感染拡大厳重注意!
この週末はD.I.D全日本モトクロス選手権の第2戦「埼玉トヨペットカップ」関東大会に出かけてきました。「埼玉トヨペットカップ」っていうのは、この全日本モトクロス関東大会を、埼玉トヨペットがサポートしてくれているってことで、今回がその12年目、長いお付き合い、ありがとうございます。
そのD.I.D全日本モトクロス、5/1~2に開催が予定されていた第2戦・中国大会がコロナ禍の影響もあって開催延期となって、この関東大会が実質の第2戦。
もちろん、この関東大会もコロナ禍、しかも全国の都道府県で続々と「非常事態宣言」が発出される流れの中での開催ということで、感染拡大に厳重注意しての一戦となりました。
今大会のコロナ対策は、まず大会参加者と観客をちゃんと分けて、この両者の交流を極力なくす、ということを徹底していました。ファンのみんなは、ライダーと触れ合う機会がなくなったり、サインもらえなくなったり、って寂しさはありましたが、まずは「バブル」の考え方ですよね。行動する集団をひとつのカタマリに囲い込んで、このカタマリ以外との交流を断つことが拡大を防止する有効な手段、って考え方です。
体温チェックやマスクの常時着用はもちろん、パドック内でもライダー&関係者とそれ以外が交わらないようにエリアが分けられていました。本来は、ファンとライダーたちとの距離が近いことがモトクロスの魅力のひとつなんだけど、今はガマン! 観客の皆さんもガマンしていたとは思いますが、参加者側もファンのみんなと触れ合うのを楽しみにしてるライダーや関係者は多いし、特にキッズと触れ合うの大好きなライダー、多いですからね。お互い我慢してるって感じが、すごく伝わってくる雰囲気でした。
ちなみに参加する側は、体調管理の問診票の提出をはじめとして、レース運営でもリザルトのセッションごとの配布がなかったり、ブリーフィングは紙面説明のみ、参加受付はチーム代表者が人数分を行ない、車検はクラスごとに奇数/偶数で時間帯を分け、ヘルメット車検は書面での申請のみ。そのかわりウソついたら怒るかんね、っていう体制でした。
ファンサービスに関しても、写真やサインは禁じてるわけじゃなくて最小限にしてね、握手やハイタッチはやめようね、ステッカーやプレゼント配るのも消毒や手袋を忘れずにね、って内容でした。
ピットサインエリア(ライダーにサインボード見せるサインマンが立つ場所)やスタート前の待機所、スタート場所でも、チームスタッフはマスクとかシールドをカナラズ! 何人かオフィシャルに注意されて慌ててピットに取りに帰るってシーンも、何度か見かけました。モトクロスでのお楽しみのひとつである表彰式も、クラスをまとめて全レース終了後に行なわれる、といういつもと違った風景ばかり。
レース後には表彰台に上がるライダーの簡易インタビューが行なわれたんですが、その様子を撮りたい僕らメディアも、距離とって下がって下がって、って具合。ヨカヨカ、僕らがっちり我慢しますけん。
ちなみに大会が行なわれたオフロードビレッジのある埼玉県川越市は「蔓延防止等重点措置」が適用されていて、この大会のようなイベント開催は「①収容人数上限が5000人②大声を出す内容は収容率50%まで、おお声を出さないならば100%認めます」となっています。モトクロスの会場には収容限度や規定収容観客数の規定はありませんから、5000人/日まで、が適用され、これは主催者発表で土曜/日曜で4000人、と発表されましたから、これはクリアですね。
大会の開催には、主催者のひとつである「うず潮レーシング」が、事前に埼玉県、川越市、小江戸観光協会と協議をして、後援や理解も得られ、地域消防や救急隊に開催の承認を得られた、ということでした。
ちなみに、やはりこのご時世、観戦を控えるファンも多かったようで、土曜、日曜ともお客さんは少なめ。でも、やっぱり川越のオフビに活気が戻って来たなぁ、って感じでした。
とにかく、この大会が原因で感染が拡大したり、クラスターを作っちゃ絶対ダメなんです! そのためにライダーもチームも関係者も、そして見に来てくれているお客さんも、もちろん僕らメディアも一丸となってガマン、思いはみんな一緒なんだ、って大会だったんです。
レディスクラスは川井が7連勝を達成!
