蘇ったスーパースポーツは、ドゥカティのニュージェネレーション

10年ぶりにドゥカティ・スーパースポーツが帰って来た。読者の中にはスーパースポーツを知らない世代がいるかもしれないので僭越ながら説明させて貰うと、初代はベベルギアのLツインエンジンを搭載したマイク・へイルウッドレプリカに代表されるロングホイールベースのクラシカルなモデル。第二世代はカム駆動がコクドベルトに変更されホイールベースが短くなった俊敏なハンドリングマシン、第三世代はピエール・テルブランチが前衛的デザインを施した高速安定性を重視したロングホイールベースの高速巡航艦的モデルといった具合。2006年に一旦生産を終了したスーパースポーツが10年間のブランクを経て今回復活した。全世代を経験している俺としてはニュースーパースポーツがどんなマシンに仕上がっているか興味津々なのだ。

画像: 蘇ったスーパースポーツは、ドゥカティのニュージェネレーション

フルウエットの路面コンディションでも恐怖感なく楽しめる

今回の試乗はモンテブランコ(セビリア郊外にあるプライベートサーキット)でのサーキット試乗とセビリア郊外のワインディングラン。モンテブランコは1㎞近い直線とヘアピン、急坂を駆け上がるハイスピードコーナーまで揃ったテクニカルなサーキットでマシンとライダーが試される。当日は生憎の雨に見舞われたが、午前中はレインタイヤを装着したSでサーキット、午後からはスタンダードモデルで一般道を試乗した。

というわけで、まずはサーキット試乗だが、先に結論を言ってしまうと想像以上に安心感があり、フルウエットの路面コンディションでも恐怖感を感じることなく走りを楽しめた。その最大の理由はコンパクトになったニューSSのライディングポジションと洗練されたエンジンと電子制御に因るものだと断言しよう。ロードバイクにしてはシート高が低く、ヘッドパイプからシートまでの距離が短い上にハンドル位置が高く、ハンドルの絞り角も広いニューSSは、手を伸ばせばそこにハンドルがあるといった感じで、気楽に接することが出来る。

さらにクラッチ等の操作系が軽く、操作が楽。試乗車にはアクラボビッチのスポーツマフラーが装着されていて、排気音はノーマルより歯切れが良く、レスポンスも軽快になっているが、かといって生粋のスーパースポーツモデルみたいな噛み付かれそうな鋭さはない。走り出しはツーリングモードを選択したが、アクセル開度に従ってエンジン回転が忠実に上がっていく感じで、ウエット路面でもトラクションが確保されていることが分かる。

画像: フルウエットの路面コンディションでも恐怖感なく楽しめる

意識しなくてもサポートしてくれるハイテク装備

Sにはシフトアップ、シフトダウン両方向でクラッチ操作が不要なドゥカティ・クイック・シフトが標準装備されているのでスタート時に半クラッチを使うが一旦走り出してしまうと停止するまでクラッチレバーに触れる必要がない。操作が軽いシフトペダルを掻き上げると吹け上がりが滑らかなエンジンの効果でスムーズにギアが切り替わる。シフトダウン時にもペダルを踏み込んだ瞬間にエンジン回転が上昇し吸い込まれるようにギアが切り替わる。シフトアップ時のスムーズさは言うまでもなく、シフトダウン時のギアの切り替わりも非常にスムーズでマシンの挙動が乱れることは一切なかった。

スポーツモードに切り替えるとエンジンレスポンスがシャープになり6000回転過ぎからのトルクがグッと厚みを増し、最高速はツーリングモードの時速230㎞から時速237㎞へと7㎞/hもアップしたが、最高速からのブレーキングでも、レインタイヤのグリップ力に助けられている上に、ボッシュ製ABSはどこまで握っても前輪がロックする気配がないので、安心してブレーキレバーを握っていける。これはスムーズに作動するクイックシフターと、効いていることが分からないくらい自然に作動するABSの相乗効果がもたらしたものだと断言しよう。

そしてもうひとつ、作動していることが分からないほど自然なトラクションコントロール(DTC)だ。コンチネンタル製ライド・バイ・ワイヤの作用で、駆動力が車速を大きく上回る、つまりリアタイヤが滑りやすいヘアピンからの加速でも、リアタイヤが滑ることもなければマシンの挙動が乱れることもなかった。

