新時代のパーソナル・モビリティ
HONDA PCX ELECTRIC
開発者VOICE
2017年の東京モーターショーで発表されてから1年。いよいよ最先端のPCX・エレクトリックがデビューを果たした。そもそも、このエレクトリックはどのような経緯で誕生したのだろうか。
「始まりは、2015年の東京モーターショーで発表したEV-Cubでした。将来の電動パーソナルモビリティということで開発がスタートしたのですが、カブの車体だと、必要な性能をまかなえるバッテリーの搭載スペースが十分ではなかったのです。そこで、同じパーソナルモビリティとして定評があり、バッテリー搭載スペースの自由度が高いPCXをベースとしたのです」
折しも、ベースのPCXもフルモデルチェンジを迎えた時期。新設計のダブルクレードルフレームも、今回のエレクトリックに大きく貢献したそうだ。
「PCXのフレームは剛性も高く、バッテリーを包み込んでくれるようなレイアウトで、EV化を進めていくベースとしても最適でした。タンクの代わりに補強のハンガーを追加するなど、変更も少なくて済みましたし、正直言って〝御の字〟です(笑)」
開発陣が最も苦労したのはバッテリー。最重要部品だけに大変だったようだ。
「性能面では特に苦労はなかったのですが、二輪車に搭載するということで、耐衝撃性などを十分に確保するのが大変でした。初期の頃のバッテリーは本当に巨大で、これをどうコンパクトにしていくか悩みました」
家庭でも便利に使えるよう、着脱式のパワーパックとするなど、努力と工夫でまとめあげたPCXエレクトリック。「未来の乗り物」をグッと身近にしてくれたのは、開発陣の努力のたまものだったのだ。
「これから実際に混合交通の中に入っていくわけですが、まずは皆様に日常の生活環境の中でどんどん使っていただいて、ご意見をいただけたらありがたいです」
気になる「加速」を実測!
PCX ELECTRIC 加速データ
計測内容 タイム(秒)
0-100m加速 9.344
0-10km/h加速 0.397
0-20km/h加速 1.246
0-30km/h加速 2.507
0-40km/h加速 4.369
0-50km/h加速 6.776
ここでPCX ELECTRICの気になる発進加速データを実測してみた。表を見てみると、スタートから30㎞/hあたりまではスムーズに加速するが、そこから加速の伸びは穏やかなものになっていく。実用最高速度は60㎞/hちょっとといったところだ。ちなみに、0-100m加速は9.344秒で、スタンダードのPCXは7.718秒、シリーズ最速のPCXハイブリッドは7.388秒だった。※本誌計測、GPSによる測定
大久保 克幸氏
株式会社 本田技術研究所
二輪R&Dセンター
第1技術開発室 第1ブロック
研究員
三ツ川 誠氏
株式会社 本田技術研究所
二輪R&Dセンター
第1商品開発室 第2ブロック
主任研究員
森下翔斗氏
株式会社 本田技術研究所
R&DセンターX
エネルギーマネージメント
プロジェクト
大場洋明氏
株式会社 本田技術研究所
二輪R&Dセンター
第3技術開発室 第3ブロック
PHOTO:南 孝幸