文:西野鉄兵/写真:南 孝幸、西野鉄兵/モデル:梅本まどか、北岡博樹、山口銀次郎
好きな服で安心してバイクに乗りたい!
私がバイクに興味を持ちだした15~20年ほど前、周りにライディングジャケットを着ているバイク仲間はひとりもいなかった。
2000年代はアメカジや古着全盛の時代で、みんな服が好きだった。Gジャンやミリタリージャケット、アウトドアブランドのウエアをどうバイクに合わせるか、そればかり考えていたと思う。
だがバイクに乗り続けている時間の経過とともに、多くの人がプロテクターの大切さに気づく。バイクの楽しさとともに危険性に目がいくようになる。
時代も「安全にバイクに乗りたいなら専用品がいい」という方向に進み、いまではしっかりとライディングジャケットを着た大学生や高校生もよく見かけるようになった。とてもいいことだと思う。
しかし自分自身ライディングジャケットを着始めて久しいが、もやもやしたものは残り続けた。「昔のライダーは何かかっこよかったなあ……」そんな風に思っていたところ、デイトナから画期的なアイテムが登場した。
「HPPE 耐切創インナープロテクター」の防護効果と特長
ライダーのプロテクターへの意識が高まっていくにつれ、「よりプロテクション効果を発揮しやすいのは、地肌に近い部分に身に着けること」という考え方が浸透してきた。
インナープロテクターは、そういう流れから近年のトレンドになっている。その決定版ともいえるのが、デイトナが2021年に発売したこの「HPPE 耐切創インナープロテクター」だ。
ここからは当製品の特長を紹介していこう。
特長①
肩・肘・背中・胸部に瞬間硬化タイプのプロテクターを配備
生地は薄手で、要所にプロテクターが仕込まれている。
バイクでの事故時、頭部に続き、胸部が致命傷になりやすいと10年ほど前から広まり、いまでは胸部プロテクターは大切な装備として認知されている。当製品も肩・肘・背中といったかつての基本に合わせ、胸部にも厚みのあるプロテクターを搭載。
各所に配備されたプロテクターは、ドイツのSAS-TEC(サステック)社が開発した、衝撃を受けると瞬時に硬化する高機能なものだ。しかも、すべてCE規格に認証されているから安心!
普段は柔らかく、身体の動きをさまたげず、不出来なライディングジャケットにありがちなごつごつした気持ち悪さもない。適度な肉抜きも施され、通気性を確保している。
特長②
生地に耐切創繊維を採用
他社製品のインナープロテクターと比べ、こだわっている最大のポイントは、プロテクターを配備した部分以外の防護性だ。
グレーの生地は、耐切創素材となっている。耐切創(たいせっそう)というのは、読んで字のごとく、切れにくさを追求したもの。
この素材は一般的に作業用の手袋で多く用いられている。デイトナは耐切創グローブの強靭さに着目し、このインナープロテクターに採用したというわけだ。
デイトナは耐切創生地の性能を示す実験映像を公開している。面白い動画なのでぜひご覧あれ!
特長③
ストレッチ性が高く、身体が動かしやすい
運動性を持たせるべく、前身頃や脇にはストレッチ素材が採用されている。
着心地は、ライディングジャケットよりも、着圧性の高いスポーツインナーに近い。
実際に着用して半日ツーリングをしてみたが、インナープロテクターを装備したことによる疲れは一切感じなかった。重たいライディングジャケットを着た翌日に、筋肉痛や肩の凝りを感じたことはないだろうか。そういった方にも試してみていただきたい。
特長④
耐切創生地は接触冷感、速乾性が高く洗濯もラク
半日走った日は、気温30度越えの真夏日だった。地肌に「HPPE 耐切創インナープロテクター」を着用し、その上にコットンのTシャツを着ただけで走ってみた。
プロテクターが配備されている部分は密着していて汗ばみやすいが、速乾性が高く、不快感は少ない。むしろTシャツ一枚で走るよりもだいぶ快適だ。
袖部分は、流行りの「アームスリーブ」を着用しているときと同じく、日焼け防止にもなる。また、メッシュジャケットを着ているときのような日陰効果も生まれる。
洗濯は自宅の洗濯機でOK。プロテクターをすべて外して、洗濯ネットに入れるのがおすすめ。脱水後、数時間で乾ききるので、泊まりがけのロングツーリングでも使いやすい。畳めばコンパクトになるのも美点だ。
「HPPE 耐切創インナープロテクター」が実現する自由なファッション
当製品のキャッチコピーは『さらば!! ライディングウエア』。その防護性は、一般的なライディングジャケットと比べても同等以上とのこと。
たしかに、見た目は薄く見えるが耐切創生地を採用していることで、ナイロン製のジャケットなどと比べれば、耐摩擦性能は勝っている。
とくにスリムな体型の方は、ライディングジャケットの場合、プロテクターの位置が最適な場所からずれてしまいがち。インナープロテクターは密着しているので、転倒時に守りたい部分を的確にカバーしてくれる。
ここからは「HPPE 耐切創インナープロテクター」を着用した場合のコーディネート例をご紹介。まずはサイズ感をチェックしてみよう。S~XLの全4サイズが販売されている。
【サイズ感のイメージ】
【コーディネート例】
①ミリタリー系のジャケット
ライダーと親和性の高いミリタリー系のジャケットは昔から人気。「HPPE 耐切創インナープロテクター」を装着していれば、安心してバイクに乗れる!