とはいえ、レースにコロナ禍は関係ありません。いやむしろ、こんな状況でも会場に来てくれたお客さんに最高のレースを見せよう、ってのがライダー心理でしょう。
そしてこの大会にもスペシャル企画がありました。開幕戦の九州大会や第4戦の東北大会はIA1クラスが3ヒート制だったり、第6戦の九州大会02でIA2クラスが3ヒートになったりするんですが、この関東大会はレディスクラスが2ヒート制。これ、史上初なんじゃないでしょうか。そんな意味も込めてじゃないけど、最近は中の人、レディスクラスの面白さにハマリまくってるんです。いまさらかよー、って言わないでね。
そのレディスクラス、開幕戦を勝ったのは川井麻央(まなか・T.E.SPORT/ホンダ)。スタートから飛び出した小野彩葉(いろは・T.E.SPORT/ホンダ)を、本田七海(bLU cRU TEAM KOH-Z LUTZ with&nb/ヤマハ)と川井が追っかけ、本田が接触転倒で下がったところで、小野をジリジリ追い詰めた川井が優勝。開幕戦を見ていると、この3人が今のレディスクラスのTOP3なんでしょうね。その中でも川井は2020年のシリーズを4戦全勝してチャンピオンになっていますから、これで連勝を「5」に伸ばしました。
延期となった中国大会をまたいでの第3戦関東大会は、川井と小野が所属するT.E.SPORTのお膝元。調子を上げてきた小野が川井にどう立ち向かうか、そこに本田はどう絡むのか、この3人に続くのは誰なんだろう――が注目された一戦となりました。
ヒート1、スタートから飛び出したのは小野。スタートが上手い小野に続いたのが本田で、川井は1コーナーの大混雑を避けて7~8番手あたりで1コーナーに入って行ったように見えました。
スタートから飛ばしに飛ばす小野でしたが、コース中盤あたりでミスして失速、そのスキを突いて本田がパスした、と思ったら本田に続いて川井も小野をかわして本田→川井の順から、オープニングラップのフィニッシュジャンプ前で川井がトップに浮上! 今度はそのまま川井が逃げ始めます。
川井のペースはやっぱり2番手以下より速くて、本田と小野が2番手争い。このへんは開幕戦と同じ構図になりました。開幕戦は川井の後方で小野が本田を引き離してのT.E.SPORTの1-2フィニッシュでした。
2周目あたりで小野が本田の前に出て、2番手争いはずっと小野→本田の順。1→2位の差は少し広がりましたが、トップ3人は同じようなペースで周回。けれど、レース後半になるころ、ペースが衰えない川井、小野と本田はややペースが落ちちゃうような展開。2番手争いが激しくなると、そのスキにトップが逃げちゃうと、そんなロードレースっぽい流れになりました。
川井は2番手以降に3秒4秒5秒とリードをキープして、小野は2番手を死守したい、本田はその小野を逆転したいレース終盤、本田はジリジリと小野に迫って、ついにラスト2周のところで並びかけて、一度は逆転! けれど小野がまた抜き返してファイナルラップを迎えたんです。
ちなみに川井と小野のマシンはホンダCRF150Rと4ストロークマシン、対する本田はヤマハの2ストロークマシンYZ80LW(LW=ラージホイール)。4ストvs2ストはスピードが乗る区間もコーナリングラインも違っていて、ストレートでは初期加速がいいCRFと、ストレート後半でぐわーっと伸びるYZ、コーナリングでは大外からスピードを乗せて速いCRFと、イン側をクルッと回るのが速いYZ、という感じでした。
これは小野と本田の乗り方の違いもあるのかもしれないんですけど、4番手争いをしていた楠本菜月(actionracing with alphathree/ハスクバーナ)と久保まな(Honda Dream 京都東 TEAM HAMMER/ホンダ)も4ストvs2ストで、この争いも速い区間やコーナリングラインが違っていましたから、これが4ストと2ストの違いなのかもしれませんね。イン側をクルッと回るのは2ストマシンが軽いからできる芸当なのかな。
レースは、そのまま川井が2番手以下に5秒ほどの差をつけて独走し、2番手はファイナルラップの残りコーナー3つ、ってところで本田が小野を逆転! T.E.SPORTの1-2フィニッシュを阻止しました。4位には2ストマシンの楠本、5位に4ストCRFの久保、6番手以下はそこから10秒くらい後方でのフィニッシュとなりました。
ヒート2は全レースの最後。いわばメインイベントで、帰るお客さんもほとんどいなかったですね。やっぱり、それだけレディスクラスの戦いがアツい、って注目されてるんですね。レディスクラスにとってはヒート2は「未知の領域」のはずで、ただでさえキツい15分+1周をもう1回やるわけです。とはいえ、ライダーのみんなは疲れたそぶりも見せずに、のヒート2となりました。
スタートで飛び出したのは本田。スタートゲートから1コーナーまでで2ストパワーをブン回した感じでホールショットを獲得。小野が背後に続いて、3番手にスタートがズバリ決まった伊藤悠利(チームピットイン)、その後方に川井がつけた展開です。川井、2019年のここでのレースで、スタート直後の1コーナーの大混雑で巻き込まれ転倒を喫したことがありましたから、スタートから1コーナーは無理せず安全に、パッシングは後からでいいや、って戦略としているのかもしれません。
