最大の特徴はクラッチ付きのマニュアル4速ミッションの採用。走る楽しさがグンと広がった新型を早速チェックだ!
バイクを操る楽しさを改めて教えてくれる
モタードモデルを2/3スケールに凝縮したルックスと、剛性の高い車体、本格的な足回りが秘めるスポーツ性能によって、街乗りからミニバイクレースまで幅広く楽しめるKSR110。
生産国であるタイの実用モデル用のエンジンベースなだけに、耐久性や燃費の良さには定評があるが、実用向きの遠心クラッチがスポーツ性能をスポイルしていたのも事実。
そこで新たに追加されたのが、一般的なマニュアルクラッチと4速リターン式ミッションを組み合わせた「PRO」だ。
キックスターターも備えているが、通常はセルモでエンジンを始動。コンパクトな車体サイズながら111㏄の排気量があるだけに、排気音は意外に太くて迫力がある。
注目のマニュアルクラッチだが、操作が軽く、繋がりも切れも上々。
シフトフィーリングもごく自然だ。
遠心クラッチは高回転まで引っ張った際のシフトアップと急減速時のシフトダウンで大きめのショックが出やすく、スポーツライディングではリズムが取りにくいが、クラッチがあれば全く問題なし。
4速ミッションのワイドなレシオを半クラッチを使って補うというマニアックな操作もできる。
スポーツライディングの観点からはクロスレシオの5速が欲しくなるが、街乗り用ならせわしさのない4速で充分だ。
エンジン特性は低中回転域での力強さを重視したもので、発進加速力は十分。
逆に高回転でのパワー盛り上がり感は希薄だが、スムーズに回るのでミニサーキットに持ち込んでもストレスなく走れるだろう。
KSRの大きな魅力である充実した足回りは受け継がれ、倒立フォークは130㎜、スタビライザー付きスイングアームを採用したリアサスは125㎜というストロークを確保。
小さな車体に前後12インチの小径ホイールという組み合わせを見ると、ピョコピョコと落ち着かない動きを想像するが、一人乗り専用に割り切ったことでサスペンションセッティングの制約が減り、軽量なホイール、比較的座面の広いシートと併せて乗り心地はなかなか上質。
抑えのきくライディングポジションで荒れた路面も苦にならないし、長時間走行で腰が痛くなることもない。
ビギナーが乗れば、マニュアルミッションの操作を覚え、面白さを知ることで次のステップが見えてくるはず。
スクーターとは違う、オートバイ独自の楽しさが凝縮されたモデルだ。
主要諸元
全長×全幅×全高 1725×740×1020㎜
ホイールベース 1170㎜
シート高 750㎜
車両重量 95㎏
エンジン形式 空冷4ストOHC2バルブ単気筒
総排気量 111㏄
ボア×ストローク 53×50.6㎜
圧縮比 9.5a
最高出力 8.6PS/8000rpm
最大トルク 0.88㎏-m/6000rpm
燃料供給方式 PB18キャブレター
燃料タンク容量 7.3ℓ
キャスター角/トレール 26度/73㎜
変速機形式 4速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ200㎜ディスク・φ184㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 100/90-12・100/90-12
RIDING POSITION ●身長:176㎝ ●体重:60㎏
モタードスタイルなのでハンドル位置が高く、上体や腕には充分な余裕がある。
着座面からステップまでの距離が短いので膝の曲がりは強めだが、シート後ろ側に座って膝の曲がりを緩和すれば長距離走行もOK。
足着き性の良さは見てのとおりで言うことなしだ。
DETAILS
今回のモデルチェンジの目玉がマニュアル式の4速ミッションの新採用。
スポーティな走りやミニバイクレースなど、走りがさらに楽しくなる待望のアイテムだ。
111㏄の空冷SOHC2バルブユニットは8・6PSを発揮。
優れたレスポンスと低回転域での十分なトルクを活かして、ストリートを力強く駆け抜けることができる。
インナーチューブ径30㎜の倒立フォークに200㎜のペータルディスクなど、足回りは豪華そのもの。
5本スポークを持つ12インチのホイールはアルミキャスト製だ。
長いメーターパネルの右側には、フルスケール120㎞/hのコンパクトなアナログ式スピードメーターをレイアウト。
左側には各種インジケーターを配置する。
●PHOTO:南 孝幸