ーースクーターの試乗は結構珍しいよね。Vespaに乗るのは初めて?
はい。いつものように試乗前にいろいろ調べたり、ベスパについて教えてもらったりしたんですけど、1946年に発売された「ベスパ98」が世界で一番最初のスクーターだとか、もともとはイタリアで一番大きな飛行機メーカーで、イタリアが戦争に負けて戦闘機が作れなくなったので、その技術を応用してスクーターを作ったとか、全然知らなかったことがいっぱいで、ベスパの歴史そのものがすごいおもしろかったです!
ーーそれは良かった! では、さっそく2台のインプレを聞かせてくれる?
乗り比べてみると、LXの方がだいぶ車重が軽いから(車両重量はLXが114kg、プリマベーラが130kg)、特に加速してる時にその違いを感じました。発進から最初の30〜40km/hくらいは、かなり加速感に勢いがあるので、「軽っ!」みたいな。スピードを出していくと、氷の上を滑ってるかのように、スルーッて走っていけちゃうんです。それが怖いわけではなくて、トルクのフィーリングが独特というか、まるで後ろから押されてるみたいに、滑ってる感覚になるんだろうなって思って。今まで乗ったバイクの中でも、あまり味わったことのない、不思議な感覚でした。
ーー良い意味での「滑るような感覚」って、結構新鮮なインプレだと思う。
そうですか?(笑) でもほんとに、不思議な感覚だったんですよ。でも、コーナリングの乗り心地とかは、プリマベーラの方が良かったです。おんなじエンジンのはずなのに、全然雰囲気が違うんですよ。プリマベーラは曲がる時も、思ってた以上にちゃんとバンクして、気持ちよく加速していけることに驚きました。LXは小排気量の軽い乗り物に乗ってる感覚があるんですけど、プリマベーラはすごく安定感があって、125よりも大きいバイクに乗ってるような感覚で。なんでなんだろう?って考えながら、それがやっぱり上位機種の乗り心地なのかな〜って思いました。加速感に関しては、やっぱり60km/hを超えてからの加速は“125ccだな感”があるんですけど、普通に街乗りをする分には、60km/hも出てれば充分じゃないですか。だから、そこの速度域でパワー不足を感じることはなかったですね。
ーーその安定感は、プリマベーラの方がホイール径が大きくて、ホイールベースも長いことが関係してそうだね。
そうかもしれないです。あとベスパの特徴だっていう、片持ちフロントサスペンションのバイクは初めてだったんですけど、レインボーブリッジに、スピードを落とすように路面に段差が続くところがあるじゃないですか。ああいう時とか、ニーグリップもできないから、お尻がポンポン跳ねちゃったらどうしようと思ってたんです。でも、さすがヨーロッパの石畳でも乗れるように作られたスクーターだけあって、ちゃんと衝撃を吸収してくれていたので、「おおっ!」って感動しました。
とは言っても、あくまで比較しての乗り心地の話なんで。どちらも走っているときの安心感はあるので、これがベスパの特徴であるスチール製モノコックボディの効果なのかもしれませんねぇ。
ーーその他に気になった部分はある?
あ、フロントのグローブボックスに最初からUSB電源ががついてるのは、やっぱりありがたいなって思います。私も今、自分のバイクにUSBつけたいんですよね。
ーーポジション的なことや、乗り心地についてはどう?
イタリアでのベスパの乗り方は、みんな背筋を伸ばして乗るし、シート高がちょっとある分、止まる時は腰を前に出すように、シートからお尻を降ろすのが当たり前だと聞いたので、それにも驚いて。実際に自分が乗ってみたら、どちらもシートの座り心地は文句なしだし、私の身長(154cm)でも、信号待ちのたびに全部お尻を落としきらなくても済むシート高だったのは、すごく良いところだなって思いました。でもシート形状が結構違くて、LXはシートの先が角ばってて前に突き出してて、プリマベーラはなだらかな斜めになってるんですね。、プリマベーラの方はその形のおかげで、シートから全部降りきらずに、お尻を半分だけもたれかからせるのがやりやすいな〜って思いました。でもLXはLXで、その角ばった形のおかげで、太ももの内側でシートをしっかり挟み込めるから、美しく乗ろうと思ったらLXの方がいいかもしれないですね。
ーーせっかくのイタリアンスクーターだし、乗り方もこだわらないとね(笑)。
そうそう。どうせならエレガントに乗りたいな、みたいな(笑)。背筋を伸ばして乗りたくなりますよね。いつも走行写真を撮られる時は、姿勢を前傾に、低く低く、背中を丸く丸くって意識してたから、今回はどこまでピーンと伸ばしていいかわかんなくなっちゃいました(笑)。
ーーちなみに、いろんな映像作品に登場したことでも知られるベスパだけど、映画『ローマの休日』は観たことある?
遠い昔に観た覚えはあるけど、めっちゃ覚えてるかって聞かれたら、全然(覚えてない)です(笑)。
ーーオードリー・ヘップバーン演じるアン王女が、新聞記者のグレゴリー・ペックとベスパを二人乗りするシーンが有名なんだけど…。
私、そもそも二人乗りが好きじゃないですよ(笑)。でも、こうして外国のスクーターに初めて乗ってみて、乗り味というより、見た目にいちばん「外車らしさ」を感じたんですね。さっきも言ったように、美しく乗りたくなるというか、お洒落な外観を崩さずライディングしたいなって思うスクーター、それがベスパなんだなって思いました!