コンディションは選ぶが、その威力は絶大!
雪の降らない地域ではオートバイ用スノータイヤの存在すら知らないライダーがほとんどだが、降雪地では郵便や新聞、ピザなどの配達や通勤通学のためにオートバイや三輪オートバイ(ジャイロXやトリシティなど)で雪道を走るライダーを普通に見かける。
もちろん雪道では舗装路用ノーマルタイヤは全くグリップせず、オフロード用やトライアル用のブロックパターンタイヤも見かけから期待するグリップは得られない。現実的に雪道を走るための方法は金属製スノーチェーンの装着、スタッド(金属や樹脂、セラミックなどのピン)をトレッド面に埋め込んだスパイクタイヤへの換装、そして雪道用に設計されているスノータイヤの使用だ。
IRCは古くからオートバイ用スノータイヤを製造し、雪上走行のプロを含めたユーザーから高く評価されているが、今回テストしたのは新世代技術を取り入れた『ニュースノータイヤシリーズ』3種類の中から、SN26という製品をチョイスし、PCXに履かせてみた。
新潟県の豪雪地帯まで行ったものの、今年は記録的な雪不足で有名なスキー場でも入り口までほぼドライ路面。結局、日の当たらない山の北側斜面に残っていた雪上(昼間は溶けて夜間は凍る、を繰り返して水分を多く含んだザラメ状の重い雪質)でのテストとなった。なお、タイヤ空気圧は車両指定の前輪200kPa、後輪225kpaとした。
深さ2㎝以下でシャーベット状になっている部分では、雪を潰しながらグリップするフィーリングで問題なく走れる。特にリアのトラクションは想像以上に高く、上り勾配で大きめにスロットルを開けてもリアタイヤが左右に振れる量が少ないし、ブレーキも普通に掛けられた。
タイヤのサイドウォールがちょうど埋まる深さ5㎝程度になると、ザラメ雪を踏み潰すジャリジャリという音が大きくなり、フロントタイヤが転がりにくくなる。速度10㎞/h以上だと真っ直ぐなら走れるが、車体をバンクさせるとフロントタイヤが外側方向に滑りながら内側に切れ込んでくるので、足を着きながらなら何とか走れるという状態。さらに深さ10㎝以上ではフロントタイヤがズブズブと埋まり、それが抵抗となってリアタイヤは空転するだけ。ある程度の速度を出したまま突っ込んでも、たちまち前後タイヤが埋まって速度が落ちてしまう。
ただし撮影後に前後とも指定空気圧の半分まで下げたところ、深さ5㎝程度までの走破性は大きく上がった。突然深めのザラメ雪に遭遇した場合は、一時的に100kPa以下の低圧にするのもひとつの緊急脱出処置だと思う。
そもそもスノータイヤは圧雪路での走破性を重視して設計されているのでザラメ雪で性能を見極めることは出来ない。
過去にスキー場近辺の圧雪路でオフロードタイヤとスノータイヤを比較したことがあるが、上り勾配になると発進さえ不可能なオフロードタイヤに対し、スノータイヤは優しくスロットルを開ければ不思議なほどグリップし、コーナーではリアを滑らせて遊ぶことも出来た。最新のSN26なら遊びとしての「スノーライディング」も存分に楽しめるだろう。
スノータイヤは接地面積を大きくするためにプロファイルを平たくしたものが多く、これが舗装路でのハンドリングを不自然なものにするが、SN26のプロファイルは通常のタイヤに近いためドライ路面の60㎞/h程度までなら直進時もコーナーリング時も違和感はない。トレッド面のグニャ付きも感じず、スタンドが接地するまでバンクさせても怪しい挙動は出なかった。この特性なら雪がなくなってもそのまま使えるが、トレッド面のゴム質が柔らかいので乾いた舗装路での減りは早そうだ。
なお、スノータイヤは通年販売ではなく季節商品。早めに予約し、雪が降る前に入手しておくことをお勧めする。
装着可能な主要車種
HONDA PCX (JF28 / KF12)
HONDA PCX (JF56 / KF18)
YAMAHA トリシティ125/155
■価格:オープン
写真/柴田直行
大関さおりも走った! 実際の走行テストの模様は動画でご確認ください!
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