マシンを起こしながら勇気を振り絞ってアクセルを開けたのに何事もなくコーナーから立ち上がって行くので怪訝に思った私がTFTデジタルメーターを覗き込むとメーター上側の中央部でDTCのインジケーターランプが点きっぱなしになっていた。つまり、トラコンはバリバリに効いていたのだ。ただ加速が鈍るわけでもなければ、点火カットされたエンジンから振動が発生することもなかったので私はDTCが効いていることが分からなかったというわけだ。

画像: 意識しなくてもサポートしてくれるハイテク装備

午後からセビリア近郊の峠をいくつも越える130㎞のルートでスタンダード仕様を試乗した。フロントフォークがマルゾッキ製、リアサスがザックス製で、クイックシフターがオプション設定になっているスタンダードは走り始めこそクラッチ操作に戸惑ってしまったが200メートルも走れば操作を思い出すし、ワインディングに入ってからはむしろクラッチを切ってギアチェンジしながらアクセルを煽って回転数を上げ、良きところでクラッチを繋ぐといったバイク本来の複雑な操作が逆に楽しくなってきた。また前後サスペンションはオーリズほどしなやかではないが、しっかりと踏ん張ってくれるので前後タイヤのグリップ力を感じ取りやすいし、旋回力を引き出しやすい。

午後からの試乗のほとんどを私はリーンウィズで走り切ったが、かつてないほど強くマシンとの一体感を感じられただけでなく、極めて疲労が少なかったことに驚かされた。試乗前、スーパースポーツに水冷4バルブエンジンを搭載することに疑問を感じていたが、私の疑念はものの見事に吹き飛ばされた。第4世代のスーパースポーツは親しみやすい新世代のロードスポーツに進化していたのだ。

用語解説

ドゥカティ・クイック・シフト【DQS】
クラッチを操作することなしにシフトアップとシフトダウンが可能なドゥカティ・クイックシフト(DQS)。シフトアップ時にスロットルを戻す必要もなく、あらゆるライディング・コンディションでシームレスなギア・チェンジが行なわれるように調整される。スロットルを閉じることでのタイムロスを防ぎ、パワーデリバリーが変化しないため、安定性も向上する。新型のスーパースポーツでは、“S"バージョンに標準装備され、スタンダード・バージョンにはアクセサリーとしてオプション設定されている。

ドゥカティ・トラクション・コントロール【DTC】
ドゥカティのDTCは8段階設定で、各段階では、ホイール・スピンに対する介入度が異なり、ライダーのライディング・スキルやグリップ・コンディションに合わせて調整することができる(レベル8が最大)。スーパースポーツでは、リアホイールのグリップが完全に回復するまで、点火時期を遅らせてトルクを削減することだけで介入することが可能になり、スムーズな作動を実現している。また、手動でキャンセルも可能で、3つのライディング・モードにはデフォルトのDTCレベルが割り当てられているが、手動でも設定が可能だ。

ドゥカティ・ライディング・モード
走行スタイルや路面のコンディションに合わせて、エンジン特性及び電子制御システムの設定を変化させることができる機能。あらかじめ、ポテンシャルをフルに発揮できる「スポーツ」、パフォーマンスと快適性のバランスを重視した「ツーリング」、グリップの低い路面での使用を前提にした「アーバン」の3つが設定されている。各モードでは、ライド・バイ・ワイヤシステム(パワーと出力特性を調整)とABS、DTC、DQSの設定が変化する。さらに、ライダーの好みでモードをカスタマイズすることも可能だ。

画像: 用語解説

各所に盛り込まれた最先端技術と、ダイナミックでエレガントなデザインの融合

画像: 新設計のトレリス・フレームは、前後のシリンダーヘッドが、メイン・スチール・フレームに接続されている。コンパクトかつ軽量なだけでなく、高い剛性を備えたシャシーで、新型スーパースポーツのダイナミックなパフォーマンスを引き出す。

新設計のトレリス・フレームは、前後のシリンダーヘッドが、メイン・スチール・フレームに接続されている。コンパクトかつ軽量なだけでなく、高い剛性を備えたシャシーで、新型スーパースポーツのダイナミックなパフォーマンスを引き出す。

