『城森 暁 氏 ヤマハ発動機株式会社 MC事業本部 第二事業部 車両開発部』
明確に3モードを違いを体感できる
唸るように回るパワフルな3気筒エンジン…モタードモデルのような個性的なスタイル…跨がっただけで分かるほどの軽さ……このMT、基本的にはスポーティなネイキッドなんだが、この3つの特徴がそのキャラクターを強烈に際立たせている。
まずこのエンジン。唸りを挙げるようなトリプルサウンドも面白いが、スロットル操作にリニア反応するコシのあるトルクがスゴい。
3〜4000回転からの通常ダッシュでもオーバー1リッターなみの加速力を発揮する。さらにパワーモードの切り替えをスロットルに最も敏感な「A」モードにしておくと、かなりの暴れん坊になる。
パワーバンドの7000〜1万回転強あたりをラフに使ってコーナーから立ち上がると、3速くらいまで、パワーリフトする。
アップライトなライポジやコンパクトな車体などとの関係もあるのだが、なかなかヤンチャなパフォーマンスをする。
かつて試乗した輸出仕様のように勝手にそうなるのとは違うのでキケンはないが、ヤリ過ぎには注意が必要だ。
ストリート用の「B」モードで走っている限り、スロットルのラフな開閉、それに微妙な開度にも優しく、それでいてリニアに力を増減させて応える。
ちなみに100㎞/hの6速は4000回転ほど。もう十分に強力な回転域だ。そして、その時のノイズは4発の4分の3。快適だ。
快適と言えば、乗り心地の良さもMTの魅力。ソフトなバネを採用しており、1G状態でも伸び側のストロークを多めに蓄えたオフ車のような味付け。
凸凹などを上等なツアラーなんかよりずっと滑らかに乗り越える。
そんな足まわりだが、峠道ではしっかり踏ん張り、操れば不思議と接地性がいい。
少しリヤがソフト目の感じがしないでもないが、ビックリするほど元気に走る。身のこなしが軽快で快適。
MTは、こんな活力の漲るバイクなのだ。しかもリーズナブルなプライスで、それを感じさせないルックスもある。
魅力満載のストリートファイターである。
SPECIFICATION
■全長×全幅×全高 2075×815×1135㎜
■ホイールベース 1440㎜
■シート高 815㎜
■車両重量 188(ABSは191)㎏
■エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
■総排気量 846㏄
■ボア×ストローク 78×59㎜
■圧縮比 11.5
■最高出力 110PS/9000rpm
■最大トルク 8.9㎏-m/8500rpm
■燃料供給方式 FI
■燃料タンク容量 14ℓ
■変速機 6速リターン
■ブレーキ形式 前・後 φ298㎜ダブルディスク・φ245㎜ディスク
■タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17
RIDING POSITION 身長:176㎝ 体重:68㎏
車体がスリムなので、足着き性も良好でシート高を感じさせない。
基本的には上体の起きた姿勢になる。
ハンドルを抑えやすく、ステップ位置と座面がフラットなシートのお陰で着座位置の自由度が大きいので、かなりいろんな姿勢を自在に選べる。
並列3気筒の優位性を改めて世に知らしめた
慣性トルク変動が少ない、トルク特性がリニアかつ滑らか、高回転域の伸びがいいといったメリットを持つ、120度クランクを採用する並列3気筒エンジンは「クロスプレーンコンセプト」に基づいて開発された。
クランク、ミッションのメイン/カウンターシャフトを三角形に配置したのをはじめ、シリンダー間のピッチを極限までタイト化するなど、最新スーパースポーツのノウハウも投入してコンパクト化も追求。
振動を低減するバランサーシャフトも備える。
カスタム素材としても注目度「大」
軽量化のために不要な装飾を一切廃したMT-09。
逆に考えればドレスアップの余地が数多く残されていることになる。カスタム業界からも注目の1台だ。
DETAILS
φ41㎜倒立フォークはスプリングプリロードと伸側ダンパーの調整が可能。
ダンパー調整ダイヤルは右側のみの装備だ。
ブレーキはφ298㎜ダブルディスクにラジアルマウント4ピストンキャリパーを組み合わせる。
角を落とした滑らかな造形が特徴の左右非対称スイングアームは、足元の幅を詰めるためにフレームを内側に追い込んだ外側締結方式を採用。
リアブレーキはφ267㎜ディスク+片押し式1ピストンキャリパーの組み合わせ。
軽量コンパクトなフル液晶メーターは、ライダーの視界に配慮して右にオフセット。
ギア位置や平均燃費、気温、ECOインジケーターなど、表示機能も充実している
ライダーが動きやすいよう段差を極力抑えたフラットシートを採用。
タンクと接する先端部には、グリップ性の高いフロステッドパターンの表皮が溶着されている。