70~80年代を受け継ぐ名車たち
全てを一からつくり上げたニューモデルもあれば、過去のモデルからイメージ、デザイン、技術を受け継いだオートバイもある。このページでは、70〜80年代のオートバイから「何かを」受け継いだオートバイの例を少しだけ紹介してみよう。
ライフスタイルまで変える魅力を持ったカスタム
ボバーは、アメリカで1940年代から始まったカスタムスタイルを徹底的に再現したモダンクラシックシリーズの最新作。バイクを抑え込みやすいようにムダを省き、スリムに低く造られた往年のマシンをイメージしている。このボバー、他のボンネビルシリーズとは違い、短い前後サスで車高を落とし、リジット風に見えるスイングアームを採用して、サドル型のシングルシートでリア回りを強調している。
このフォルムから受けるインパクトは強烈のひと言! 一見すると、ホンモノの古いバイクに見えるほどだ。しかも、走り出すと、タイヤにぴったりとフィットしたフェンダーが、テールランプやウィンカーと一緒にストロークに連動して動く。ライダーと一体になった時のフォルムも個性的で、そのルックスも人目を引いていた。
トライアンフがこのバイクに求めたのは、この姿であり、それが醸し出す雰囲気だ。だから、ファンバイクだと思うし、強力なファッションアイテムでもあるのだろう。
そんなことからも、このバイクに乗るときは、ライディングギアにもこだわりたくなると思う。当時のバイクたちが現役だった時代の姿をまねてもいいし、別のものをアレンジするのもいいだろう。ただし、その中心はボバーだ。もしこのバイクに魅せられたら、ボバーが持つテイストを中心に、そのライダーのバイクライフは回り始めることだろう。ある意味、覚悟のいるバイクだと言える。
エンジンは低中回転域のトルク、パワーを重視したセッティングが施されたT120系の水冷ユニット。T120シリーズと比べると、トップギアで60㎞/hから再加速できる豊かなトルクは同じだが、100㎞/hでの回転数は2500〜3000回転の間にある。同じツインエンジンながらハーレーのスポーツスター1200のVツインとはまた異なった、味わい深い鼓動感を発しつつ、ムダな振動もなく、クリアに回る。Vツインよりバイクの雰囲気にマッチした、いい演出をしてくれるバーチカルツインだ。
さらに印象的なのが、この独特なライディングポジションだ。腹筋を鍛えたり、腰を鍛えても、高速道路のクルージングスピードは法定速度付近プラスアルファぐらいがお勧めだ。このスタイルを実現するため、短くされたサスのストロークはとても少ない。リアはまだいいが、フロントは急制動するとほぼフルボトムしそうで、路面からの強い衝撃は苦手だ。だが、それで苦言を言うのはお門違い。そうならないように乗りこなすのがこのバイクの楽しみ方だからだ。
上手に乗りこなせば、峠道で元気に走ることもできるし、取り回しも容易。そのルックスからは想像できないほどの扱いやすさも備えているので、このテイストを心置きなく楽しむのが正解。強烈な個性をウリにした、愉快なバイクだ。
ボバー/スクランブラーに流れる名車のDNA
伝統と歴史に培われてきたトライアンフだけに、カスタムシーンと関わりは深く、カフェレーサー、スクランブラー、ボバーなど、さまざまなカスタムシーンで伝説を残している。近年のネオクラシックブームでボンネビルシリーズの注目もより一層高まっているが、いうなればトライアンフはこうしたカスタムシーンの歴史を支えてきた「正統派」メーカーでもあるのだ。