アジアタレントカップ組合流で難敵出現

画像: 1Dayで行なわれた筑波大会を、終わってみればポールtoウィンを飾った尾野弘樹

1Dayで行なわれた筑波大会を、終わってみればポールtoウィンを飾った尾野弘樹

酷暑寸前の筑波大会で開催されたのは、先にレポート<www.autoby.jp/_ct/17705630>した、本誌イチオシのJP250と、メインイベントはJ-GP3クラスでした。
実は正式に言えば、JP250は「MFJカップ」で、J-GP3は「全日本選手権」。つまりこのJ-GP3クラスが、筑波大会唯一の全日本ロードレースだったんです。とはいえ、JP250は2016年スタートで9年目のシーズン。どうしていつまでも全日本選手権格式にならないのか、ちょっと疑問ではあるんですが――。

そのJ-GP3クラスは、ここまで3レースを消化して、開幕戦もてぎ大会は若松怜(日本郵便docomoビジネスTP)、第2戦菅生大会は尾野弘樹(P.MU 7C GALESPEED)が優勝、木内尚汰(チームプラスワン)が2位/3位、スポット参戦の荻原羚大(=りょうた・WJファクトリー)が開幕戦の3位表彰台に登壇しての第3戦筑波大会。

ここまでは、開幕戦前の転倒→負傷でもてぎ大会を落とした尾野が、アジア選手権TVSワンメイクでの優勝を含め、復調してきての筑波大会という印象。そこに若松、木内、荻原に、MiniGP初代チャンピオンの池上聖竜(MotoUPレーシング)が「打倒V3チャンピオン」を目指して戦っている、そんなJ-GP3です。

画像: 初代MiniGP JAPANチャンピオンの池上聖竜 昨年のこの大会では特別参加にもかかわらず3位入賞!

初代MiniGP JAPANチャンピオンの池上聖竜 昨年のこの大会では特別参加にもかかわらず3位入賞!

画像: 4位入賞を果たした菅生大会に続いての出場、三谷 チャンピオンのチームメイトとして帝王学を吸収中

4位入賞を果たした菅生大会に続いての出場、三谷 チャンピオンのチームメイトとして帝王学を吸収中

土曜日に行なわれたフリー走行では、池上が2セッションともトップタイムをマーク。2~3番手に若松、木内が入るスタートで、総合4番手には三谷然(P.MU 7C GALESPEED)が入り、尾野は5番手。このTOP5では、荻原、三谷、池上がIDEMITSUアジアタレントカップの2024年メンバーです。
けれど公式予選は、尾野が貫録のポールポジションを獲得。さすが決勝に合わせてきますね、このあたりがベテランの妙です。なんとなく尾野は、予選はまぁ2列目くらいに入ればいい、レースもずっとトップを走る必要はなく、最後の最後に真っ先にフィニッシュラインを通ればいい、というレースの心理をきちんと理解している数少ないライダーだと思います。
もちろん、全セッショントップでぶっちぎりのポールtoウィンができれば派手なんだけど、レースで一番大事なのは「最後の方」にあるものです。だからウィークではラストの「決勝レース」が大事だし、シーズンではラストの「チャンピオン」が大事なんです。

画像: いつも穏やかに微笑みを絶やさない尾野、グリッドでスイッチが入る瞬間 このエナジーパックがルーティーンです

いつも穏やかに微笑みを絶やさない尾野、グリッドでスイッチが入る瞬間 このエナジーパックがルーティーンです

このベテランを、ティーンエイジのヤングタイガーがやっつけに来ている、と。ある意味、J-GP3という軽量級のあるべき姿に近いですね。
「菅生もそうでしたけど、尾野さんの後ろを走って弱点を探そうとしても、逆に僕の弱いところを見抜かれて抜かれちゃう。尾野さん、さすがチャンピオン、高い壁なんだけど、だからこそ負けても『次は負けない』ってモチベーションになってます」(若松)

画像: 様子見ではなく、オープニングラップからガンガン前に出た#1尾野 後方は尾野を逃がしてはいけない瞬間

様子見ではなく、オープニングラップからガンガン前に出た#1尾野 後方は尾野を逃がしてはいけない瞬間

決勝レースでは、尾野が好スタートからホールショットを獲って、2番手にフロントロー3番手グリッドからスタートした、KTMを駆る高杉奈緒子(チームNAOKO KTM)、池上、若松、荻原、三谷、木内といった順でオープニングラップをスタート。高杉がやや失速して、尾野→池上→若松→荻原→三谷→木内→武中駿(チームShun and ZERO)の順で2周目へ。尾野はひとまず「逃げ」を打ってトップ争いの台数を減らしていきたい、そんなスタートです。

画像: 序盤からトップに立つこともあった#35池上 #3若松も#1尾野も、ここでノセてはいけない

序盤からトップに立つこともあった#35池上 #3若松も#1尾野も、ここでノセてはいけない

3周目には池上がトップに浮上。それでも尾野、若松は逃がさず、トップ集団は7台、その後ろに3台くらいがつける縦長の展開となっていきます。
トップ争いは、池上に続いて若松が2番手、そのままトップに立ったり、それをまた池上が抜いて、次に尾野が2番手に上がって、再びトップへ、という走り。尾野が主導権を握って、池上がアタック、若松は少し様子見、というレース前半。その後方に三谷がいて、武中がポジションをひとつずつ上げてくるトップ集団で、長い列は縦長に10台ほどに膨れ上がりました。

画像: #1尾野を先頭に長い列を作るトップグループ 尾野のマシンはストレートが伸びていましたねぇ!

