とびきりの個性とスタイルを楽しめる貴重な限定モデル
XSR900は、まさにストリートスポーツのサクセスストーリーと言うべきバイクだ。MT-09の3気筒エンジンとダイキャストアルミフレームをベースに、アップグレードしたサスペンションと素晴らしいトラクションコントロールを搭載し、見事なミドルウエイトロードスターに仕立てたのだから。
限定モデルである、このXSR900アバルトは、ライディングポジションを見直し、オールドスタイルと最新テクノロジーの融合ともいうべき味わい深いスタイルに仕立て直され、これまでのものとは違うクラシックスポーツに仕上がっている。しかし、このXSR900アバルト、誰にでも似合うような、ありふれたバイクではないのだ。
ヤマハはこのバイクを、フィアット傘下の自動車チューニングブランド・アバルトとの特別なコラボレーションのもとに造り上げている。これはフィアットがヤマハのMotoGPマシンのスポンサーとなるなど、両者の間に長期にわたる協力関係があったからこそ成しえたコラボだ。
世界でわずか695台が限定生産されるこのバイクは、ヤマハの純正アクセサリーや、既存モデルのパーツを上手に使って造り上げられている。ビキニカウルはXJR1300レーサー(XJR1300Cのカウル付きモデル)用を巧みに流用していて、ハンドルバーはXSR900のアクセサリーカタログに載っているアイテム。アクラポビッチのチタンエキゾーストや「アフターバーナー」デザインのテールカウルはオリジナルで、ソロ仕様のスポーツシートやグレーとレッドに塗られ、アバルトのロゴをあしらったタンク、前後フェンダーなどは完全な専用品だ。
実車のライディングポジションはまさに過激。ハンドルはまるで1960年代のレーサーみたいに低くセットされ、ロンドン北部に集まるライダーたちが乗り回すローダウンレーサーのようで、上半身はかなり前傾し、上腕や手首への負担が増している。これになじむ最高の方法はただひとつ。このポジションに見合うスピードで飛ばすことである。
そういう点では、このアバルトは非常に良い素性を持っている。3気筒エンジンはトルキーでパワフル。フィーリングもソリッドだし、115馬力のパワーは人間が扱うにはちょうどいいスペックで、ほどよいスリルと楽しさを味わうことができる。サスペンションもMT-09に比べれば非常に洗練されていて、ブレーキもコントローラブルだ。
こうしたパワーとシャシーセッティングをこのライディングポジションで味わうなら、休日にちょっと楽しむくらいがちょうどいい。高速道路の大渋滞にこのバイクを持ち込むにはちょっと気が引けるが、ショートレンジのツーリングで、ワイディングをヒラヒラ走って楽しむのであれば、これほどカッコいいマシンは他に見当たらないと思う。
XSR900 ABARTH 主要諸元
全長×全幅×全高 2075×815×1135㎜
ホイールベース 1440㎜
最低地上高 135㎜
シート高 830㎜
車両重量 195㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
総排気量 847㏄
ボア×ストローク 78×59.1㎜
圧縮比 11.5
最高出力 115PS/10000rpm
最大トルク 8.9㎏-m/8500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 14L
キャスター角/トレール 25度/103㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ298㎜ダブルディスク・φ245㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17
DETAIL
「アバルト」は熱い走りの象徴!
アバルトとは、かつてフィアット社の小排気量モデルをベースに、エンジンチューンやレーシングカーの製作で名を馳せた会社で、創設者、カルロ・アバルトの誕生月の星座をモチーフとしたサソリのマークで有名。現在ではフィアットのブランドのひとつになっていて、高性能マシンの代名詞的存在。