14歳vs17歳のチャンピオン争い

この週末は岡山国際サーキットで全日本ロードレース第7戦が行なわれています。金曜まではまだ「猛暑」っぽかった岡山ですが、今日土曜日はいくぶん陽も和らぎ、ちょっとだけ秋の気配。関東地方は天候が崩れたようですが、岡山はちょっと秋晴れから曇り空ののぞく週末。全日本ロードは、この岡山大会を入れて残り2戦。10/26-27の鈴鹿大会が最終戦「MFJグランプリ」です。

シリーズも終盤となると、だんだん気になってくるチャンピオン争い。例年だと、この岡山大会でどこかのクラスのチャンピオンが決まることがあるんですが、出ました今年の第1号チャンピオン。本誌イチオシのJP250クラスの国際ライセンスクラス――インタークラスのチャンピオンです。

画像: ここまで4戦、ミスなくレースを進めてきた#26久川

ここまで4戦、ミスなくレースを進めてきた#26久川

JP250クラスはここまで4戦を終わって、前戦オートポリスで2位に入った久川鉄平(bLUcRU Webike! チームノリック)がチャンピオンに王手をかけていました。久川はインタークラスで、開幕戦もてぎ→第2戦SUGO→第3戦・筑波と3連勝。オートポリスで2位に入ったことで、ランキング2位の飯高新悟(KIJIMA KISSレーシングチーム)に35ポイント差をつけての岡山大会です。

最終戦MFJグランプリのボーナスポイント「+3P」はJP250クラスに適用されませんから、岡山大会を終えて飯高に25ポイント差をつければチャンピオン決定。岡山大会で飯高が優勝すると85P、となると現在95Pの久川は110Pあればセーフですから、15PとればOK、つまり3位:16Pでチャンピオン決定なわけです。久川17歳、飯高14歳、いい年齢層でチャンピオン争いが繰り広げられているクラスですね。

画像: 菅生大会あたりからぐんぐんマシンが仕上がってきた#32小室 ゼッケンはチーム名にちなんでいます^^

菅生大会あたりからぐんぐんマシンが仕上がってきた#32小室 ゼッケンはチーム名にちなんでいます^^

「3位に入ればチャンピオン決定だって知らされました。でも走り出しちゃえば関係ないです。いつも勝ちたいし、今回も勝ってチャンピオンになれたらうれしいです」と久川。順調にポイントをリードしてきたことで、レースぶりにも明らかに落ち着きが出てきましたね。

公式予選では、前戦オートポリス大会を勝った岡田陽大(bLUcRU アケノスピード)がポールポジションを獲得。岡田はとにかくイキのいい16歳。コースサイドで見ていても、マシンをカタカタカタカタと震わせて、毎回走行ラインが違っても速い――そんなライダー。菅生大会ではイエローフラッグ区間中の追い越しでペナルティを取られ、筑波大会では他選手に接触したことで失格となってしまっていますが、その速さはホンモノ。今大会でも優勝候補のひとりですで。
2番手には菅生大会で国内ライセンスクラス優勝を果たした野村唯人(MTR+SHIN RIDING SERVICE)、3番手に久川です。

画像: 予選トップは#21岡田 タイムも出せるし競り合いにも強い!

予選トップは#21岡田 タイムも出せるし競り合いにも強い!

注目は2列目5番手につけた小室旭(SUNNY MOTO KTM JP250)。軽量級マイスター小室はKTM RC390をライディング、今シーズン初めてのJP250へのフル参戦ということで、1戦ごとにマシンが仕上がってきているのがよくわかります。実際、今大会でも金曜に行なわれた事前走行で総合2番手を獲得。2本のロングストレートがある岡山国際では、RC390のトップスピードが際立っていました。

スタート直後に転倒→赤旗!