#1尾野を先頭に長い列を作るトップグループ 尾野のマシンはストレートが伸びていましたねぇ!

いつもならここから3~4台が抜け出すんですが、1周1分ちょいで周回する筑波というコースレイアウトでは、なかなかそうもいきません。レース中盤には三谷と池上の3番手争いがあったり、若松が尾野をパスしてトップに立ったり、尾野が抜き返したり、武中がポジションを上げたり。J-GP3らしい、目まぐるしいレース展開です。レース中盤には、木内、荻原、三谷がちょっとペースに頭打ちが見られました。

画像: #1尾野がダンロップ、#3若松と#11武中がブリヂストン、#35池上がピレリユーザー 写真はダンロップ下です

#1尾野がダンロップ、#3若松と#11武中がブリヂストン、#35池上がピレリユーザー 写真はダンロップ下です

いよいよ25周のレースは終盤。20周終了の時点で尾野→若松→池上→武中→高杉→松島璃空(BREASTO B-TRIBEレーシング)というオーダー。ここで武中は池上をかわして3番手に浮上します。
尾野vs若松、少し離れて武中vs池上。この戦いで若松が執拗に尾野をパッシングにかかりますが、なかなか抜くには至らず、ラスト2周の第2ヘアピンで抜いても、クロスラインで尾野がふたたび先頭で最終ラップへ。

ここで若松は第2ヘアピンに向けてアジアコーナーを脱出加速するも、一瞬コースアウト! これで尾野が逃げ切って、2番手若松、武中の順でフィニッシュしました。

画像: 「今年はなかなか2位以下を引き離して、ってレースが難しいです」と尾野 それくらいレベルが上がってる!

「今年はなかなか2位以下を引き離して、ってレースが難しいです」と尾野 それくらいレベルが上がってる!

「土曜のフリー走行では、自分がこの位置でレースできるとは思わなかった。それで今朝の走行でセッティングも乗り方も変えてみて、いい方向が見つかった感じです。決勝は、予選のいいフィーリングを崩さないように淡々と走とうと。レースの組み立ては、もう始まってからですね。途中、若松君とのバトルになって、お互いの強いところ弱いところを出し合いながら、厳しいかな、って思うことが多かったけど、最後は抑え切ってポールtoウィンできてよかった。最高の週末になりました」と尾野。

画像: 優勝、2位2回で前半戦のランキングトップに立った若松 速さに安定感が増してきました

優勝、2位2回で前半戦のランキングトップに立った若松 速さに安定感が増してきました

トップグループのなかでもタイヤブランドが違うマシンばかりで、尾野が使ってるダンロップ、若松と木内のブリヂストン、池上はピレリ。ちなみに開幕2戦でポールポジションを獲った荻原もピレリユーザーです。
2位には惜しくも届かず、若松。それでもここまで3戦連続表彰台です。
「決勝はトップ争いの台数が多くて、できるだけ上位にいよう、と。池上君に抜かれてもすぐ抜き返して、尾野さんの走りを真後ろから見て、パッシングもしてみました。でも、菅生の時と同じく、すぐに僕の弱点を見抜かれた感じで抜き返されましたね。2位って結果は悔しいですけど、今シーズンは全戦表彰台を目標にしているので、ひとまず前半戦を表彰台で終えられてよかったです」と若松。この筑波は好きだけれど得意じゃないらしく、後半戦のオートポリス→岡山→鈴鹿で、また尾野と勝負したい、とも言っていました。

画像: スポット参戦で見事に表彰台の一角を射止めた武中 次の出場は最終戦MFJグランプリ?

スポット参戦で見事に表彰台の一角を射止めた武中 次の出場は最終戦MFJグランプリ?

3位には予選8番手グリッドから見事な追い上げを見せた武中。この筑波が地元で、スポット参戦での表彰台はお見事でした。
「スタートがうまく決まらなくて集団に飲まれかけたけど、うまく3コーナーでアウトから前に出られて、それから1台ずつパスできたのが良かったです。ただ尾野さん、若松さんには仕掛けられずに、それが弱さなのかな、と。今シーズンは筑波だけ出る予定で出場して、表彰台上がれてよかったです。ポイントを獲れたので最終戦の鈴鹿に出場資格ができたので、出られるなら出たいです」と武中。

画像: アジアタレントカップ組合流で難敵出現
画像: クリーンなファイトで勝負した尾野と若松 サマーブレイクを経て、ふたりがどう進化しているか注目です

クリーンなファイトで勝負した尾野と若松 サマーブレイクを経て、ふたりがどう進化しているか注目です

J-GP3クラスも、これで前半戦が終了。チャンピオン争いは、尾野を中心に若松が追い、木内が今回ちょっと後退しちゃった感じでしょうか。
ここまでの暫定ランキングは①若松 65P ②尾野 63P ③木内 42P ④高杉 30P ⑤23Pと、この5人が3戦とも出場、池上、荻原、三谷らはアジアタレントカップとの日程被りで出場していないレースがありますからね。
次回のJ-GP3クラスレースは9月8日決勝、舞台は大分県オートポリスです。

写真・文/中村浩史

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