今回試乗した3モデルは、いずれも「KECS」と呼ばれる電子制御サスペンションを装備しているのが特徴。最近よく聞くアイテムだが、そもそもサスペンションを電子制御することで、どんなメリットがあるのだろうか?
KECSの仕組みを見ながら、ちょっと勉強してみよう。

性能だけでなく安全性、快適性も向上させる!

近年、減衰力(ダンパー)を電気的な装置を介してコントロールする「電子制御サスペンション」を持つ大型スポーツモデルやアドベンチャーモデルが増えた。

これはIMU(慣性計測ユニット)などでサスの動きや車体姿勢を検出し、サスユニットに取り付けたモーターで油圧回路を可変させて減衰力を制御する仕組みで、走行状況や好みに応じた乗り心地、安定性、旋回性を得られるうえに、機械式とは異なり走行中でもスイッチ一つで設定を切り替えられることがメリット。

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だが、そのシステムの多くに採用されているステッピングモーターは応答性に限界があり、スポーツライディングでは減衰力の立ち上がりに遅れを感じることもある。

カワサキが採用する電子制御サス・KECS(Kawasaki Electric Control Suspension)は、ショーワの電子制御サス「EERA(イーラ、Electronically Equipped Ride Adjustment)」をベースとしたセミアクティブサスペンション。

通常のモーターではなく、直動型ソレノイドバルブを採用することで、反応速度を大幅に向上させているのが特徴だ。

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またKECSの場合、量産車としては珍しいストロークセンサーを内蔵したダンパーを採用。

サスの動きを緻密かつ素早く検出し、ステアリングダンパーの強さも含めてきめ細かい制御を実現、さらにプリロードを可変させる車高調整機構も加え、状況に応じたサスペンション設定を得ている。

加えて、このシステムは専用のECU(エレクトロニックコントロールユニット)を採用し、IMUがもたらす加減速の情報や、FI用のECUから得た車速情報を統括して制御、走行状況に応じたリアルタイムなサスペンション設定が可能なのもポイント。

コーナリング時の車体姿勢を制御して旋回性や安定性を高める、減速時のアンチダイブを抑える、加速時にリアの沈み込みを抑えて効率良くトラクションを得る、といったことが今までとは違う高いレベルで可能だし、カワサキ独自のアプリを使えば、スマートフォンと通信させて各種のデータを確認したり、自分好みのセッティングを施すこともできる。

性能だけでなく、安全性、快適性も高める、まさに新世代のサスペンションだ。

DETAILS

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ショーワと共同開発したKECSのメリットは、既存のサスペンションに電子制御ユニットを追加する構造を取っているので、幅広い車種に適応可能なこと。

これはZX-10R用のBFFをベースとしたユニット。

フォークもリアサスも、量産車としては珍しく、ユニット内にストロークセンサーを内蔵。

これで車体情報をより緻密にしている。

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こちらは同じくZX-10R用のリアサス・BFRCライトをベースとしたユニット。

外観上の差は通信用のハーネスが追加された程度だが、機能は大幅に高められている。

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フロント同様、ソレノイドバルブを介して減衰力を変化させる仕組み。

作動レスポンスは従来のステッピングモーター方式の比ではない素早さを実現している。

PHOTO:赤松 孝 TEXT:太田安治、月刊『オートバイ』本誌編集部

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