピードは343km/h…だと?

表彰台に上がったトリックスターレーシング まったくのプライベートチーム、初挑戦で素晴らしい活躍をみせました! ちなみにウィーク中にマークしたトリックスターZX-10Rのトップスピードは343km/h…だと?

画像: ポールリカールの夜間を走る伊藤真一 チームも伊藤の疲労を考慮して走行スティントを組み立てました

ポールリカールの夜間を走る伊藤真一 チームも伊藤の疲労を考慮して走行スティントを組み立てました

S.E.R.T. 常勝チャンピオンチームの貫録

フル参戦2年目のTSRは5位で開幕戦としては上々の出来でしたが、藤井監督が心配していた通り、トップスピードをはじめ、マシンの設計年度の古さによる戦闘力の問題が露呈した感じでしょう。だってCBR1000RRはわずか4チームしか出場していなくて、FCRとトップチームの双璧をなすはずのホンダエンデュランスレーシングチームも、転倒のほかマシントラブルも発生してリタイヤしていますからね。

画像: さすが2016世界耐久チャンピオンチーム 8/16時間のボーナスも手にしてのフルポイントスイープ!

さすが2016世界耐久チャンピオンチーム 8/16時間のボーナスも手にしてのフルポイントスイープ!

画像: S.E.R.T.のメンバーは変わらず。左からエティエンヌ・マッソン、アントニー・デルホール、バンソン・フィリップ、小さく背後にドミニク・メリアン監督

S.E.R.T.のメンバーは変わらず。左からエティエンヌ・マッソン、アントニー・デルホール、バンソン・フィリップ、小さく背後にドミニク・メリアン監督

それにしてもS.E.R.T.は強かった! マシン自体は、ホンダとともに設計年度が古いオールドマシンのはずなんですが、S.E.R.T.の耐久プロフェッショナルチームとしての戦闘力が高いんでしょう。転倒やトラブルで23チームが戦列を去ったボルドールで、26回のピットインで、そのピット滞在時間は全チーム最短の41分! 平均すると95秒くらい、長いじゃん、と思っちゃいますが、24時間耐久は8耐では見られないキャリパー交換(ブレーキパッド交換よりこっちの方が速い)やエンジンオイル注入なんてピット作業もありますからね。
「S.E.R.T.にとってもすばらしく驚くべきレースで、チームとGSX-Rというマシン全体で勝ち取った勝利だ。ボルドールで、4周目からリードしてずっとトップを守れるなんて、すばらしい勝利だった、チーム全員が本当にハッピーだったね」(ドミニク・メリアン監督)
これで2016-17シーズンが始まったとはいえ、第2戦は2017年3月のポルティマオ12時間耐久――ここにはNewCBR1000RRとNewGSX-R1000が、なんらかの形でデビューしているはず。そんなことも含めて、世界耐久にますます注目が集まりそうです!

■2016-17 世界耐久選手権 開幕戦 ボルドール24時間耐久レース
優勝 スズキ・エンデュランス・レーシング・チーム GSX-R1000 687周
2位  SRCカワサキ               ZX-10R   678周
3位 トリックスターレーシング         ZX-10R   676周
4位 MACO Racing Team            YZF-R1   675周  
5位 F.C.C. TSR                CBR1000RR 674周
6位 MOTO AIN CRT              YZF-R1   669周

画像: 2016年は無勝利だったS.E.R.T.が「2016」年初優勝! タイヤメーカーは1位ダンロップ、2位ピレリ、3位ダンロップでした! ブリヂストンの世界耐久での活躍はTSRにかかっています

2016年は無勝利だったS.E.R.T.が「2016」年初優勝! タイヤメーカーは1位ダンロップ、2位ピレリ、3位ダンロップでした! ブリヂストンの世界耐久での活躍はTSRにかかっています

□2016-17 世界耐久スケジュール
開幕戦 9/18 フランス   ボルドール24時間耐久
第2戦 3/18 ポルトガル  ポルティマオ12時間耐久
第3戦 4/16 フランス   ル・マン24時間耐久
第4戦 5/20 ドイツ    オシャースレーベン8時間耐久
第5戦 6/24 (開催国未定)ヨーロッパ8時間耐久
最終戦 7/30 日本     鈴鹿8時間耐久

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