全体のデザインの美しさは拍手もの!
これは見事にゼッツー、いや900Z1だ。名前も900RSであり、国内では向かうところ敵なしだったナナハン、750RSのベースモデル、900スーパーフォアZ1の再来そのものと言っていい。エンジンはすでに名車の誉れ高いカワサキZ100の水冷DOHC4バルブの直4がベースで、ボアを3.6mm縮小した948ccとする。
発表されたパワースペックはZ1000に比べれば30馬力、1.3kg-mのダウンだが、カワサキはこのモデルに「ライダーの心豊かな時間、操る悦びを提供するため、様ざまな最新技術を投入して開発した」と言う。スロットルを開いたときのレスポンスは、ライダーの感覚を先走らないように、あえてつくり込まれているというのだ。これは、まさしく900Z1譲りの味わいだろう。フットワークは倒立のFフォーク、ロングなスイングアームに組み合わされたリンク式のモノショック、そしてトラクションコントロールの搭載など、現代的なアレンジにも抜かりはない。
新設計の軽量パイプ製ダイヤモンドフレームにより、4本のエキパイはダウンチューブの障壁なしにすべてが前面にアピールする。右1本に集合されたマフラーは、メッキ仕上げではあるが、往年の集合マフラーを彷彿とさせる見事な仕上がりだ。全体の形状、プリチャンバーの構造、消音材のグラスウールの密度にまでこだわったことで、サウンドはライダーの心を昂ぶらせるものにチューニングされているという。
それにしても、全体のデザインの美しさは拍手ものと言っていい。かつての900Z1のオマージュに留まらず、踏襲されてはいても、けして媚びているとは感じさせない妙味が各所に見られる。そのこだわりのひとつに、17リッター入りのタンク前端下部とフレームの隙間に、きわめて凝った形状の樹脂カバーが施されていることからも伺える。これにより、特徴的なラインを描くティアドロップ型のタンク形状が、巧みに引き立てられているのだ。
このモデルは世界中に数多く存在するZフリークたちに、広く受け入れられるに違いない。それはネオクラシックと呼ばれるジャンルのバイクに望まれる、凛とした美しさが散りばめられている様子は、この画像からも充分に伝わるはずと思うからだ。
(写真/柴田直行)