GSX550L(1984年)
「オイルジェット・ピストンクーリングを採用した冷却効率の高い4気筒クルーザー」
GSシリーズからバージョンアップされるように誕生し、現在ではスズキ・スポーツモデルの代名詞にもなっている「GSX」シリーズ。
そのGSXのネーミングを冠した歴代モデルの中には、空冷4ストロークの直列4気筒エンジンを搭載した“クルーザーモデル”があったのをご存知でしたでしょうか?
今回紹介する今昔辞典は、ワイドで垂れ下がったプルバックハンドルとチョッパースタイルが印象的なスズキのアメリカン・スポーツ「GSX550L」です。
1980〜1990年代に人気を博した、いわゆる“アメリカンタイプ”のクルーザーモデルは、2気筒のシリンダーをVの字に配置したVツインエンジンを搭載したモデルが主流でした。
しかし、スズキが1984年に発売した「GSX550L」は“GSX”の冠をつけただけあって、なんと直列4気筒エンジンを搭載させたスポーツ・クルーザーモデルだったのです。
しかも排気量は大型免許が必要となる550cc(正式には572cc)で、大きすぎず小さすぎない排気量を好むニッチなユーザーに向けたとも思えるツーリング・クルーザーとしてリリースされました。
当時の日本なら中型免許でも乗れる400cc以下にボアダウン(排気量ダウン)させて発売した方がユーザーもより増えるように思えますが、スズキはそれをしませんでした。
その理由のひとつとしては、このマシンには“高性能4気筒エンジンを搭載したアメリカンスポーツ”を開発する、という明確なコンセプトがあったからでしょう。
GSX550Lに搭載された空冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒エンジンには「オイルジェット・ピストンクーリング」という独自の機構が備わっていました。
“オイルジェット・ピストンクーリング”とは、空冷エンジンのシリンダー内にあるピストンの裏面にオイルを噴射することによりピストンを冷却する、という機構で、空冷エンジンでありながら、オイルクーラーを持たない油冷エンジンに近い仕組みになっていました。
このピストン機構のおかげで、空冷4気筒エンジンでありながら優れた冷却効果があり、最高出力は10000回転(!)で64馬力のハイパワーを発揮するという、クルーザースタイルでありながら高性能スポーツモデルにも負けないマシンとして登場したのでした。
現行車に例えるならどんな車種?
さて、ここからはあくまでもスズキのバイク編集部 岩瀬の個人的な主観で「現在のバイク」に置き換えてみる妄想企画です。
もし今のスズキ現行車種で選ぶとしたら……といつも通りスズキ車の全ラインアップをチェックしてみましたが、GSX550Lのようなクルーザースタイルとなると、今回ばかりはコレ!と言える現行車種が見あたりません(汗)。
しかしながら、同じ“GSX”の冠を付けたミドルクラスのスポーツモデルとして、スタイルこそ大きく異なりますが『GSX-8S』と比較してみたいと思います!
新設計となる排気量775ccの並列2気筒DOHCエンジンを搭載し、270度クランクの不等間隔爆発と2気筒らしいパルス感が味わえるミドルクラスのロードスポーツモデルとして新登場。
Vストローム800シリーズとエンジンやフレームを共通のものとしながらも、400ccクラス並のコンパクトな車体に最高出力80PS / 8,500rpmのパワフルなエンジンを搭載しつつ、車両重量は202kgという軽さを実現しています。
一度見たら忘れられないデザインと、無駄をそぎ落としたスタイリッシュな車体、最新のスズキインテリジェントライドシステム「S.I.R.S.」を搭載し、1番アクティブな「Aモード」ではフロントが軽々と浮いてしまうほどのエキサイティングな走りが楽しめるストリートファイターモデルです。
GSX-8Sは鮮やかな「パールテックホワイト」とシックなカラーリングの「グラススパークルブラック/マットブラックメタリックNo.2」、スズキらしいブルーで彩られた「パールコズミックブルー」がラインアップされ、全3色展開になっています。
スズキ・スポーツモデルのDNAである“GSX”の名称は、いろんなカタチを経て、現代までこうしてしっかりと受け継がれているんです!