「本当は、リズムセクションで仕留めようと思っていた」とは下田。イン側を締めにかかるジェットに対して思い切りアウトからスピードをのせ、ジェットにフロントフェンダーを見せるシーンが2周も続いただろうか。勝負はあっけなく決まった。ジェットがラインをミス、すかさず見逃さなかった下田がするっと前に出て、ラスト2周をスパート。
ジェットのペースは息も絶え絶え、明らかにタレているのに対し、下田のペースはまだ上がる。下田は、このスパートの周で勝利を確信。ようやく胸をなで下ろしながら、「ラストラップは落ちついてまわることができました」と振り返る。
正直な話、ロレッタリンにおける4秒はかなり遠い存在だった。ジェットのペースも速かったし、もう届かないかもしれない、と撮影しながら思っていたが、下田はまったく逆のことを考えていて「100%のペースなら届く距離だと思っていましたよ」と冷静に分析。あっというまに詰められたジェットは、恐怖感すら覚えたに違いない。応援している側のひいき目もあるかとは思うが、あまりにこのヒートにおける下田の圧倒的強さには、下田の器の大きさを改めて思い知らされた。スタートさえしくじらなければ、如何様にも勝つことが出来る、だろう。明らかに、このロレッタリン会場で一番強いライダーは、下田だと確信が持てる内容だった。この1勝はとても大きい。
下田は言う。
「勝てたことで、落ち着くことができました」。名言はしないが、これまでの3ヒートのスタートにかかっていた重責はとても大きなものだったに違いない。とても良い意味で、リラックスしたスタートを、明日から切れるはずだ。