快適な乗り心地と実用性を兼ね備えた好パッケージング
モト・グッツィの主力と言えば、かつての名車をオマージュしたV7シリーズやV9シリーズなどのレトロテイストモデルだろう。
小柄で扱いやすく、かつ、モト・グッツィ独特のエンジンレイアウトが生む大きな前輪荷重により、かつて一世を風靡したオンザレール感覚のハンドリングまで楽しめる。
このV85TTは、そんなモト・グッツィとしてはステルビオ以来久々となるアドベンチャーモデル。その姿は非常にユニークで、かつてのデュアルパーパスの雰囲気を漂わせつつ、これまでにないフォルムで個性を主張している。
このタイプのモデルとしてはコンパクトで、車重も229㎏と軽め。使い勝手のいいサイズにまとまっているのが魅力だ。これに搭載される新設計の縦置きVツインエンジンがまたすばらしい。
排気量こそV9と同じながら、その中身は別物で、V7やV9より25馬力も強力な80馬力を発揮。しかも、このエンジンがフレキシビリティに富んだパワーを生む。
グッツィ独特のパルス感が常にハンドルに伝わるが、回り方は滑らか。6速で2000回転以下、50㎞/h強ほどからスロットルに応答し、ノッキングもなく加速できる。強力な加速とまでは行かないが、よく粘り、十分以上に実用的。ダートなどで微妙なパワーが必要なとき非常に重宝する。
トップギアの6速・100㎞ / hだとメーター読みで3800回転ほど。欲張らず、200㎞/ hくらいまでで力を使い切るギア比になっているのも好感が持てる。4000回転からのトルクにコシがあって、かなり力強いのも魅力だ。
スロットルにダイレクトで扱いやすく、豪華なアドベンチャースタイルでありながら、その気になればミドルNKと変わらない勢いでダッシュすることも可能。かなり元気よく走ることもできるのだ。
乗り心地はこのカテゴリーの中でも優秀で、オンロードではグッツィの伝統である、オンザレール感覚の高速安定性まである。
さらに本気でダート走行を意識した前後サスの動きがしなやかで、舗装路にある大抵のギャップを優しく吸収するし、少々荒れたダートでも突き上げられずによく走る。ただし、ダートではライディングモードを「オフロード」にしておいた方がよりスムーズだろう。
V85TTの魅力は、ほど良いサイズとキッチリ使える等身大のパワー。個性的な姿だけでなく、走りも非常に魅力的な本格アドベンチャーなのだ。(宮崎 敬一郎)
タンデムCHECK!
シートとステップの位置関係がよくて、足の曲がりが自然だから、ポジションの自由度が高いです。ライダーとの間に十分なスペースがあるので、リラックスしてタンデムを楽しめます。排気音が意外と勇ましく、タンデムライダーにも独特のパルス感は伝わってくるので、ライダーと一緒に走りを楽しめます。 (木川田ステラ)
モト・グッツィ V85TTの主なスペックと価格
全長×全幅×全高 2240×950×1300〜1325mm
ホイールベース 1530mm
シート高 830mm
車両重量 229kg
エンジン形式 空冷4ストOHV2バルブV型2気筒
総排気量 853cc
ボア×ストローク 84×77mm
圧縮比 10.5
最高出力 80HP/7750pm
最大トルク 8.15kg-m/5000rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 21L
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ320mmダブルディスク・φ260mmディスク
タイヤサイズ 前・後 110/80-19・150/70-17
モト・グッツィ問い合わせ先:ピアッジオグループジャパン TEL.03-3453-3903(ピアッジオコール)