MFJグランプリは10/26~27です!
この週末は、いよいよ全日本ロードレース最終戦「MFJグランプリ」が三重県・鈴鹿サーキットで行なわれます。まだ寒い3月上旬に、ところも同じ鈴鹿サーキットで開幕した2024年の日本選手権も、いよいよラストです。長かったようで、短かったですね。それはいつものことか!^^
すでに第7戦・岡山大会で、JP250のインタークラス=久川鉄平(bLU cRU Webike チームノリック)、ST600=阿部恵斗(スクアドラTIGRE タイラプロモート)、ST1000=國井勇輝(SDGチームハルクプロ)とシリーズチャンピオンが決まっています。
最終戦で決まるのは、最高峰クラスJSB1000クラスと、軽量級J-GP3、それにJP250のナショナルライセンスクラスですね。JSBとGP3に関しては、それぞれ「絶対王者」と呼ばれるに相応しいチャンピオンが君臨していますが、そこにヤングタイガーが襲いかかる――そんな一戦になりそうです。
<J-GP3> 絶対王者に挑む若武者・若松
J-GP3クラスはここまで5戦を終わって、2021年から3連覇中の尾野弘樹(P.MU 7Cゲイルスピード)がランキングトップにつけています。たとえば2023年の最終戦を前にした同じ時期には、やはり尾野がランキングトップで、ランキング2位の彌榮郡(当時J-GP3:マルマエwithクラブPARIS)に27ポイントというセーフティリードを持っていました。
それが、今年は様相が違うのです。尾野と、ランキング2位の若松怜(日本郵便docomoビジネスTP)のポイント差は、わずか「2」なのです!
ここまで5戦、尾野は開幕戦・もてぎ大会こそ、全日本開幕前のアジア選手権での転倒による負傷で4位と、珍しく表彰台を逃してしまいましたが、第2戦・菅生大会から3連勝。直近の岡山大会では0秒011差で2位に終わりましたが「尾野劇場」(本人談)はクライマックスに向かっています。
そして、尾野が優勝を逃した2レースを勝ったのが若松です。若松は全日本選手権4年目の18歳、21~22年はランキング11→7位と来て、23年は初優勝を含むランキング3位を獲得。今シーズンは、開幕戦から王者・尾野を破る幸先のいいスタートを切ったシーズンでした。
尾野が4位フィニッシュを1回しているのに対し、若松は全戦表彰台。今シーズンのJ-GP3クラスは、この尾野と若松、そして木内尚汰(チームプラスワン)が3強で、他に表彰台に上がったのは開幕戦の荻原羚大(WJファクトリー)と筑波大会の武中駿(チームShun and ZERO)の1回ずつですから、最終戦でも尾野と若松が上位入賞するのは確実。
ポイント付与は、MFJグランプリのボーナスポイント「+3P」を加えて1位28P/2位23P/3位19Pときて、尾野と若松の2ポイント差を埋めるのは、4位と5位まで。つまり、あくまでも仮定の話で、尾野と若松がふたりとも1~3位に入ったら、先着した方がチャンピオン、若松4位と尾野5位だと同ポイントで、優勝回数は尾野が上回っていますから、尾野がチャンピオン。まぁ、前を走った方がチャンピオン、というわけですね。
円熟の尾野と勢いの若松。特に若松は、10月はじめに行なわれたMotoGP日本グランプリの、Moto3クラスに急きょ代役参戦。結果は20位完走ながら、世界の壁をイヤというほど思い知らされたばかりなだけに、この負けをバネにするのか、負けを引きずってしまうのか――代役参戦がどっちに転ぶか、注目したいです。
<JSB1000> 勢いは後輩にあり!
