YZ由来のエンジンの軽さと、エンジンストール耐性の両立
「それにしても、エンジンの回転が軽いね」と池田が言うとおり、YZ250FXのエンジンはモトクロッサーのYZ250F由来だから、ものすごく軽い回り方をする。フケがよく、低回転から、高回転まで一気に上り詰めるのだ。これも、パワーチューナーで抑えることができるのだけれど、本質的な軽さはぬぐえないものだ。
「どうしても、一昔前のバイクを想定してしまうクセが抜けないから、エンジンがパスっととまってしまう気配を感じてしまう。もう少し、エンジンのクランクの重さがあればそんなこともないと思う」と池田は言う。ただ、「乗り込んでみたけど、パスっととまってしまうことは無かった。ただ、こっちも身構えて乗っているから、本当にエンストしないのか、いまいち掴み切れていないんだよ」とのこと。
エンジンストール耐性に関しては、ヤマハは電子制御で解決をしている。点火時期を遅らせると粘りがでてくるのだが、犠牲にしてしまうものも多く、いたずらに点火時期をいじっているのではないそうだ。スロットルを開ける速度もECUが監視しており、このエンジンストール耐性に寄与しているという。
モトクロッサーをモディファイでエンデューロ仕立てにする場合、よくクランクウェイトを増やす手が使われる。単純にエンジンの慣性を増やしてくれるから、エンストしづらくなるし、ピックアップが鈍くなって扱いやすくなる。だが、ヤマハは近年この手法を使わずにクロスカントリーモデルに昇華させている。クランクウェイトを増やすことで、失うレスポンスも多いからだ。失われたレスポンスは、電子制御で取り戻すことはできない。
池田は「クランクウェイトは、俺の現役時代は必要だとおもっていた。帰って来れないようなひどいマディでは、やはりクランクに重さが必要だと思う。ただ、今はクランクウェイトを増やす必要性もないのかもしれない」と言う。
YZ250FXを評価する場合、時に欧州の250cc 4ストエンデュランサーを対象に考えがちだ。だが、実際にはYZ250FXは欧州のエンデューロに使われていない(欧州ではWR250Fが使用される)し、逆に欧州のエンデュランサーが北米のGNCCで活躍することもない。非常に複雑なことではあるのだけれど、エンデューロの細分化が進んだ現代においては、YZ250FXを明確に「クロスカントリーレーサー」として見る必要がある。たしかに公道を走るエンデュランサーとして開発された欧州車には、池田の思うようなある程度のクランクウェイトがあるのだ。だが、それと比べるべきではないという話だ。
ただ、日本だけを見る場合、ヤマハのエンデュランサーであるWR250Fの販売はないから、YZ250FXにはエンデュランサーとしての素質も問われることになる。池田は言う。「クランクウェイトの重さがなくとも、軽さのなかに粘りを出せるエンジンなのだろうとも思う。もう少し乗って、セッティングもいじって、その辺を見極めてみたい」と。