ビッグツアラーも顔負けの上質さと快適な走りを実現
250ccロードスポーツといえば「軽量コンパクトな車体、スポーティーなハンドリング」というイメージだが、GSR250はこれに当てはまらない。
余裕たっぷりのライディングポジション、フンワリとやさしい乗り心地、4気筒のようにスムーズなエンジン特性と安定志向のハンドリングなど、大型モデル的な要素が多いからだ。
事実、同クラスのライバル車との比較試乗取材では、往復の自走区間でGSRの奪い合いになる。
そしてGSRのバリエーションモデルとして登場したのが「S」。
主な相違点はフレームマウントのハーフカウルと大型スクリーンの装備、ハンドル位置の変更だから狙いは明確。
快適なクルージング性能の獲得だ。
跨ってすぐに判るのがライディングポジションの違い。
スタンダードのGSRよりグリップ位置が48㎜高く、66㎜手前になったことで上体は完全な直立状態になり、前傾姿勢による腕や首への負担がまったくない。
肉厚のシートと併せ、大型ツアラーのようなラグジュアリー感がある。
かなり高さのあるスクリーンの効果は街乗りのペースから感じられ、高速クルージングでは上体のほとんどをカバー。
身長177㎝の僕でも少し腰を引いてごく軽い前傾ポジションを取れば、走行風が当たるのはヘルメットの上半分程度。
外気温5℃での試乗だったが、襟元から寒風が入ることもなく、背中を押すような風の巻き込みも感じられない。
ウインドプロテクション性能の高さは数ある250ロードスポーツの中で最強レベルだ。
カウル装備によってハンドリングが重くなることを心配する人もいるだろうが、ハンドル形状の変更によって力が入れやすくなり、手応えは逆に軽くなっている。
渋滞路でも疲れず、Uターンもやりやすい。
さすがに横風の影響を受けやすくはなっているが、快適性向上と差し引きすれば納得できる範囲内。
最も快適な速度域は40〜100㎞/hあたり。
100㎞/h時は6速で約7500回転だが、振動がないうえに吸排気音もメカノイズも静かで、軽二輪クラスで気になる「回ってる感」がないし、パワーとトルクがバランスよく出ている回転だから追い越し加速でもシフトダウンは必要ない。
Sの持ち味はライバルを大きく上回るクルージング性能。
250ロードスポーツで一日に300㎞以上走るなら、僕は躊躇なくこのオートバイを選ぶ。
SPECIFICATION
■エンジン形式:水冷4ストOHC2バルブ並列2気筒
■総排気量:248㏄
■ボア×ストローク:53.5×55.2㎜
■圧縮比:11.5
■最高出力:24PS/8500rpm
■最大トルク:2.2kg-m/6500rpm
■燃料供給装置:FI
■全長×全幅×全高:2145×790×1305㎜
■軸間距離:1430㎜
■シート高:780㎜
■車両重量:188㎏
■燃料タンク容量:13ℓ
■ブレーキ前・後:φ290㎜ディスク・φ240㎜ディスク
■タイヤ前・後:110/80-17・140/70-17
RIDINGPOSITON
上体は完全な直立状態で、手首や肘の曲りも緩やか。
車両だけ見るとスクリーンが長く感じるが、防風性能を追求しただけではなく、ライダーが乗った状態で視界の邪魔にならない絶妙な高さになっている。
足着き性は身長160㎝程度のライダーでも不安なしだろう。
DETAILS
上質でスムーズな吹け上がりに加え、ロングストローク設定で粘り強いパワー特性も備える。
偶力バランサーで振動を抑えて快適性も抜群。
特徴的なデザインのハーフカウル本体と大きく高いスクリーン。
風洞実験を繰り返して形状を決定し、ライダーとパッセンジャーを走行風からカバーする、優れた防風性能を実現している。
GSRの生産地である中国をはじめ、アジア圏では左右対称のデザインが好まれる傾向にある。
そんな声に応え、GSRもシンメトリーデザインなのだが、同様の理由でマフラーも左右対称の2本出しとなっている。
大きな荷物を積んでも安定して駐車でき、メンテナンスにも役立つセンタースタンドを標準装備。
分厚いクッションの大型シートは、乗り心地だけでなくフィッティング感も良好。
ライダーだけでなくパッセンジャーも快適に過ごせる。
●PHOTO:南 孝幸/森 浩輔●TEXT:太田安治/本誌編集部