6戦9レースを終わってJSB1000クラスのランキングトップにいるのは、中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシング)。「絶対王者」(←これ本誌が最初に言い出したんですよ、ホント!ホントだって!)と呼ばれる中須賀は、ここまでJSB1000クラスで12回のチャンピオン獲得を誇っています。最初のチャンピオンは2008年、所属はまだYSP&PRESTOレーシングからの参戦で、ダンロップタイヤを履いていましたね。
それから09年まで2年連続、12年から16年まで5年連続、18-19年に連覇、そして21年から昨年まで3連覇で、合計V12。間違いなく、日本ロードレース史に残るグレートチャンピオンです。
その絶対王者を追っているのが、チームメイトの岡本裕生。岡本はJSB1000クラスに昇格して3年目。すぐ横に絶対王者がいるというレース環境で、中須賀も常々、岡本には「何でも教えるし、オレの走りからいくらでも盗んでいい」と言っているだけに、チャンピオンの帝王学を学び、JSBデビューイヤーの2022年からランキング3位を獲得、23年にはついに中須賀を負かしての1勝を挙げてのランキング2位となっていました。
そして24年。このシーズンからドゥカティワークスマシン・パニガーレV4Rが日本に来襲、水野涼(DUCATI TEAM KAGAYAMA)と、ダンロップタイヤを履いてJSB1000クラスにデビューした長島哲太(DUNLOP RACING with YAHAGI)、さらにこのシーズンにMoto2から日本に帰国、マシンもヤマハからホンダにスイッチした野左根航汰(Astemo HONDA DREAM SI-Racing)が開幕前の話題を集める中、もちろん強いのは分かっていたけれど、さほど話題にならなかったのが岡本でした。
9レースを終えて、中須賀と岡本のポイント差は、わずか「4」。これは、中須賀には珍しく、追い詰められての最終戦です。ちなみに23年の最終戦前の岡本とのポイント差は「60」、22年はランキング2位の渡辺一樹(当時ヨシムラスズキRIDEWIN)との差が「98」でした。
それが最終戦2レースを残してのポイント差が「4」。最終戦は2レース制で、ボーナスポイント込みで優勝すると28ポイントを獲得できますから、ダブルウィンで56ポイント。計算上ではランキング3位の水野までチャンピオン獲得の可能性がありますね。
今シーズンのJSB1000クラスは、この中須賀と岡本、水野が3強で、第5戦オートポリス大会のレース2で高橋巧(日本郵便ホンダドリームTP)が3位表彰台に登壇するまで、この3人しか表彰台に上がっていないほどでした。
開幕戦の鈴鹿2&4から、もてぎ大会の2レース、菅生大会のレース1まで中須賀が4連勝。おぉ。今年も中須賀が強いなぁ、と思いつつも、常にトップ争いに絡んでくる水野と岡本の存在が、今年はそう簡単にはいかないかも、という予感を抱かせてもいたのです。
「(岡本)ユウキと(水野)涼のおかげで、レースのレベルがすごく上がったと思う。優勝したって、楽な勝ち方はないのに、今年はそれがキツすぎます」とは、開幕後の中須賀の弁。
その不安が的中したか、中須賀は菅生大会のレース2で岡本に敗れ、続くもてぎ2&4では水野が優勝、オートポリスは2レースとも岡本が勝ち、岡山大会も岡本が優勝。ここまで中須賀4勝、岡本4勝、水野が1勝という星勘定なのです。
特に5月26日の菅生大会レース2から、中須賀は水野と岡本を相手に5連敗。岡本の成長著しく、水野+ドゥカティの爆発力が脅威で、中須賀は最終戦に向かうのです。
「ヤマハのふたりは鈴鹿8耐に出てませんからね。その間も僕はパニガーレで鈴鹿を走りまくった。パニガーレは鈴鹿とは相性がいいのもわかっているし、まだチャンピオンの可能性も残っているわけだし、8耐とは違うスプリント仕様で、最後まで全力で走ります。気温が下がってエンジンが走る季節なので、すごく楽しみにしています」(水野)
「鈴鹿は実は、得意なコースという意識がないんです。でも、今回は木曜から走行があるので、しっかり時間を使って走ってみて、決勝のペースを確認したり、自分の強いところをきっちり作り込みたいです」(岡本)
「岡山は予選で転倒があって、決勝は出来る範囲でしか走れなかった。最終戦に向けてランキングトップ、またこの3人の争いになると思うけど、ドゥカティ+涼の速さも知っているし、ユウキの成長も知っているし、それをプレッシャーに感じずに、泣いても笑っても最終戦、このプレッシャーを楽しみに変えて走りたいです」(中須賀)
最終戦MFJグランプリは、土曜に1レース、日曜にもう1レースという2レース制。土曜のレースが終わった時点で、このランキングがどう動いているか、日曜の夕方には、さらにどうなっているか、に注目したいです。
写真・文責/中村浩史