その世界的ブランドであるアライヘルメット代表、新井理夫社長がFIMからゴールドメダルの授与をうけた。
アライヘルメットは、今までも、これからも頑固にライダーの命を救う装具であり続ける!
文:中村浩史/写真:南 孝幸
オートバイがある限り、ヘルメットは安全第一!
理夫社長は、2020年で82歳。今でも自らオートバイに乗って出かけることもあるのだという。所有するモデルは、ドゥカティ・モンスターにホンダNC700、そしてホンダXR250などなど。
「今でも週末は乗ってますよ。この年になってまだオートバイに乗れるなんてうれしいよね。オートバイはね、いろんなリスクや危険を自分でコントロールするものなんです。どんなスポーツだってそう、人間の生活って、人生って、すべてがそうだと思うんです」
自らがアライ製品を使って気づいたことが製品に反映されるなんてことは、たくさんあった。ハイスピードでの転倒では、モータースポーツが最高のテストフィールドだけれど、街乗りだからこそわかることもたくさんある。
「街乗りバイクのポジションでの視野だったり、シールドの開け閉めなんて、レースのライダーよりも一般のお客さんの方が機会も多いし、詳しいでしょう。そういった声も大切にしないと。それと、街を走っている時に、となりのライダーが、どんな動作をしてるかな、なんてところはよく見ています。うちの製品を使って下さるお客さんがね、少しでもご不便を感じないように考えていかないと。それはいつまでも終わりませんよ」
今ではヘルメットの重要性が浸透したのか、ノーヘルや半キャップをアミダにかぶって、なんてシーンはずいぶん少なくなったが、理夫社長はそんなライダーの姿を見るたび、「あぁ、ひどいけがをする前にヘルメットの大事さに気づいてくれりゃいいな」と思っていたのだという。
ヘルメットの形状も機能もどんどん多様化している今、アライのヘルメットは、ともすればオーソドックスすぎて、新鮮味がない、といわれることもあるのだという。
ヘルメットがファッションの一部なのは否定しないが、それも安全を確保してこその話だ。
「あれやらなきゃ助かったな、なんて後悔をしたくないんです。ヘルメットはあくまでも安全が第一、って考えは変わらないし、それは衝撃を吸収する帽体であったり、かわす性能、という帽体の形状シルエットで実現できました」
今でもアライヘルメットには、世界中から「アライ製品のおかげで助かりました」というライダーや家族からの礼状が届くのだという。ライダーが事故をして命を落としたり深刻なケガをすると、つらいのはライダー本人、そしてその家族や友人みんなだ。
「FIMからゴールドメダルもいただいて、これからはもっと恥ずかしくない仕事をして行かなきゃいけない。私が代表を退いたって、アライヘルメットの考えは変わりませんよ。オートバイがある限り、ずっと安全第一です」
文:中村浩史/写真:南 孝幸
FIMゴールドメダルとは
1983年に制定され、オートバイレースに貢献した人物や、実績あるワールドチャンピオンやレースダイレクションに贈られるようになったFIMの名誉賞。正式名称は当時のFIM名誉会長を務めたニコラス・ロディルの名前を冠したニコラス・ロディル・デル・バレ・ゴールドメダル。
これまでの著名な受賞者では、87年に50㏄/125㏄で計13回のワールドチャンピオンとなったアンヘル・ニエトに、92年には当時のMFJ会長の石塚秀夫さんに、93年にはジャコモ・アゴスティーニ、ウェイン・レイニーに贈られている。
新井社長は歴史上24人目の受賞者で、日本人では2人目。「多くのライダーの安全に寄与し、モータースポーツ発展に多大な貢献をした」という理由で、オートバイ用装具メーカーとしては初の受賞となった。