営利目的でない大半の草レースではスタッフはほとんどボランティアに近い待遇で動いてくれています。今回はその一例として、今や東日本で大きなムーブメントとなっている日野ハードエンデューロを支えてくれるスタッフの方々を取材させていただきました。
コース開拓こそがスタッフの醍醐味
レースの約2ヶ月前から、開拓スタッフは週末にコースに集まり、難易度を考えながらコース作りをしています。参加するライダーのレベルを考え、どのくらいの難易度が良いか相談しながら開拓していきます。
エンデューロレースのスタッフはみなさんベテランのライダーばかり。自分のライダーとしての経験を元にちょうど良い難易度のコースを作っていくのが、レースを成功に導くためのスタッフの腕の見せ所なのだそうです。
臨機応変な判断が求められる責任重大な立場!
スタッフの皆さんは、当然ですがライダーよりも早く会場に入り、準備をしています。日野ハードエンデューロでは全部でおよそ30人のスタッフが動いてくれているそうです。
難しいセクションで転倒してしまった時に、スタッフに助けてもらったことのある人も多いでしょう。ライダーが怪我をしてしまった時などには代走してくれることも。
日野ハードエンデューロのルールでは、観客は手が出せません。その場に居合わせたスタッフが助けるべきか、見守るべきかを判断し、各自で行動しなくてはいけません。
レースが終わっても、もうひと仕事あるんです
私たちライダーはレースが終わって表彰式が終わると、疲れを取るために温泉に入ったり食事をしたり、自由です。ですが、スタッフの皆さんはコーステープの回収やテントの片付けなど、まだお仕事があるんです。
さらにレース当日だけでなく、その翌週末にはレースで荒れてしまったコースを修復するために集まることも。
運営のお手伝いも大事な役目
コース上で働く人たちだけではありません。受付や集計、協賛品の管理など、スタッフの仕事は多岐に渡ります。
じゃんけん大会の相手役はやっぱり女性がいいですよね。
聞いてみました! スタッフの生の声
日野ハードエンデューロのスタッフは主に「グンマーズ」「怪しい道調査隊」「デコボコフレンズ」の3チームのメンバーで構成されています。今回はその中から3名にインタビュー!
井田哲史さん
「今日はスタートの整列とバックマーシャルをやっていました。事前にはコースの開拓にも関わらせてもらいました。みんなでコースをみて、アイデアを出し合い"あそこを使おうよ"とか話し合いながら楽しくやっています。
レースに参加された方が楽しかったって言ってくれるのが一番嬉しいですね。あとはやっぱり自分たちが狙った通りの展開になると達成感があります。今回は下りを多めにしたので、そこは少しやらしく作りました。その難易度の微妙なさじ加減は自分がこれまでオフロードバイクで遊んできた経験が元になっていますね。
やっぱり栗田さんがリーダーでいてくれて、招集をかけてくれるからできるんだと思います。他の人だったら、なかなかこうはいかなかったかも知れません。
レースとはいえ、あんまりムキにならずに遊び感覚で参加してもらえるといいと思います。無理してバイクを投げちゃったりすると他の人にも怪我させちゃったりするので、あまり目を三角にせずに楽しく走ってもらえたらな、と」
松田基さん
「コースを作る時はまず参加者のレベルを予想して、トップの周回数を設定するんです。例えば今回は"トップが3周"と決めたとしたら、自分が長年色々なレースに出てきた経験を生かして、3周しかできないようなコースを作るんです。それが、実際にレースをしてみて、ばっちりハマるのが、とても面白いんです。
自分は第一回から関わってるんですけど、日野ハードエンデューロもだんだん回数をこなしてきたので、決まったセクションがいくつかあって、自分たちもコースを知り尽くしているので、だんだん開拓の期間も短くて済むようになってきました。あとは新規に開拓したり、繋ぎ方を変えたり変化をつけて楽しんでいます。
今回はちょっと沢を難しくしすぎたかも知れませんね。あんなに渋滞するとは思いませんでした。でもトップは4周してるから、まぁ予想通りだったかな。ハードエンデューロは(スタッフの作る)コースと参加者の戦いですから、"難しい、けど面白い"っていうコースを作っていきたいですね。秋のG-NET戦では去年を超える面白いコースを作りたいです。
みんな栗田さんの人柄に惹かれて好きで集まってやっています。強制力は何もないですし、楽しいから、やってる。難しいコースを作って参加してくれるみんなをいじめるのが楽しみなんです(笑)」
主催・栗田武さん
「3年前に初めて日野ハードエンデューロをやった時は、本当は30人ほどの身内だけでお遊びレースをやろうと思っていたんですよ。だけどせっかくやるなら一般募集もしてみようという話になって、やってみたら大盛況だったという。その時は私を含めてスタッフもみんなレース運営の経験はほとんどなくて、本当に苦労しました。私も至らないところがたくさんあって、スタッフのみんなにたくさん支えてもらいました。
それが今ではスタッフの経験値がすごく上がってきていて、私が指示をしなくてもどんどん動いてくれるんです。とても信頼できるスタッフですし、スタッフの判断を尊重したコース作りや運営をしていきたいと思っています。
今回のコースは、ハードエンデューロなんですけど、"楽しいコース"を目指してみました。日野の名物であるロングヒルクライムをなるべく使わず、少しクロスカントリーを意識した設定にしてみました。いつもの日野ハードとは違う、SE-Eという新しいレースの初戦として特徴のあるコース設定にしたかったんです。
私たちが日野ハードエンデューロをやっていることで、参加してくれる方の人生に楽しい想い出を一つを作ることができたら嬉しいな、と思っています。また、レースをやることで、普段の週末にもこの日野カントリーオフロードというコースに練習にきてくれる人が増えたのがとても嬉しいです。その分だけこの素晴らしい遊び場を存続していくことができるからです。
至らないところだらけで、レースになると周りが見えなくなってしまう私ですが、スタッフのみんなにはいつもフォローしてもらっていてとても感謝しています」