1dayで行なわれるJP250クラスは、決勝レースも土曜日。夕方になってやや曇り空となりましたが、依然としてドライコンディションでの決勝レースです。
その決勝レースを前に行なわれるサイティングラップでは、なんと2コーナー進入あたりで転倒がおこり、レースは赤旗中断、スタート前から出走時刻ディレイとなってしまいました。転んだのはインタークラスのランキング3位にいる土岩直人(SHIN RIDING SERVICE)。土岩は前戦オートポリスでも、オープニングラップで他車に巻き込まれて転倒、決勝レースを走ることができませんでした。ここへ来て2戦連続でDNSは痛い! とはいえ、前戦オートポリスで、ST600クラススタート時に事故があったばっかりなんだから、特にレース中じゃないタイミングでは念には念を入れて気を付けてもらわないと! これ、全ライダーに言ってますからね!

画像: 2度のスタートでどちらもホールショットを獲ったのは#26久川 スタートの上手さは集中力の高さです

2度のスタートでどちらもホールショットを獲ったのは#26久川 スタートの上手さは集中力の高さです

改めてのスタートでは久川が好スタートを見せてホールショットを獲ると、岡田、小室、野村、齊藤太陽(SDG N-PLANレーシング)がつけます。久川が序盤からスパート、岡田が背後にはりつき、トップスピードに勝る小室がトップを伺う展開……から、後方で田口和志(TEAM TECH2 & ハングアウト& YSS)と小川晃広(SHIN RIDING SERVICE)が転倒したことでレースは赤旗中断。周回は12周のままレースは仕切り直しとなります。

仕切り直しのスタートでは、またも久川が好スタートからホールショット! 後方に小室、野村、岡田、齊藤がつけます。やはりこのあたりがJP250を引っ張る集団なんですね。
1周目のロングストレートでは野村がトップに浮上。久川、小室、岡田、齊藤のうしろには森山浬(bLUcRU Webike!チームノリック)、片田泰志(bLUcRUチームBabyFace)、飯高がつけ、8人が縦長にトップグループを形成します。

画像: いつどこからでも仕掛けてくる#8野村と#21岡田

いつどこからでも仕掛けてくる#8野村と#21岡田

レースは久川、野村、小室、岡田がかわるがわるトップに立って、誰も抜け出せない状態。いまのJP250は、たとえば世界選手権Moto3のレースのように、またはIDEMITSUアジアタレントカップのように、ただ速いだけじゃなく、周回ごとの位置取りが重要。
久川によると「レースが赤旗で終了するケースがあるから、周回の2/3くらいでトップに立っていたい」と言うし、小室は「ラスト3周くらいでトップの背中に張り付いていること」というのが条件なんだそうです。ストレートスピードがある小室は、岡山国際の最終コーナーを立ち上がってからのロングストレートで、フィニッシュラインまでのトップに出る、というシミュレーションをしているのでしょう。

画像: イキのいい走りが#21岡田の持ち味 そこではむりだろー!って場所でもがんがん抜いてきます

イキのいい走りが#21岡田の持ち味 そこではむりだろー!って場所でもがんがん抜いてきます

レースは中盤、岡田がトップにいるシーンが多くなります。そこに野村がいて、久川がいて、小室がいつでもトップを狙っている展開。このあたりの周回では、びたびたにスリップに入りたがるライダーのなか、小室のKTM RC390が、トップスピードを生かしてポジションを自由にとっています。
レースが折り返しを迎えるころ、トップに立ったのは久川。宣言通り、レース距離の2/3終了時にトップにいたい、というポジション取りですが、すぐに岡田が前に出るし、小室もロングストレートで伸びてくる。それでも思っていた通り、12周のレース距離の2/3=8周目あたりでトップにいたのは、冷静にレースを進めていけている証拠なんでしょう。

レース終盤、その久川を何度もつつくのは岡田。その後ろの久川、小室、齊藤、野村、飯高、森山、片田のうち、野村がスパート! ラスト2周で2番手に上がると、久川→野村→岡田→小室→齊藤の順でラストラップへ。最終ラップのバックストレッチでは、みんな全開勝負とスリップの取り合いの中、ヘアピンで岡田がトップ、久川と野村が折り重なるように2番手でヘアピンを立ち上がると、そのスキをついて小室がトップに浮上します! うまい! 