②アウトドア系のジャケット
アウトドアブランドのジャケットを愛用しているライダーは多い。 防風性や防水性が高いハイスペックなマウンテンパーカーは、インナープロテクターを着用することで優れたライディングジャケットに格上げされる。
③レザージャケット
二輪用品メーカー以外の革ジャンにはプロテクターは入っていない。レザーなら安心と思ってしまうので盲点ともいえる。そんな革ジャンのプロテクター問題で困っている人にもおすすめ!
④レインスーツ
ライディングウエアの上にレインスーツを着るのは、とくに夏場はしんどく感じる。かといってシャツの上にカッパ一枚では防護性は激減……。そんな困りごともインナープロテクターが解決!
⑤フリース
ミドルレイヤーの定番であるフリースもインナープロテクターを着用していれば、アウターとして使えるようになる!
⑥ジャージ
通気性と運動性に優れるジャージ素材。インナープロテクターを着用していれば、お気に入りのスポーツブランドのジャージが快適なツーリングウエアに変わるのだ。
⑦そのほかいろいろ
ご覧いただいた通り、自由自在! ライディングジャケットに縛られなければ、自分の趣味に合ったアウターでバイクを楽しむことができる。
もちろんインナープロテクターの上にライディングジャケットを着るのもあり。その際は場合によって、あえてジャケット側のプロテクターを外した方が的確なプロテクション効果を発揮できるかもしれない。
またライディングジャケットは、構造が複雑なことから、どうしても高価な製品が多い。「HPPE 耐切創インナープロテクター」は安いものではないが、長く続くバイクライフを鑑みると、ものすごくお得なのではないだろうか。一着あれば、上半身のプロテクション問題は解消できるのだ。
オンロードのツーリングはもちろん、林道やコースのオフロード走行時も安心感につながる。さらにいえば、スノーボードやスキー、スケートボード、ロードバイクなど他のスポーツを楽しむときにも役立つだろう。
【まとめ】新たな時代のライダーのファッションとは
「そのジャケット、プロテクター入ってるの?」
初めてそう聞かれたのは、10年くらい前だろうか。プロテクター入りのライディングジャケットは正義、それ以外は悪、とまではいかないものの、いつしかそんな風潮に息苦しさを感じるようになった。
洋画のアクションスターたちに憧れていた。『大脱走』のスティーブ・マックイーン、『トップガン』や『ミッション:インポッシブル』シリーズのトム・クルーズ、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のブラット・ピット。革ジャンは着ていたが、いわゆるライディングジャケットを着ていたシーンは記憶にない。
妥協案として、自分好みのライディングジャケット(プロテクション性能とカジュアルな見た目を両立したウエア)を選び続けてきた。しかし「自由に選べる」からは程遠く、お気に入りのブランドから好みの新作が出るのを待っているような状態が続いた。
今回、ヘンリービギンズの「HPPE 耐切創インナープロテクター」を実際に着用して、再び10代や20代の頃のようにもっと積極的にファッションを楽しんでみたいと思えた。
振り返るとファッションを楽しんでいた時分は、生活そのものが楽しかった。ぜひ同じような思いを抱えていた方に、インナープロテクターの可能性を体感していただきたい。
また、テストをしてみて意外な発見だったのが「HPPE 耐切創インナープロテクター」を着ると、半袖Tシャツ一枚よりも涼しく感じたこと。
薄着になりプロテクション性能を落としがちな夏場はとくに重宝するはずだ。
文:西野鉄兵/写真:南 孝幸、西野鉄兵/モデル:梅本まどか、北岡博樹、山口銀次郎