オープニングラップから逃げる本田、追うのは小野をかわした川井、というオーダーから、川井は本田を5周でキャッチ! それでも本田は川井を逃がさない、と食い下がったんですが、ここで勝負を分けたのがバックマーカーの存在でした。
やっぱり2ヒート目ってことで、トップライダー以外の下位を走っているライダーはヒート1よりペースが落ちていて、バックマーカーが出てくるタイミングが早かったんですね。
そんなバックマーカーをかき分けてかき分けてトップ争いをする川井と本田ですが、そのバックマーカーにはオフィシャルからブルーフラッグ(=青旗 うしろから速いの来てるから道譲れ、のサイン)が出ますよね? するとブルーを振られたライダーがパッとラインを譲って、川井がパッシングして行ったら、そのままラインに戻っちゃうんですね。
実は、その後ろから本田も来ているわけで、本田だけがどうしてもバックマーカーを抜くのに手こずっちゃうんです。
それで1台かわすごとにコンマ1秒、とか差が広がるうちに、本田の視界からみるみる川井が逃げて行って、集中を切らして逃げられてしまった――ように見えました。
結果、川井はダブルウィンを飾って開幕戦から2戦3レース負けなし、20年シーズンから合わせて連勝を「7」に伸ばしました。2位の本田は、やっぱりヒート1より川井との差が広がってしまって、3位にはさらにヒート1よりレースタイムが伸びなかった小野が入りました。
これでレディスランキングは
①川井麻央(ホンダ) 75P ②本田七海(ヤマハ) 56P
③小野彩葉(ホンダ) 52P ④楠本菜月(HQ) 37P
⑤久保まな(ホンダ) 35P ⑥木村綾香(カワサキ) 24P
⑦穂刈愛香(ヤマハ) 22P ⑧赤松樹愛(ヤマハ) 21P
⑨伊藤悠利(ヤマハ) 20P ⑩濱村いぶき(ホンダ) 15P
いやしかし、川井、強い! 速い! 上手いです! やみくもに前に出るというより、タイミングを見て前に出る戦略、15分+1周を2つこなすタフさ、ストレートの速さにブレーキングの鋭さ、それにジャンプが低くて速い! 特にジャンプは高く遠くに飛んだり、低く近くに着地したり、と変幻自在です。いやぁ、ほんとにマシンコントロールが上手いなぁ、ってライダーなんです。
次戦は6月5~6日にスポーツランド菅生で開催されますが、川井の連勝を止めるのは本田か、小野か、それとも――ってところに注目が集まるでしょう。
ちなみに川井の7連勝はレディスモトクロス歴代3位タイ記録で、最長記録は03~04年に鈴木沙耶がマークした9連勝です。この勢いならひょっとして……。
IA1は怪物山本覚醒! IA2は内田が独走の気配?
本来ならメインレースのはずのIA1/IA2のレポートはほどほどに(笑)。IA1は開幕戦でバッドラックに襲われて3戦未勝利に終わった山本 鯨(Honda Dream Racing Bells)が完全復活し、ダブルウィンを達成! 山本は1/2ヒートともスタートから先行、逃げ切りで強さと速さとタフさを見せつけてくれました! 2着にはヒート1で富田俊樹、ヒート2で渡辺祐介とヤマハファクトリレーシングチーム勢。3着には両ヒートとも今シーズンからカワサキ→ホンダにスイッチした小方 誠(Honda Dream Racing HAMMER)がはいりました。
これでIA1ランキングは
①山本 鯨(ホンダ) 87P ②渡辺祐介(ヤマハ) 86P
③富田俊樹(ヤマハ) 82P ④小方 誠(ホンダ) 78P
⑤能塚智寛(カワサキ)72P ⑥星野優位(ヤマハ) 57P
⑦横澤拓夢(ホンダ) 37P ⑧大塚豪太(ホンダ) 35P
⑨小島庸平(ホンダ) 35P ⑩星野 裕(スズキ) 32P
IA1クラス、次回の菅生大会は、再び3ヒートレースで開催されます。
開幕戦・九州大会では、大城魁之輔(Honda Dream Racing Bells)と内田篤基(マウンテンライダーズ/カワサキ)が優勝を分け合ったIA2ですが、この関東大会では内田がダブルウィン! チームの使用機材ごと、スズキ→カワサキにマシンをスイッチしたばっかりの名門マウンテンライダーズ内田が両ヒートとも危なげない圧勝で、ランキングでも大城を20P引き離しました。
これでIA2ランキングは
①内田篤基(カワサキ) 95P ②大城魁之輔(ホンダ) 75P
③岸 桐我(ヤマハ) 46P ④中島漱也(ヤマハ) 44P
⑤小川孝平(ヤマハ) 42P ⑥大倉由揮(ヤマハ) 36P
⑦鳥谷部晃太(ヤマハ) 33P ⑧川上龍司(ヤマハ) 33P
⑨鈴村英喜(ホンダ) 30P ⑩柳瀬大河(ホンダ) 28P
次回、第4戦菅生大会は、6月5~6日のスポーツランド菅生大会。IA1やIA2より、がっつりレディスクラスに興味を持って行かれている担当でした。
写真/後藤 純 文責/中村浩史