ライダー:平嶋夏海/写真:松川 忍/まとめ:西野鉄兵
ドゥカティが新たに取り組む「DRE Road Academy」とは?
2021年6月18日~20日、ライダーの休憩スポットとしてお馴染みのバイカーズパラダイス南箱根で、ドゥカティの新たなイベント「DRE ロードアカデミー」が開催されました。
「DRE」とは「Ducati Riding Experience」の略で、「DRE ロードアカデミー」はライディングスキルの向上を目的としたドゥカティのライディング・スクールです。
欧州では2003年から実施されている当イベント。内容はどんなものなのか? 日本初開催、その初日にオートバイ女子部の平嶋夏海さんが体験しました!
なお今回の「DRE ロードアカデミー」はドゥカティが満を持してモデルチェンジを行なった新型モンスターの先行試乗会を兼ねています。
発売前の新型車と未知なるイベントを前に、興奮と緊張が入り混じった様子の平嶋さん。まずは新型モンスターを実際に見て、跨ってみた印象を聞いてみましょう。
(試乗後の感想は記事の後半で!)
モデルチェンジですべてを一新した「モンスター」
平嶋夏海さんの第一印象は?
ドゥカティ新型「モンスター」は、2020年12月に本国イタリアで発表されました。それから約半年、いよいよ日本においても販売が開始されます。
1993年に初代が登場してから、これまでにさまざまなモデルが展開されてきたモンスター・シリーズ。その最新モデルの排気量は937cc。L型2気筒デスモドロミック・テスタストレッタ11°エンジンを搭載。名称はシンプルに「モンスター」となりました。
平嶋夏海さん、第一印象はいかがですか?
平嶋:パッと見て、外国車だと分かる攻めたデザインですね! かっこいい! コンパクトで、細くて、見るからに乗りやすそうです。写真で見ていた以上に扱いやすそうなので、ちょっと安心しました。
モンスターというと「トレリスフレーム」っていうんでしたっけ? あのイメージが強かったんですが、この新型はフレームが変わって、より細身になったんですかね。
平嶋:燃料タンクが盛り上がってますね。横に広げるのではなく、高さで容量を確保しているんでしょうか? このおかげで、ハンドルとシートがギュッと縮まっているように見えます。ネイキッドならではのアップライトな感じがいいですね。でもその分、重心は高いのかな?
さっそく跨って、取り回しもしてみましょう。
平嶋:あ! 足が届く! 見てください、両足接地してますよ!
平嶋:サイズ感は250cc~400ccくらいにも感じます。跨ってみるとよりいっそうタンクの細さが分かりました。腕も伸び切らないので、おんなじくらいの身長の女の子も安心できると思います。
取り回しの印象はどんな感じですか?
平嶋:軽いですよ。これで大型バイク、しかも937ccもあるとは思えません。一番最初だけ力を入れないとダメですけど、動き出してしまえば私でも全然大丈夫です!
見た目で「ここがかっこいい」と思ったポイントを教えてください。
平嶋:マフラーがかっこいいですよね。このマフラーを見ただけで『外国車だ!』って感じがします。あとウインカーがウイングのようなカタチをしているのもいい!
平嶋:シングルシート仕様になっているのとヘッドライトの上に付いている冠みたいなバイザーの形状がかっこいいと思います。
平嶋:ソロで積極的に走りを楽しむ人なら、はじめから「プラス」を選ぶのがよそさそうですね!
新型モンスターでスラロームにチャレンジ! 1日で上達できる「DRE Road Academy」
いよいよ「DRE ロードアカデミー」がスタート。まずは一般的なライディング・スクールと同じく、イベントの説明から始まりました。
主だった内容は、ライディングの基本である加速、ブレーキ、コーナリングのトレーニング。急制動、スラローム、8の字走行というメニューをクローズドコースで行ない、その後公道で新型モンスターを体感するというプログラムです。
イグニッションをオンにして、エンジンを始動すると、計7台のモンスターからドゥカティのL型2気筒ならではの勇ましいエンジン音が響き渡りました。
発進から加速、そしてブレーキ。ブレーキのトレーニングでは、リアのみ→フロントのみ→前後合わせて、とそれぞれの挙動を確認。「ABSが備わっているので思いっきり握って大丈夫です」とインストラクターの友野さん。ABS作動時の車体の動きを身体で覚えていきます。
続いてスラロームのトレーニング。早くもここで平嶋夏海さんが本領を発揮!?
プライベートでジムカーナの大会に参戦している彼女。この日初めて乗るバイクとは思えないほど、自在に車体を傾かせています。
最後のトレーニングは、8の字走行。ふたつの異なる大きさの円を組み合わせたもので、難しそうに見えます。
円のサイズはどちらもかなりコンパクトでしたが、インストラクター友野さんのアドバイスを得ながら、みなさん最終的に綺麗な8の字を描けるようになっていました。峠道でのコーナリングやUターンで使える実践的なテクニックを学べたようです。
その後、公道へ出て箱根の山道を走行。平嶋さんはすっかり新型モンスターが身体に馴染んだよう。たっぷりと試乗を行なった後、感想を聞いてみました。
ドゥカティ新型「モンスター」平嶋夏海の試乗レビュー
新型モンスターに乗ってみて、どうでしたか?
平嶋:加速感がすごいです! 1速から走りだしたときは、けっこう穏やかでコース内でも走りやすかったのですが、2速に入れて30キロくらいからアクセルを開けたら、身体が置いてかれるような加速で驚きました。
ネイキッドでしかも1速も扱いやすく、見た目もコンパクト、取り回しもしやすいからちょっと勘違いしていたのかもしれません。937ccというのを忘れていて、びっくりしました。
コース内でのトレーニングではほとんど1速のみ?
