期待いっぱいのスティリアGP
3クラスとも日本人ライダーがフロントローを獲得するという、期待に胸ふくらましまくりだったオーストリア2、スティリアグランプリ@レッドブルリンク。
詳細はコチラ<https://www.autoby.jp/_ct/17386509>に詳しいのですが、ともあれMotoGPでは中上貴晶(LCRホンダIDEMITSU)が2番グリッド、Moto2では長島哲太(レッドブルKTM-Ajo)が3番グリッド、そしてMoto3では鈴木竜生(SIC58スクアドラコルセ)からの決勝レースを迎えることになったのです。
理由はいろいろですが、知り合いのヨーロッパ人ジャーナリストと少しメールでやり取りしたら「日本人は勤勉で勉強熱心だから、1回やったコースですぐ翌週、ってパターンで強すぎる」って言ってました。そー言われてもねぇ。
でもマジメな人って、失敗からすぐに反省材料を見つけ出して対策を講じる、ってことが多いですから、あながち的外れな意見でもないのかもしれません。やられたらやり返す、しかも倍返しだ、って人もいますからね。
鈴木後退佐々木上昇のち小椋先着
最初に行なわれたMoto3クラスでは、タツキは序盤こそ上位につけ、6周目には2番手まで上昇するんですが、Moto3名物の「大集団大混雑」に飲み込まれてずるずると順位を下げてしまいます。
変わって上昇してきたのが、今やMoto3の日本人エースと言える小椋藍(Hondaチームアジア)。8番手スタートだったアイは、いつものように後方からいつの間にかトップ集団に浮上する納豆走法(なつかしい・笑)で、序盤はセカンドグループの先頭、そこからトップ集団のケツに食らいついてトップグループに食い込みます。タツキが最初からガンガン前でレースして、いつの間にかアイが背後に、ってパターン、多いですよね。
さらに今回はもうひとネタ。チーム移籍で、今シーズンからマシンをKTMにスイッチした佐々木歩夢(レッドブルKTMテック3)が、なんと7列目19番グリッドからすばらしいスタートを見せて、5周目には10番手へ、そして10周目にはトップグループ後方に加わり、15周目あたりにはなんとトップ争いへ! 一瞬トップに立ったこともあったんじゃなかったかな。
結局、アユムはよりによってチームメイトのデニス・オンジュに巻き込まれて転倒しちゃうんですが、アユムのこの2戦くらいの走り、トンネルを抜けたような気がします。
レースは終盤、ラスト3周くらいでアイが仕掛けますが、これもMoto3名物、一瞬のミスで順位が5つ平気で下がる、の洗礼を食らい、それでも最後の最後に巻き返して3位表彰台をもぎとったのでした! タツキは集団に飲まれっぱなしで7位フィニッシュでした。
これでランキングは6戦を終わってアイ2位、タツキ6位! 好調な日本勢、アユムの今シーズン初表彰台、アイの初優勝、タツキの2勝目を待ちましょう!
長島 ランキングトップまだ射程距離
次に行われたのはMoto2クラス。3番グリッドからスタートした長島哲太は、序盤からトップグループでレースをして、チームメイトのホルヘ・マルティンを追う展開。しかし、レース中盤にレミー・ガードナー(ストップ&ゴー あのワイン・ガードナーさんの息子でテツの去年のチームメイトです)にかわされ、マルコ・ベッツェッキ(VR46 バレンティーノ・ロッシのチームです)にも先行されて4番手へ。結局この順位のままフィニッシュして、今シーズン2勝目はなりませんでした。
けれど、ヘレス2の予選で転倒、脳震盪があってから不調だったテツも、ようやく強い走りが戻ってきました。テツは、レース序盤からガツガツ前に行くこともできるし、ずっとトップの番手について最後の最後にまくる、ってレースも出来ますから、勝てないレースはちゃんと捨てて、上位フィニッシュする、というガマン能力があります。今回はそういう4位だったような気がしてなりません。
これでテツはランキングも4位。幸い、テツよりランキングが上の3人も、しっかりノーポイントレースを作っているので、鉄もまだ間に合う! いまランキングトップまで19ポイント差です。射程距離、射程距離!
