スポーツバイクの魅力を手軽に楽しめる1台
東南アジア市場を念頭に置いたグローバルモデルながら、日本国内でのセールスも好調なのがジクサーだ。
マニュアルミッションを駆使してパワーを引き出し、前後左右への荷重コントロールにきちんと反応するハンドリングを活かして、意のままにコーナーをクリアする。そうしたライディングの原点ともいうべき魅力を備えたオートバイを30万円台の車両価格で販売しているスズキの姿勢は実に素晴らしい。
排気量150㏄なので、高速道路も走れる軽二輪に区分されるが、車体サイズはフルサイズの125㏄ロードスポーツと同等。車重も135㎏と軽量だから、身構えることなく扱える。着座位置の自由度も大きいので、体格に関わらず楽なライディングポジションが取れ、長時間走行も苦にならない。
ストリートファイター的なルックスながら乗り味はストリートコミューター的な用途に合った優しいもの。これはロングストローク設定のエンジンによる、低中回転域での力強さが効いている。5速・40㎞/h時は3000回転弱まで回転が落ちるが、そこからでもグズらずにトコトコと粘り強く加速するし、ゼロ発進も坂道発進も力強く、6000回転程度でシフトアップしていけば交通の流れをリードすることもたやすい。
引き換えにパンチ力や爽快な伸びといったスポーツフィールは薄いが、1万回転超まで振動もノイズも増すことなくスムーズに回るし、1〜3速のレシオをワイドめに設定したミッションもパワー特性に合っていて、ワインディングロードもストレスなく駆け回れる。さすがに高速道路では回転が上がるのでもう1速ギアが欲しくなるが、100㎞/h程度で走る分には苦にならない。
車体はハードに扱った際の剛性感と、流して乗っているときの快適性を常用する速度域の範囲でバランスさせたもの。急な切り返しやバンクさせたままのブレーキングでも不安な挙動は出ず、前後タイヤのグリップ状態もしっかり伝わってくる。これは大径フロントフォークの剛性とサスペンションの設定、幅広タイヤの組み合わせがバランスよく機能している証拠だ。
価格から想像するチープさはなく、長く付き合えそうな仕上がりと、小径ホイールのミニバイクやスクーターとはまったく違う乗り味が魅力。派手さはないが、二輪界の今後のためにも重要な存在だ。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2005×785×1030㎜
ホイールベース 1330㎜
最低地上高 160㎜
シート高 785㎜
車両重量 135㎏
エンジン形式 空冷4ストOHC2バルブ単気筒
総排気量 154㏄
ボア×ストローク/圧縮比 56×62.9㎜/9.8
最高出力 14PS/8000rpm
最大トルク 1.4㎏-m/6000rpm
燃料供給方式/燃料タンク容量 FI/12L
キャスター角/トレール 25度45分/105㎜
変速機形式 5速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ266㎜ディスク・φ220㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 100/80-17・140/60R17