きっかけは、ISDEでみたBrad Freemanの
スタンディング・テクニック
2019年にISDEで日本人として初めてゴールドメダルを獲得した釘村選手は、まさにそのISDEで世界のトップライダーたちの走りを見たときに、いま釘村選手の走りを見た僕と同じショックを受けたと言います。
「ISDEでヨーロッパの速い人たちと実際に同じコースを走ってみて、これはスタンディングができた方がいいなと実感しました。それで帰国してからスタンディング縛りでコースを走る練習を取り入れているんです。
自分がスタートした2分後にフリーマン(BETA boano RacingのBrad・Freeman)がスタートしたのですが、ルートでもスタンディングでスイスイ走っていて、まるでバイクが地面に張り付いているかのようなライディングで「気持ちわるっ」と思いました。こちらは4ストロークであちらは2ストロークだったので、絶対にこちらの方がトラクションするのになんでだろうって。そこで一生懸命ついて行ったらフリーマンの体の動きを間近に見ることができて、そのときにスタンディングの方が疲れないし、結果的に速いのかも、という具体的なイメージが持てたんです。
この練習をすることでライディングに余裕ができるようになりました。座ってもいけるし、立っててもいける。コーナーの次のコーナーのことまで、すごく考えられるようになったし、とても楽になりました。今ではかなり成果が出てきていて、スタンディング縛りアタックでも、全開アタックの時のタイムに近づいてきています(1分16秒のコースで2秒落ち)。オールスタンディングでも一生懸命走るともちろん疲れるんですけど、コースが荒れてきた時は絶対的にスタンディングの方が速いし、楽なはずですよ」
JEC全日本エンデューロ選手権で採用されるオンタイムエンデューロ方式は相手との戦いではありません。もちろんライバルはいるのですが、走るときには原則として一人。テストコースを走破するタイムをもっとも短くまとめることが重要です。
ちなみに取材時に釘村選手が出したテストコースのタイムはオールスタンディングで1分18秒13。コーナーでシッティングを混ぜる本気ライドで1分16秒37。本気ライドの時も全てのコーナーでシッティングしているわけではなく、コーナーによってはスタンディングのままクリアしていました。
このテクニックを一通り教わった後のエンデューロ万年NBライダーの僕が試してみると、シッティング含む全開で1分40秒73、オールスタンディングで1分49秒84でした。この差をどこまで縮めていけるか、が練習の目標となりそうですね。