いよいよ2020年MotoGPが再開されます!
開幕戦、MotoGPクラス以外のレースが行なわれて、Moto2クラスでわれらが長島哲太(タイトル写真・レッドブルKTM-Ajo)が歓喜のグランプリ初優勝を飾ったのが3月8日ですから、実に4カ月と10日=132日ぶりにMotoGPがスペイン・ヘレスで開催されます! まだまだ現地は新型コロナウィルス感染拡大防止対策の真っ最中ですから、パドックに立ち入りできる人数が制限されたり、チームスタッフ人数も少なく抑えられ、取材するジャーナリストも厳しく制限されての「いつもと違う風景」でのグランプリになりそうですが、ひとまず再開の第一歩です!
このレース休止期間中、MotoGPのパドックではいろんなストーリーが展開されました。休止期間中もライダーはトレーニングするし、それでもヨーロッパ各国では外出禁止令が出されてバイクに乗れなかったり、マシンは開発が凍結されたり、レース開催スケジュールが二転三転したり……。
そんな中、え? もうそんな?って話題も始まっています。それが、ライダーの移籍話。シーズンイン前に、バレンティーノ・ロッシのヤマハファクトリーチーム放出
<https://www.autoby.jp/_ct/17336999>
の話題をお知らせしましたが、その後もライダーラインアップづくりは進行。レースは休止したって、パドック政治は止まりませんね。
2021年シーズン、まずはヤマハファクトリーチームがマーベリック・ビニャーレス/ファビオ・クアルタラロの体制を発表。ビニャーレスは残留、クアルタラロはサテライトチームからの昇格ですね。
続いてはスズキファクトリーがアレックス・リンスとジョアン・ミルの契約延長を発表。ホンダファクトリーはマルク・マルケスとの契約延長を、ドゥカティはジャック・ミラーのファクトリーチーム昇格を発表しましたね。
問題は、ファクトリーチームの「空いた席」です。このへんで、ちょっとキナくさいうわさが出てきたのが4月ごろだったように思います。
「マルケス弟がレプソルホンダを放出され、ポル・エスパルガロ(レッドブルKTM)が加入する」
え? マルケス弟ったら、今シーズンからレプソルホンダに加入して、兄マルクと兄弟ファクトリーチームを結成!ってスゴいニュースになったっていうのに、まだ1レースも走らないうちに移籍話? いやいや、んなバカな、と。ヨーロッパのニュースって、時々とんでもないフェイクだったりするからなぁ、なんて思っていたら、噂はどんどん大きくなって信ぴょう性を増して、ついに7月13日、レプソルホンダから正式に発表があったのです! それが、噂のまんま!
「2021年シーズン、レプソルホンダはポル・エスパルガロをチームに迎え入れます」
「2021年シーズン、LCRホンダはアレックス・マルケスをチームに迎え入れます」
結局、火のないところに噂は立たないんですね。結局エスパルガロがKTMファクトリーからホンダファクトリーへ、マルケス弟は、まだ1レースもしていないうちにファクトリーチーム「レプソルホンダ」から、サテライトチーム「LCRホンダ」に移籍する、と発表されたのです。
もちろんそこには、本来2020年の1年契約だったHRCとマルケス弟が、2021年まで契約を延長、ってプラス材料はあるんですが、マルケス弟としてはファクトリーチームからサテライトチームに「1レースもせずに移籍する」って発表されたことに変わりはありません。
これ、マルケス弟がシーズン開幕から連戦連勝しまくったらどうするんだろう。
エスパルガロはKTMというMotoGP新興メーカーにいたとはいえ、MotoGPで6年走って未勝利の29歳。24歳のMoto2チャンピオンというMotoGPルーキーを放出しての獲得というのは、ちょっと信じられない移籍劇でした。
いまのレース人事っていうのは、メーカーやチームが「このライダー欲しい!入団交渉しよう!」っていうものだけではなく、MotoGPのプロモーターであるDORNAが差配したり、ビッグスポンサーが口を出したり、って言うことがゼロではないのかもしれません。
ちなみにレプソルホンダについているビッグスポンサーのひとつ「レッドブル」は、レプソルホンダをスポンサードするより先に、エスパルガロをサポートしていました。これが何を意味するのかどうかは、ちょっと分かんないけどね。
私なんかは、いつの日かマルケス兄弟とエスパルガロ兄弟(アプリリアとの契約延長を発表したアレイシはポルの2歳上のお兄ちゃんです)が相まみえる、なんて展開も面白いと思っていたんですけどね(笑)。
これから話題になるのは、マルケス弟のLCRホンダ加入が発表されたために、チームからはじき出されるのが誰なのか、ってこと。ご存知のように、現在LCRホンダに在籍するのは、カル・クラッチロウと、中上貴晶。確実に、このふたりのどちらかがチームを放出されることになります。
ちなみにクラッチロウは、2019年シーズンに近いうちの引退をほのめかしたこともあったんですが、ここのところ「オレのMotoGPキャリアはこれで終わりじゃないぜ、ふふふ」ってイギリスBTスポーツのインタビューに答えています。
そしてmotogp.comに掲載された興味深いインタビューが。
「ポルは2020年シーズンが終わるとKTMとの契約が終わってフリーになる。彼はMotoGPでの経験もあるし、ファイティングスピリットをもっている。KTMでもマシン開発にいい仕事をしていたし、ウチのマシンにもフィットするはずだ。カルは今までホンダにすごく貢献してくれたライダー。優勝したし、たくさん表彰台にも上ってくれたし、マシン開発もヘルプしてくれた。彼がこの先どうするのかは知らないが、きっといい道を選択するだろうし、あんなスペシャルなキャラクターにはレーシングライダーを続けてほしいと思っているよ。彼がその気なら、ホンダでワールドスーパーバイクって選択もあるからね」とは、レプソルホンダのマネジャー、アルベルト・プーチ。
まるでクラッチロウが放出されると決まっているかのようなインタビューですね。となると中上のシートは安泰……? いや、一寸先は闇ですよ、MotoGP政治は。
今のところ、クラッチロウはホンダWSBK誘いを蹴って、アプリリアへの移籍が有力と言われています。そのアプリリアは、エスパルガロ兄との契約延長を発表し、もう一人のライダー、アンドレア・イアンノーネがドーピング検査のクロ判定で出場停止中ですから、イアンノーネが2021年も走れないとなると、クラッチロウを欲しがるはずですからねぇ。
そしてドゥカティはジャック・ミラーのファクトリーチーム加入を発表して、そのチームメイトが未発表。順当にいけばアンドレア・ドビツィオーゾが収まるはずですが、これもまだ発表されていないし、ドビツィオーゾはシーズン開幕直前にトレーニング中に負傷しちゃうし……、って状況です。
この「ドゥカティの空いた席」にもびっくりするようなライダーの名前が挙がっていて、ライダー移籍騒ぎは、もうしばらく続きそうな勢いなのであります。
いずれにしても、ホルヘ・ロレンソがドゥカティからホンダに移籍する、ってあたりで「ライダーの移籍話が出るタイミング早すぎませんか? 発表した後の残りシーズン、ライダーとかスタッフのモチベーションってどうなるのさ」って書いてことがありましたが、いいライダーは早く抑えたい、ヨソに取られるくらいなら早く囲い込みたい、ってチーム事情はますます加速するでしょう。
ひとまず、今週末にシーズン再開! タカがんばれ、哲太連勝だ!って、政治話は横に置いといて、レースに集中したいですね。
写真/motogp.com 文責/中村浩史