画像: #8野村の転倒と、すんでのところでエスケープできた#33齊藤 トップは#32小室で最終ラップ後半へ!

#8野村の転倒と、すんでのところでエスケープできた#33齊藤 トップは#32小室で最終ラップ後半へ!

小室→岡田→久川→野村→齊藤の順で下りの左「リボルバー」コーナーを立ち上がると、4番手につけていた野村が開けゴケで転倒! すぐ後ろにいた齊藤がコースアウトして難を逃れると、トップは小室→岡田→久川の順でコース終盤のダブルヘアピンへ。岡田が並びかけるも、冷静にこれを抑えた小室がトップで最終コーナーへ、と思ったら、そのインをまたまた岡田が差してくる!

画像: ここじゃ行かないだろう!ってところで仕掛ける#21岡田 小室をパスした瞬間「うわたたたた!」の瞬間

ここじゃ行かないだろう!ってところで仕掛ける#21岡田 小室をパスした瞬間「うわたたたた!」の瞬間

しかしその岡田のスリップを使って、小室が優勝! 1位小室と2位岡田は0秒119差、3位にはその0秒057秒差で久川が入り、小室が総合初優勝! 久川がJP250インタークラスのシリーズチャンピオンを決めた一戦となりました。
いやぁ面白かった! まさに今のJP250の面白さが凝縮されたレース展開でした!

小室旭 予選:5番手 決勝:優勝
「やっと勝てました! 23年にスポット参戦をして24年からフル参戦、今までレースしていたJ-GP3とも違うメンバーのなかのレースで、なんとかRC390を優勝させることができました! 今年は、レースごとにマシンを仕上げていくことを進めていたシーズンで、菅生大会から電気系統をバージョンアップして、筑波大会で足回りのネガを出し切って、オートポリス大会でマシンが一段階ポテンシャルアップした感じ。ホントはそのオートポリスで勝つ予定だったんだけど、最後の最後にミスをして3位になっちゃって。それでもマシンは形になってきていたので、ここで勝てたのはうれしいです。KTMがこれだけ速いんだ、っていうのをアピールできた!」

久川鉄平 JP250 インタークラスシリーズチャンピオン
「3位になればチャンピオンなんだ、ってクールダウンラップで思い出したくらい集中したレースでした。レースは集団がずっと続いて、ちょっとスキを作るとすぐ前に出られちゃう展開のまま、レース終盤にはトップか、その後ろくらいにいようとずっと考えてて、それでも最終ラップで、もうコーナーごとにポジションが変わって、最後の半周はただ全力で行くしかなくて。小室さんは速いし、(岡田)ヒナタはいつどこで仕掛けてくるかわかんないし、最後は小室さんを前に出しちゃまずいな、って思ってたんですが、逃げられちゃいました。勝ってチャンピオンを決めたかったけど、チャンピオンになってからの最終戦で、ノープレッシャーの状態で勝ってシーズンを締めくくりたい!」

画像: 23年もいいところを走りながら、けがでチャンピオン争いを外れてしまった久川 リベンジ果たした!

23年もいいところを走りながら、けがでチャンピオン争いを外れてしまった久川 リベンジ果たした!

17歳、高校2年生のチャンピオンが誕生しました。ヤマハYZF-R3で走っている久川は、このシリーズチャンピオンと同時に「ヤマハbLUcRU YZF-R3カップ」のスカラシップも獲得した模様。まだ正式発表前ではありますが、2025年はいま高橋匠と山根昇馬が参戦している「bLUcRU YZF-R3ワールドカップ」への出場権を獲得しました。てっぺー、おめでとう!

画像: スタート直後に転倒→赤旗!

写真/小縣清志 中村浩史 文責/中村浩史

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