タンデムも快適に楽しめるエレガントなボディデザイン
フランスの「プジョー」ブランドは自動車、自転車メーカーとして世界中で認知されているが、黎明期にはオートバイメーカーとしても名を馳せ、1930年代には500㏄という当時としては大排気量のモデルも製造していた。50年代以降は小排気量のモペットタイプやスクーターを主力とし、ヨーロッパ諸国ではメジャーな存在であり続けている。これまで日本では馴染みが薄かったが、今年3月にADIVA株式会社が日本の輸入総代理店となり、正規輸入が開始された。
この「ジャンゴ」のポイントは、60年以上前に人気を博したモデル「S55」をオマージュした優美なデザイン。存在感のあるフロントカウル回りと特徴的なリア回り、ツートーンのカラーリングがレトロ感を演出する。
しかし、走り出してみれば紛れもなく最新のスクーター。キャラクターに合わせてなのか、ヨーロッパブランドとしては珍しく低中回転域を使って穏やかに発進加速し、スルスルと速度を乗せていく。キビキビ走るタイプではないが、走行中のエンジン振動が少なく、吸排気音や駆動系のノイズも抑えられているから、長時間走っても疲れない。
ホイールベースが長いこともあって、ハンドリングは穏やかで、直進安定性重視の設定。その割に前後サスペンションが硬く感じたが、これは試乗車がほぼ新車でサスが馴染んでいなかったことも影響しているだろう。ただしタンデムライディングにはやや硬めのサス設定が合っていた。加減速時もギャップ通過時も車体姿勢が落ち着いているので運転しやすいうえ、前後に長いシートでライダーとパッセンジャーの着座位置自由度が大きく、長時間ライディングも快適。
しかも、シート形状の関係で頭の高さが揃うから会話もしやすい。もしかしてタンデム前提の設定なのかと感じたほど。カップルのタンデムには断然お勧めだ。逆にソロライドの頻度が多いなら、リアサスの5段階調整式プリロードを弱めてやればOK。装備は現代風で、LEDライトに12V電源ソケット、外気温計まで備えたデジタルメーターを備え、試乗モデルはフロントブレーキにABSも装備。これはビギナーにも大きな安心材料となるに違いない。
エレガントなデザインも、穏やかでタンデムが得意な走行特性も、指名買いの理由としては充分。オートバイには珍しいフレンチブランドというのもユーザーの心をくすぐる魅力だ。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 1925×710×1190㎜
ホイールベース 1350㎜
シート高 770㎜
車両重量 129㎏(乾燥)
エンジン形式 空冷4ストOHC2バルブ単気筒
総排気量 124.6㏄
ボア×ストローク 52.4×57.8㎜
圧縮比 NA
最高出力 10.2PS/8500rpm
最大トルク 0.9㎏-m/7000rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 8.5ℓ
変速機形式 Vベルト無段変速
ブレーキ形式 前・後 ディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70-12・120/70-12