画像: 新型スーパースポーツには、新開発されたピレリ製Diablo Rosso IIIが装着される。前モデル(Diablo RossoⅡ)と比べ、優れたハンドリングとグリップを約束し、最大のパフォーマンスと耐久性を実現している。

新型スーパースポーツには、新開発されたピレリ製Diablo Rosso IIIが装着される。前モデル(Diablo RossoⅡ)と比べ、優れたハンドリングとグリップを約束し、最大のパフォーマンスと耐久性を実現している。

画像: ボッシュ製9MPマルチキャリブレーションABSユニットによって制御されるブレンボ製ブレーキ・システムを装備。3段階のABSレベルを切り替えることが可能で、レベル1は、アスファルト路面のようにグリップの高い路面で推奨されるモードでフロントのみに作動する。レベル2では、ABSがフロントおよびリアホイールに作動し、リアホイールのリフト防止機能もオンに設定される。レベル3では、最大のブレーキとリアホイールのリフト制御が行われる。どのモードであってもABSシステムは手動でキャンセルすることが可能。

ボッシュ製9MPマルチキャリブレーションABSユニットによって制御されるブレンボ製ブレーキ・システムを装備。3段階のABSレベルを切り替えることが可能で、レベル1は、アスファルト路面のようにグリップの高い路面で推奨されるモードでフロントのみに作動する。レベル2では、ABSがフロントおよびリアホイールに作動し、リアホイールのリフト防止機能もオンに設定される。レベル3では、最大のブレーキとリアホイールのリフト制御が行われる。どのモードであってもABSシステムは手動でキャンセルすることが可能。

画像: スーパーバイクのパニガーレを彷彿させるフロントマスク。プレキシグラス製のスクリーンは高さを約50㎜調整でき、高速走行時には適切な風防効果を発揮。ツーリングユースにも対応したモデルであることがよく分かる。

スーパーバイクのパニガーレを彷彿させるフロントマスク。プレキシグラス製のスクリーンは高さを約50㎜調整でき、高速走行時には適切な風防効果を発揮。ツーリングユースにも対応したモデルであることがよく分かる。

画像: 視認性が高いTFT液晶メーターが平面を多用したボックス状のカウルステーにマウントされ、すっきりまとまったメーター周り。2段階50㎜ の調整幅で高さ調整が可能なフロント・スクリーンは手動式。

視認性が高いTFT液晶メーターが平面を多用したボックス状のカウルステーにマウントされ、すっきりまとまったメーター周り。2段階50㎜ の調整幅で高さ調整が可能なフロント・スクリーンは手動式。

画像: フロントブレーキはブレンボ製 M4-32 ラジアルマウントモノブロックキャリパーとφ320㎜ 径ディスクをダブルで装着。マスターシリンダーはブレンボ製 PR18/19 ラジアルタイプでレバーもアジャスタブルだ。

フロントブレーキはブレンボ製 M4-32 ラジアルマウントモノブロックキャリパーとφ320㎜ 径ディスクをダブルで装着。マスターシリンダーはブレンボ製 PR18/19 ラジアルタイプでレバーもアジャスタブルだ。

画像: 排気量937㏄ L 型 2 気筒テスタストレッタ 11°は最高出力 113hp(83.1kW)/9000rpm、最大トルク 9.9㎏m(96.7Nm)/6500rpmを発生。メインフレーム、シリンダーヘッド、リアサスが一直線に並んでいることが分かる。

排気量937㏄ L 型 2 気筒テスタストレッタ 11°は最高出力 113hp(83.1kW)/9000rpm、最大トルク 9.9㎏m(96.7Nm)/6500rpmを発生。メインフレーム、シリンダーヘッド、リアサスが一直線に並んでいることが分かる。

画像: オーリンズ製リアサスペンションユニットは後シリンダーヘッドに取り付けられた専用マウントに取り付けられ、片持ちスイングアームをストロークさせる。タンデムステップは独立式でシートレールにマウントされる。

オーリンズ製リアサスペンションユニットは後シリンダーヘッドに取り付けられた専用マウントに取り付けられ、片持ちスイングアームをストロークさせる。タンデムステップは独立式でシートレールにマウントされる。

