リアショックも一緒に変更することを想定している
なお、テクニクスではフロントフォークのTRICキットを入れる際にはリアショックのリバルビングも同時に推奨している。「僕らはフロントだけ、リアだけでのテストは行っていませんので、もしどうしても前だけ、後ろだけということですと、お客様の方で調整していただく必要が出てきてしまいます」とのこと。
リアショックはコストを考慮し、スプリングは純正をそのまま採用している。
こちらはリアショックのコンプレッションの調整ダイヤル。左が純正、右がテクニクス製品。どちらにもコンプレッションの調整機構がついているように見えるが、実はその内容は全く違う。純正では低速側のコンプレッションしか調整することはできないが、テクニクス製では内側で低速、外側で高速のコンプレッションを別々に調整することができる。
純正のアジャスター機構は、アジャスターの開閉によってニードルがポートに対して近くなったり遠くなったりするだけの至ってシンプルなもの。しかしポートとニードルに距離があり、少し離れるだけで、ほとんど解放状態になってしまっていたという。対してテクニクス製では一般的なモトクロッサーに装着されているような、しっかり微調整ができるアジャスター機能に交換されている。
また、ピストンにもこだわりがある。純正に対してポート径を大きくし、シムの枚数も増やしている。ポート径が小さいとハイスピードでオイルを通そうとする時に、一定のところでオイルが詰まってしまい、シムでコントロールできない。つまりポート径によって物理的な限界を迎えてしまうのだ。
「ポート径を大きくすることで流れるオイル量が多くなります。そのため、シムを増やすことで蓋をするのですが、その分細かくセッティングすることが可能になるんです」と土田さん。
また、ピストンバンドもメタル製になっており、フリクションロスを軽減してくれ、熱の変化にも強いという。
また、ピストンを留めているナットの代わりにワンウェイのナットを装着(左が純正、右がテクニクス製)。純正だとリバウンドのアジャスターを調整した時にコンプレッションも同時に変わってしまうのだが、このワンウェイナットを装着することでコンプ側のオイル量を制限し、リバウンド側だけを調整できるようになっているのだ。「機構上どうしてもコンプ側への影響をゼロにはできないのですが、低速で少し影響するくらいで、計測機で計っても比較的セパレートすることができています。これを装着することでコンプはコンプ、リバウンドはリバウンドで調整できるので、セッティングがしやすくなると思います」とのこと。
低い位置でしっとり使えるサスペンションにしたかった
改めて、今回X-Trainerのサスペンションの解説をしてくださったテクニクスの土田さんは、開発の方向性についてこう語る。
「X-Trainerは比較的しっかりしたスプリングに対して、ダンパーが弱い印象がありましたので、その辺を最適化しています。フロントは、バネとプリロードで車体を支えていて硬そうに見えるのですが、動き出したら動きが早いんです。また、リアは奥までしっかり使えない。リバウンドの減衰力がバネに対して弱くて、サスペンションの高い位置で使うような設定になっていましたので、もうちょっと低い位置でしっとり使えるサスにしたかった、というのが開発の方向性です。
基本はクロスカントリー用として開発しているのですが、高橋選手にテストしていただいていることもあって、ガレ場などのちょっとハードなセクションにも対応しています。また、社内のテストでは主に成田モトクロスパークを使用していますので、クロスカントリーからハードエンデューロまで幅広く楽しんでいただけるサスペンションになっていると思います」
テクニクスは埼玉県春日部市に店を構えるサスペンションプロショップ。店舗に直接行けなくても、郵送での対応もしてくれる。