平嶋:そうですね。スラロームも8の字も1速です。大型バイクの1速走行は難しいんですけど、モンスターはやりやすかったです。
8の字は最初低速すぎてガタガタしちゃったんだけど、エンストしにくいバイクだということが分かって、より安心して乗れるようになりました。
平嶋:1速でアクセルを開けたとき、リアタイヤががっちりとグリップしている感じが伝わりやすかったです。シートを通じてお尻で接地感を得られます。
サスペンションが日本仕様車は柔らかくなっていると聞いたのですが、それもお尻でグリップを感じるのに影響しているんだと思いました。
Lツインエンジンの感触はどうでした?
平嶋:ドゥカティならではの鼓動をすごく感じられますよ! 私がいいな、と思ったのは、エンジンの動きは身体で感じるものの、ハンドルにはほとんど伝わってこないところです。
手に振動がこないので、操作しやすかったです。低速ではもちろん外でスピードを出したときも手が楽だなあ、と感じました。きっと長時間のツーリングも楽だと思います。
ツーリングがしやすそうと思ったのは、スロットルの反応もそうです。パワフルなんですが、スーパースポーツほどピーキー過ぎません。乗り出してすぐに特性を把握することができました。アシストクラッチとクイックシフターも搭載されているんで、シフトチェンジで手が疲れることもありません!
コース内でのスラロームでは、ギャラリーから拍手も起きていました。しっかり乗れている感触があったのでは?
平嶋:普段練習や大会で乗っているバイクよりもうんと大きい排気量だったので、はじめは不安だったんですけど、サイズが近かったので運転しやすかったです。
ニーグリップがすっごくしやすいんですよ! 乗っていると見た目よりもさらに細身で、太ももを開かずにまっすぐの状態でグリップできるのが嬉しかったです。一般的なタンクよりも手のひら1枚分くらい細いんじゃないですかね。
サスペンションの動きがよくて、しかも分かりやすいものだったので、慣れてきた後半はけっこう攻めることができました。
では、ジムカーナ用としても使えそうですか?
平嶋:うーん、もったいない! やっぱり練習だと傷つけちゃうこともありますし、このバイクではもったいないですよ(笑)
以前に「モンスター797」に試乗したこともありますよね。単純に比べるのは難しいと思いますが、大きく違いを感じる部分はありましたか?
平嶋:やっぱりサスペンションですね。とくにフロントフォーク。柔らかいんですけど奥行きを感じることができて安心でした。797のときはつんのめることがあったんですけど、新型は余裕がありました。
「DRE ロードアカデミー」はいかがでしたか? 何か発見や学びはありました?
平嶋:効率よくポイントごとに的確なアドバイスをもらえて嬉しかったです。
大きい排気量のバイクのトルクをコントロールする、そのアプローチの仕方で私の中で大発見がありました。いままでアクセルを開けたときのことや、開け方ばかり考えていたのですが、戻し方は意識していませんでした。
平嶋:ビッグバイクだと、アクセルを戻したときも挙動が大きいんですよね。今後、大型バイクに乗るときは、戻し方も考えながら乗って、よりナチュラルな減速やシフトチェンジをしていけたらと思います。改善点が見つかってよかったです。
あと今回の「DRE ロードアカデミー」に関しては、綺麗なサーキットではなく、バイカーズパラダイスの駐車場で行なえたのが、逆に嬉しかったです。一般道に近い路面コンディションだったので、スラロームや8の字走行の練習は、そのまま公道を走るのに生かせると思いました。
その後、ワインディングに出て感じたことはありましたか?
平嶋:箱根ターンパイクの緩めのコーナーは、曲がろうと思わなくても自然と曲がっていけました。車体が軽いため、ほんのちょっと身体を傾けるだけでスイスイ曲がっていってくれます。
長い直線では少し身体をかがめてみたのですが、あらためてサイズ感がいいと思いました。私の身長(154cm)だと、どうしても身体に対してバイクが大きくなってしまうことが多いんです。
でもモンスターは、ハンドルの高さや幅も無理がなくて、『このバイクならかっこいいフォームが作れる』と自分では思っていました(笑)。
【まとめ】新型モンスターは、みんなのバイク!
筆者の西野も少しだけ新型モンスターに試乗させてもらいました。私の身長は175cm、跨ると両足踵までべったり接地。ただ、乗り出すと、膝の曲がり具合が窮屈ではなく、ちょうどいいと思えるものだったから不思議です。
平嶋夏海さんがいうとおり、ニーグリップがしやすくて、人馬一体感は抜群。ひとたびスロットルを開ければ、937ccのLツインエンジンが力を発揮。大型バイクの醍醐味ともいえる強烈なパワーを存分に感じられます。
コーナリングやUターンもラクラク。まるで自分のテクニックが数段階あがったかのような「これなら、何でもできる」そういう感覚を得ました。
新型モンスターは、大型二輪免許を所有していれば、初心者からベテランまで思いっきり楽しめるバイクでしょう。
ヒラヒラと走る爽快感、それは乗ってみてすぐに味わえますが、しっかりと馴染んできたとき、より面白さを感じられるはず。「このバイクとともに腕を磨いていきたい」そう思わせる魅力がありました。リッター近い排気量を思いのままに操れる稀有な一台です。
2021年6月26日に全国で発売されます。正規ディーラーには試乗車も用意されることでしょう。ぜひ大型二輪免許を持つすべてのライダーに、楽しさに満ちた新型モンスターの衝撃を感じてもらいたいと思います。
ライダー:平嶋夏海/写真:松川 忍/まとめ:西野鉄兵