ハイレベルなポテンシャルが生む誰にでも扱いやすい優しさ
2019年型のZXー6Rは最新のニンジャシリーズの流れを汲む、アグレッシブな面構えになった。今回試乗したモデルは6Rとしては初の国内仕様。骨格やエンジンの基本レイアウトは先代モデルを踏襲するが、新型は外装を一新、EURO4適合のためにマフラーやエンジンマネージメンなどにも細かく手が入っている。
ホモロゲーションモデルとしての600㏄という排気量にこだわらず、636㏄という排気量を選択したZXー6Rは、プラス36㏄の排気量が生むゆとりあるパワーを味方に、乗り手に従順に仕える扱いやすさを獲得。以来、無駄なレースポテンシャルの追求をやめ、現実的なスポーツライディング性能の向上を求めて進化してきた。
この新型も、そのテーマは変わっていない。まるで400クラスのように身軽でよく曲がるし、街中や路面の荒れた峠道を流しても、飛ばしてもサスが路面によく喰いつく。前後のバネが、超高速コーナリングなどで求められる強い反力設定ではないからだ。リアサスのバネだけタンデムを意識してなのか、レース専用モデルより少し自由長が長いそうだが、それによる硬さは感じなかった。
これまで通り、荒れた路面をものともしないし、乗り心地やスタビリティは前モデルよりずっと良くなっているように思う。かなりヤンチャなスポーツライディングでも快適な上に限界が高い。新採用のタイヤ、BSのS22とのマッチングも良好なおかげだろう。
スリッパークラッチもあえて作動させてみたが、スリップから完全に圧着するまでの自然な感触がすばらしい。加えて、ABSの作動ポイントも、峠道でスポーツするのにちょうどいい「辛さ」。ギャップなどで不意な作動をすることはなかった。
エンジンも扱いやすい。レッドゾーン1万6000回転という高回転型だが、6速・100㎞/hの回転数は6000回転。大きな減速比だから回しやすいし、広く見ると8000〜1万5000回転強の広いパワーバンドまである。力の核は1万2000回転以上だが、淀みなく滑らかに回るし、レスポンスが優しく、トルクの応答はリニア。小排気量車からステップアップしてきたライダーでも、慣れれば扱いやすいだろう。
やはり「扱いやすさの636」は健在。サーキットでも峠道でも、多くのライダーの従順な相棒になるだろう。
SPECIFICATION
全長x全幅×全高 2025x710x1100㎜
ホイールベース 1400㎜
シート高 830㎜
最低地上高 130㎜
車両重量 197㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量 636㏄
ボア×ストローク 67x45.1㎜
圧縮比 12.9
最高出力 126PS/13500rpm(ラムエア加圧時:132PS)
最大トルク 7.1㎏-m/11000rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 17L
レイク角/トレール量 23度50分/101㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ310㎜ダブルディスク・φ220㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17