泣くな中上 初表彰台は目の前だ
そして、中上貴晶がフロントロー、しかも自己最高の2番グリッドをもぎ取ったMotoGPクラス。こういう時ってスタートでミスったりするんだよな、1コーナーで巻き込まれ転倒とかしちゃうんだよな、あぁぁぁぁ、なんてハラハラドキドキして見守ったスタートも失敗なく、大集団に巻き込まれることもなくレースがスタートしました。
スタート直後、となりのグリッドからスタートしたジョアン・ミル(TeamエクスターSUZUKI)とぶつかりそうになった時には大声でましたけど、なんとかトップグループにつけたままレースが始まりました。
トップグループの面々はジャック・ミラー(プラマック・ドゥカティ)にミル、そしタカの3台。4番手のポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー)以下に少し差をつけて、この3台がトップ争いをしながら、4周目にミルがトップに立ち、タカは引き続き3番手。
あぁ、ここでパッシングする一発の力はないかぁ、せめて4番手走ってるエスパルガロに抜かれるなよぉ、と思っていたら、タカはミラーにジリジリ迫り、15周目にはパッシングを見せて2番手に浮上! よーしチョイ先行くミルにも追いつけるぞぉ、表彰台は確実! 優勝もあるぞぉ、と思った17周目、マーベリック・ビニャーレス(モンスターヤマハ)のマシンにトラブルが発生します!
ビニャーレスは危険を察知してマシンから飛び降り、アンコントロールのYZR-M1がエアフェンスに激突して炎上。エアフェンスが破損したことで、次の転倒車のケアができなくなってしまうため、レースは赤旗中断となりました。
「ブレーキがオーバーヒートして完全に効かなくなり、マシンから飛び降りなきゃいけなかった」とはビニャーレスの弁。誰もケガがなかったのは不幸中の幸いでした。
レースは残り12周で再開。赤旗提示の時の順位でスターティンググリッドが決められ、タカはミルに続く2番グリッドからのスタートとなりました。
この2度目のスタートで、タカはミル→エスパルガロに続く3番手あたりで1コーナーへ。よーしよーし、今回もスタートよーし、と思っていたら、オープニングラップで1台また1台と先行され、なんと7番手までポジションを落として2周目に突入します。
しかし、タカの素晴らしい週末はこれで終了。終始、トップから遠く離れて7番手を走っていたタカですが、力走及ばず7位でフィニッシュ。
「一言でまとめれば、これがレース。天気もそうだけど、他のアクシデントは自分ではコントロール出来ない。 レースって難しい。でも楽しいんだ。優勝出来るかもしれないと思ったあの感情をまた味わいたい。 結果は7位に終わってしまったけど、素晴らしい週末でした! 優勝するにはもっと努力が必要だ」とはタカのツイッターより。
レース2でペースが悪かったのは、中断後に新品タイヤが履けなかったから、なぜならチームが用意していなかったからとか、レース中断のインターバルでマシンのセッティングを変えたりタイヤを履き替えるのはいかがなものか、なんて論争も巻き起こっていますが、かくしてワクワクとがっかり、そして次に期待、のスティリアGPは終わりました。
今シーズン、マルク・マルケス(レプソルホンダ)の負傷欠場もあって「いつもと違うMotoGP」が続いていますが、タカにとってはいい方向にしか向いていないシーズンです。マルク不在→マルクのチームメイトで弟であるアレックスはルーキーだし、タカのチームメイト、カル・クラッチロウはケガして本来の走りが全くできていない中、タカの双肩にホンダのエースとしての期待がずっしりのしかかっているのです。
それが、マルクのマシンのデータを参考にセッティングを変えたり、それに合わせて乗り方を変えたり、HRCのスタッフもタカのピットに常駐したり、というシーンにつながっています。マルクの復帰がしばらく先になりそうな今、このうちにタカは新しい環境で、ホンダのエースとしての走りを見せてほしい、と思います。
ここまでのキャイアハイはヘレス2の決勝4位。現在ランキング6位につけるタカの初表彰台は、そう遠くない将来に見られるでしょう。頼むぞタカ!
これでMotoGPは、次戦サンマリノGPが9/13決勝。関係者は、やっと20日間のインターバルにありつけますね。相変わらず、早く次のレースが見たい!
写真/motogp.com MICHELIN 文責/中村浩史
※MotoGP第6戦 スティリアGP正式結果※
8/23決勝レース inオーストリア レッドブルリンク
□Moto3
1 セレスティノ・ビエッティ SKYレーシングVR46
2 トニ・アルボリーノ Rivacoldスナイパー
3 小椋 藍 ホンダTeamアジア
4 ガブリエル・ロドリゴ グレジーニMoto3
5 アルバート・アレナス アスパーチーム
6 ダリン・ビンダー CIPグリーンパワー
□Moto2
1 マルコ・ベッツェッキ SKYレーシングVR46
2 ホルヘ・マルティン レッドブルKTM-Ajo
3 レミー・ガードナー ストップandゴー
4 長島哲太 レッドブルKTM-Ajo
5 トマス・ルティ リキモリIntactGP
6 シャビ・ビエルヘ ペトロナスSR
□MotoGP
1 ミゲル・オリベイラ レッドブルKTM-TECH3
2 ジャック・ミラー プラマックレーシング
3 ポル・エスパルガロ レッドブルKTMファクトリー
4 ジョアン・ミル TeamスズキECSTAR
5 アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティTeam
6 アレックス・リンス TeamスズキECSTAR