2023年のジャパンモビリティショーでは
カワサキがNinja 7 Hybridを出展し
いよいよオートバイの世界にも
「非」ガソリンエンジンの時代が本格的にやって来そう。
けれど「非」ガソリンエンジンより早く
日本に「ターボエンジン」ブームがあったって知ってた?

ガソリンエンジンに「補助」と「別動力」

画像: ジャパンモビリティショーで公開されたNinja 7 Hybrid

ジャパンモビリティショーで公開されたNinja 7 Hybrid

ジャパンモビリティショー2023で公開されたカワサキNinja 7 Hybridは、世界初のハイブリッドオートバイ。簡単にいえば従来のエンジンにモーターを組み合わせて、エンジンのみ、エンジン+モーター、モーターのみでも走行できる「ストロングハイブリッド」だ。11月のEICMAでは、ノンカウルモデルであるZ7 Hybridも併せて発表された。

画像: Ninja 7 Hybridのエンジン。451ccのパラレルツインに、48Vバッテリーとモーターを組み合わせたハイブリッドシステム。シリンダー背後にあるのはモーターユニット。

Ninja 7 Hybridのエンジン。451ccのパラレルツインに、48Vバッテリーとモーターを組み合わせたハイブリッドシステム。シリンダー背後にあるのはモーターユニット。

ハイブリッドのメリットは、パワーと省燃費を両立できること。ガソリンエンジンの排気量を小さくすれば、当然ながらガソリンの消費量が減るし、小排気量化によって不足したパワーはモーターで補うことができる。しかも、バッテリー+モーターのみでEVとしての走行も可能なストロングハイブリッドであれば、EVモードを使用することで燃料消費をさらに抑えることができる。今回のNinja7 Hybridは、世の中の「カーボンニュートラル」風潮に対する、カワサキの回答のひとつと言えるだろう。同じくジャパンモビリティショーでは純電動バイクであるNinja e-1も登場している。

これまでのオートバイはガソリンエンジン主体の乗り物で、高い効率を求め、高出力化を目指してきた歴史がある。高い効率を求めて、2ストロークから4ストローク、OHVからSOHC、DOHCへと進化と淘汰を繰り返してきた。エンジン冷却方式、吸排気バルブ数やサイズ、ボア×ストローク値、さらに回転往復部品の材質や表面処理……それに時代ごとの騒音排出ガス規制を組み合わせ、数限りない取捨選択を繰り返して、現代のエンジン型式につながっている。

そしてもうひとつの手段が「補器」と「過給」。つまりエンジン動力を補佐するものだ。現行モデルでは、カワサキが「Ninja H2」「Z H2」シリーズとして、スーパーチャージャーつきエンジンを搭載するモデルをラインアップしている。スーパーチャージャーとは、エンジン出力軸=クランクシャフトから取った動力で圧縮機を駆動、そこで圧縮された空気をエンジンに供給することにより吸気量を増やし、出力を向上させるもの。H2のそれは、インペラーを使用して空気を圧縮する「遠心式」と呼ばれる。スーパーチャージャーという機構自体は1970年代のモト・グッツィ製GPマシンで実用化されており、さほど新しい技術ではない。

画像: 81年式ホンダCX500ターボ 当時、実用され始めたばかりのフルカウルを装備したスポーツツアラーだ

81年式ホンダCX500ターボ 当時、実用され始めたばかりのフルカウルを装備したスポーツツアラーだ

そして国産モデル、市販オートバイ用エンジンでは、スーパーチャージャーよりもっと先に、ターボチャージャーが実用化されている。ターボチャージャーもスーパーチャージャーと同じく、過給機の一種。スーパーチャージャーがクランクシャフトの回転を利用して空気を圧縮、吸気量を増やすのに対し、ターボチャージャーは排気のエネルギー、つまり排気ガスの流れが生み出す圧力を動力源としてタービンで加給、吸気量を増やしているシステムだ。

現在では、エンジンを小排気量化して消費ガソリンを少なくし、不足したパワーはターボで補おうという考え方が主流だが、少なくとも80年代は、排気量を上げずにパワーアップする手段という捉え方がメインだった。ちなみに日本で初めて市販車に搭載されたターボエンジンは、1979年10月デビューのニッサン・セドリック/グロリアに搭載されたL20ET型エンジンだ。

画像: ガソリンエンジンに「補助」と「別動力」

そんなターボがバイクに搭載されたのは81年式ホンダCX500ターボが初。これは、77年発売のGL500をベースにターボチャージャーを搭載したエンジンを採用したモデルで、排気量を上げたり多気筒化せずに、過給によって出力を向上させようとしたモデル。実は当時の日米貿易摩擦問題の影響で、700ccまでのモデルしかアメリカで売れなくなってしまう、という状況に対応したモデルでもあった。国内では「高出力」や「スポーツ」が想起されるものに対しては認可が下りず、販売は海外のみという輸出専用モデルだった。

CX500ターボは、GL500の水冷縦置きVツインにIHI(=石川島播磨重工)製のターボチャージャーを装着したもので、GL500の48psを、実に82psまでアップさせていた。当時の同排気量クラスでいえば、Z550FXが54ps、GS650Gが65ps、CB750Fが72ps、XJ750Eが70psだったことを考えれば、なかなかのハイパワーエンジンだったと言えよう。81年の鈴鹿8耐で初お披露目となり、鈴鹿サーキットをマーシャルバイクとして走っている。

画像: 当時の月刊オートバイ誌面 ライダーは故・真田哲道さん

当時の月刊オートバイ誌面 ライダーは故・真田哲道さん 

しかし、現在ほど「逆輸入」が一般的でなかった当時は、なかなか国内で見る機会もなかったCX500ターボ。そこで、CX500ターボを弊社モーターマガジン社が購入。オートバイ誌が試乗やテストに使用し、紹介していたこともあった。

「当時、マガジン社が購入してオレも何回も乗ったけど、ターボだからすげぇんだろうなぁ、という期待はあったけど、実際はそうでもなかったね。車重が重く、82psというパワーも、他の750ccよりちょっと速いかな、というくらい。ターボラグを抑えて乗りやすくしていた結果なんだろうけど、高回転まで引っ張ってもエキサイティングさはない。でも中回転域のトルクは1000ccなみに太くて乗りやすいバイクだった。パワーフィーリングより、よくできたフルカウルのウインドプロテクション性の方が印象に残ったね」とは、当時から本誌テストライダーを努めている太田安治氏の弁だ。

画像: 海外仕様のカタログ カウル前面の「TURBO」文字は正転も逆転もあったのだ

海外仕様のカタログ カウル前面の「TURBO」文字は正転も逆転もあったのだ

しかし「ターボ」という目新しさを魅力に感じたライバルメーカーも開発を進め、アッという間に国内4メーカーのターボバイクが出揃うことになる。このあたりの展開の早さは、レーサーレプリカブームと同じ勢いだった。

<この項つづく>

This article is a sponsored article by
''.