いま各社がラインナップする『650cc』のバイクとは何なのか?
近年と10年前の各二輪メーカーの車両ラインナップでは、車種だけに限らずいろいろと違いがあります。
その大きなひとつが、ミドルクラスの大型バイクが充実していることでしょう。
以前は大型バイクというと750cc以上が当たり前だったのですが、2016年あたりから、650cc前後のバイクが続々と正規の日本仕様車としてラインナップされ始めました。
このクラスは、はじめにヨーロッパで支持を集めました。現在でも欧州で先行発売され、その後日本市場にも導入されるという流れが定番になっています。
これは喜ばしいことでしょう。二輪雑誌などでもよくキャッチコピーで使われていますが「日本の道路環境や日本人の体格に絶妙マッチ!」していると、僕も思っています。
ただ、日本のこれまでの感覚からすると、悪く言えば中途半端な排気量帯。ちゃんと高速道路を快適に長距離走れるのか、ということを気にする方も多いと思います。
今回、実際にスズキ『SV650 ABS』で、高速道路を走ってみました。分かったことをお伝えします!
スズキ『SV650』高速道路インプレッション
今回走ったのは、関越道練馬ICから小出IC(新潟県)までと、東北道白河IC(福島県)から首都高までの行き帰りです。
行きは、ほとんど夜から明け方にかけて200kmちょっと。帰りは昼間で雨にもパラパラ降られながら200kmちょっと。
結論からいうと、「予想以上に快適」でした。
具体的にお伝えしていきます。
時速100kmでの回転数は、6速4500rpm・5速5000rpm・4速6000rpmほど。デジタルメーターのレッドゾーン表示は10000rpmから。最高出力は、56kW〈76.1PS〉 / 8,500rpmで、最大トルクは64N・m〈6.5kgf・m〉 / 8,100rpmで発生します。
つまり、回転数にはものすごく余裕があります。おそるおそる3速に落としてみたところ、約7200rpmで平然と走れるので驚きました(さすがに2速100km/hは怖かったのでやっていません。普通にできそうですけど)。
3~4速で時速100kmを出してもまだ最高出力発生回転数には到達しないものの、快適とはいえません。シビアなスロットル操作が必要となり、疲れます。
でも5速5000rpmはかなり快適。トップギアが5速だったとしても不満がないくらい。それなのに6速もある! 6速での時速100km走行は完全にリラックスしてクルージングを楽しめるものでした。
SV650はVツインエンジンの鼓動感が大きな特徴です。ガバっとスロットルを開けて回転数が上がるとドドドドドッとエンジンが主張します。それがギアをあげるごとに、穏やかに収束していきます。
そして時速100km・6速・約4500rpmのとき、得も言われぬ快感を覚えました。
Vツインであるとことは内腿やお尻を通して身体全体で感じられて、かつ邪魔にはならない、ほどよい鼓動感。この独特な心地よさは並列4気筒や2気筒とも別物で、Vツインならではの味わいがあります。
これは、見た目やスペックでは分からないSV650の強烈な個性です。
帰り道は小雨に振られながらも「気持ちいいなあ」と思っていたらあっという間に200kmを走り、東京に到着。まだ走っていたくて物足りなさすら感じたくらいです。
スタイル的に生粋のネイキッドバイクのため、風圧が心配と感じるかもしれません。
そりゃ同系統のエンジンを積んだ「Vストローム650」シリーズよりも空気抵抗を感じます。(Vストローム650シリーズは、リッター越えのバイクより快適なんじゃないかと思うほどですので)
でも普通に時速100km~120kmの法定速度域なら、400cc以下とはやはり比べ物にならない余裕があります。エンジンパワーの余裕のおかげで、風圧がつらいと思うこともほとんどなく走れるでしょう。
また、コンパクトな車体が生むクイックネスは、高速道路でも健在。道の先に何か落ちている、と気づいた瞬間、ひょいっと走行ラインを1台分くらいずれせるので、安心感がありました。
一介のツーリングライダーでしかない僕がいうのもおこがしいですが「このバイクなら自在に操れる」という自信を感じられるんです。
跨った瞬間にピタッとフィットし、身体のどこにも無理がない自然なポジション。燃料タンクが細くて、ニーグリップもしやすい。
「バイクと一体になれている」と思えるわけです。
自在に操れて、かつ遠くまで快適に走れるSV650。そんなバイクでこそ行きたいツーリングスポットがありました。それがこの旅の目的地となった「奥只見」。
どんな旅となったのかは次回の紀行記事でお伝えします。「酷道」と呼ばれるちょっとリスキーな道を走ってきました!
文:西野鉄兵/写真:岩瀬孝昌・西野鉄兵