流してヨシ、飛ばしてヨシの守備範囲の広さも魅力!
X-ADVはNC750シリーズのインテグラから派生したアドベンチャーテイストのモデル。DCT仕様のみのラインアップで、レイアウトはインテグラに近いが、シート下には大きなスペースがあるし、フォルムはスポーティでアグレッシブ。ただ、この「テイスト」というのが微妙だ。見た目はタフなアドベンチャーっぽいが、アドベンチャーらしい走りをしてはいけないのか? ホンダは「やってみろ」とは一言も言っていない。
確かに、そのタフさや頑丈さを求めたスタイリングは本気の「冒険スペック」ではない。スタンディングを意識していないライポジだったり、たぶん、立ちゴケすれば、カウルが割れたり簡単にキズかつく。オシャレなバイクだけに、少々気を遣いそうだ。
でも、本当にタフな造りをしている部分もある。そのスタイルは一見スクーターだが、他のNCシリーズより60㎜ホイールベースが伸びていたり、頑丈でストロークを増した倒立フォークやリブ入りのアルミスイングアームなど、なかなか念入りな装備がおごられている。スポークホイールだって、凸凹道ではキャストホイールより衝撃吸収力が高いのだ。
もちろん、コミューターとして使うことは大得意。前後サスは荒れた路面でも底突きしないためだろう、大きくストロークすると、奥で強く踏ん張るような設定になっている。そこまでストロークしなければ、いたって乗り心地はいい。オフ車のサスがしなやかで乗り心地がいいのと同じだ。それに重心が低く、フロントにしっかり荷重されていて、ハンドルの落ち着きがよく、安定している。
センタースタンドにあるバンクセンサーが接地するくらいまでなら、ふつうのバイクと変わらないスポーティなライディングも可能。そして、推奨はしないが、フラットダートくらいならしっかり走る。凸凹が大きいとフォークが底突き気味になったりするが、ビックリするくらい、意外によく走る。独特な重量配分のお陰で、リアが流れてもフロントはいつも落ち着いていて、実に愉しい!
また、低回転域ではクルーザーのようなパルス感があって、ロングランや田舎道をノンビリ走っている時は心地よい魅力になる。ちなみに100㎞/hでの6速の回転数はおよそ4100回転。もともと高回転まで回るエンジンではなく、性格的には穏やかだ。ただし、自動変速モードは独自のセッティング。NCシリーズ中もっとも戦闘的なスポーツモードも用意されている。
このX-ADVの「粋」はタフさの演出。でもスポーティにも快適にも走れ、非常に扱いやすい。しかも、骨格が丈夫なので思わずオフロードまで冒険したくなるような「夢」を抱かせる。
さて、どう遊ぶ? 一度乗ると、ついそう考えてしまう、ライダーにそう思わせる時点で、コレはすでに立派な「冒険バイク」なのだ。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2230×910×1345㎜
ホイールベース 1580㎜
最低地上高 135㎜
シート高 790㎜
車両重量 238㎏
エンジン形式 水冷4ストOHC4バルブ並列2気筒
総排気量 745㏄
ボア×ストローク 77×80㎜
圧縮比 10.7
最高出力 54PS/6250rpm
最大トルク 6.9㎏-m/4750rpm
燃料供給方式 PGM-FI
燃料タンク容量 13L
キャスター角/トレール 27度/104㎜
変速機形式 DCT
ブレーキ形式 前・後 φ296㎜ダブルディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70R17・160/60R15
DETAIL
RIDING POSITION
ポジションはシートが少しスリムなスクーターといった感覚。ハンドルは比較的ストレートで、オフ車っぽい抑えやすさがある。スタンディングフォームで走るにはフロアの長さが後ろに足らず、海外では社外メーカーがそのためのステップをリリースした。