タイヤの選択肢が豊富な250㏄ロードスポーツクラスだが…
普段使いでの乗りやすさと、車両価格や維持費の安さで支持されている250ロードスポーツクラス。実際に街乗りやツーリングレベルでの走行性能は充分。だが、スポーツライディングシーンで物足りなさを覚えるのが250ccクラスのタイヤのポテンシャルだ。
ほとんどがストリート性能重視のバイアスタイヤを装着しているため、ハードに扱うとグリップと踏ん張りが足りず、オートバイが本来持っている性能を活かし切れないのだ。
そこで交換候補に挙がるのがラジアルタイヤだ。
「250クラスはバイアスで充分」とか「メーカー標準装着品がベスト」いう意見もあるが、80~90年代の250ロードスポーツの多くはラジアルタイヤを標準装備していたし、現行モデルもサーキット走行ではラジアル構造のスポーツタイヤに履き替えるのが常識。
二ンジャ250KRTウインターテストバージョンと、ライバル車とは段違いのスポーツ性能を持つCBR250RRがラジアルタイヤを標準装着していることからも、ラジアルタイヤの優位性は明らか。バイアスタイヤが標準装着されている最大の理由はコストなのだ。
では、タイヤ構造によって乗り味はどう変わるのか? ダンロップの販売店向け試乗会にお邪魔して、バイアスのGT601装着車とラジアルのGPR-300装着車、α14装着車を乗り比べてみた。
GT601で印象的なのは乗り心地の良さと軽快なハンドリング。路面の荒れた部分や小さな段差のある場所では衝撃吸収性の高さがよく判る。これはバイアス構造の持ち味だ。
半面、深いバンク角でパワーを掛けたときの踏ん張りが少し頼りないが、ストリートレベルなら不足なし。低価格でライフも長いというから、街乗りライダー向けだ。
ラジアルのGPR-300はGT601と比べるとハンドリングに落ち着きがあり、安定感が高い。250㏄クラスの軽量な車体との組み合わせではギャップ通過時に僅かにドタドタとしたフィーリングがあるが、旋回中のグリップ感もパワーを掛けた時の踏ん張りも充分。
街乗りだけではなく、峠道を含んだツーリングにも合っている。
別格のポテンシャルを見せたのがα14。グリップは格段に高いし、フルブレーキングから素早くバンクさせても妙な粘りがなく素直に旋回を始め、フルバンク状態での安定性も文句なし。
パイロンスラロームの切り返しでは特にフロントの接地感が失われがちだが、α14は荷重変化に対する接地感の変化が少なく、振り回すような扱い方でもタイヤが変形したり弾んだりして挙動を乱すことがない。
さすがにスポーツタイヤとして作り込まれているだけのことはある。乗り心地もバイアスタイヤ並みに良好だから、これといった弱点はない。
高性能タイヤは不要だと考えているライダーも、一度は試してみることをお勧めする。タイヤを替えるだけでハンドリングも乗り心地もスポーツ性も変わるということを体で覚えることで、オートバイに対する理解やライディングの質の向上につながるからだ。