画像: リアシート・カバーはSには標準装備、スタンダードバージョンにはオプション設定されている。シート高は810㎜だが、オプションでハイシート(+20㎜)、ローシート(-20㎜)、スポーツシートが用意されている。

リアシート・カバーはSには標準装備、スタンダードバージョンにはオプション設定されている。シート高は810㎜だが、オプションでハイシート(+20㎜)、ローシート(-20㎜)、スポーツシートが用意されている。

バリエーション紹介

スターホワイト・シルクは「S」の証! Ducati SuperSport S
国内導入予定時期:2017年6月
スターホワイト・シルク:183万9000円
レッド:180万9000円

オーリンズ製フルアジャスタブル前後サスペンション、アップ&ダウン両方向にクラッチ操作が不要なドゥカティ・クイック・シフト、リア・シートカバーを標準装備とする。スターホワイト・シルク(白バージョン)はS専用カラー。ボッシュ製9MP ABSとドゥカティ・トラクション・コントロール(DTC)装備で安全性も高い。

画像1: バリエーション紹介


画像: シート高が低く、シート幅もスリムなので足つき性は良好。ハンドルとシートの距離が近い上にハンドル位置が高いので上半身が起き上がった楽な姿勢を取れる。ハンドル幅が広く、垂れ角も少ないので腕も疲れにくい。

シート高が低く、シート幅もスリムなので足つき性は良好。ハンドルとシートの距離が近い上にハンドル位置が高いので上半身が起き上がった楽な姿勢を取れる。ハンドル幅が広く、垂れ角も少ないので腕も疲れにくい。

贅沢な装備のドゥカティ入門モデル! Ducati SuperSport
国内導入予定時期:2017年6月
レッド:162万9000円

フロントフォークはマルゾッキ製、リアサスペンションユニットはザックス製を採用し、ドゥカティ・クイック・シフトをオプションとすることで廉価にした。一方でABSとトラクション・コントロールは標準装備とし安全性は確保。ドゥカティ入門者でも手の届く価格設定になっている。Sとの価格差約20万円だ。

画像2: バリエーション紹介

各種アクセサリー・パッケージをラインアップ

ライダーのカスタマーズ・ニーズに応え、多用途性を高める各種アクセサリーも設定されている。Sport、Touring、Urbanの各パッケージがオプションとして用意され、スーパースポーツの両バージョンに装着可能。その他のカスタムパーツを追加することも可能だ。

画像: Touring パッケージ スクリーン、グリップ・ヒーターが1パッケージに纏められている。写真の車両には、オプションのアクラポビッチ製エグゾーストが装着されている。 ※日本導入未定

Touring パッケージ
スクリーン、グリップ・ヒーターが1パッケージに纏められている。写真の車両には、オプションのアクラポビッチ製エグゾーストが装着されている。
※日本導入未定

画像: Sport パッケージ カーボンファイバー製フロントフェンダー、燃料タンクカバー。可倒式レーシング・レバー・キット。ブレーキ・フルード・リザーバー用ビレット・アルミニウム製カバー。マフラーはオプション(別売)だ。 ※日本導入未定

Sport パッケージ
カーボンファイバー製フロントフェンダー、燃料タンクカバー。可倒式レーシング・レバー・キット。ブレーキ・フルード・リザーバー用ビレット・アルミニウム製カバー。マフラーはオプション(別売)だ。
※日本導入未定

Specification
全長×全幅×全高 2070×750×1150(1186)㎜
ホイールベース 1478㎜
シート高 810㎜
車両重量 210㎏
エンジン形式 水冷L型2気筒テスタストレッタ11° DS4バルブデスモドロミック
総排気量 937㏄
ボア×ストローク 94 x 67.5㎜
圧縮比 12.6±0.5 :1
最高出力 109hp/9000rpm
最大トルク 9.5㎏m/6500rpm
燃料供給方式 FI(フルライド・バイ・ワイヤ)
燃料タンク容量 16ℓ
キャスター角/トレール 24°/91㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 ダブルディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17

DUCATI JAPAN 公式サイト

  

最新モデルの試乗レポートも盛り沢山! オートバイ4月号発売中!

オートバイ 2017年4月号 [雑誌]

モーターマガジン社 (2017-03-01)

This article is a sponsored article by
''.