ツーリングユーザーの要望を高次元でバランスさせた優等生
ミシュランのツーリングタイヤ『パイロットロード』がデビューしたのは02年。以降現在まで進化を重ね、今年(22年)登場したばかりの最新版が『ロード6』だ。
歴代のロードシリーズ中、最も感動したのがロード4の完成度。それ以前は素直なハンドリング特性と耐摩耗性を要件に開発された印象だったが、ロード4は接地感の高さ、乗り心地とウエットグリップも際立っていた。
その後継であるロード5も狙い所は変わらず、発売から4年が経過してもツーリングタイヤとしてのトータルパフォーマンスは依然としてトップレベル。それだけに最新のロード6はウエット性能と耐摩耗性を高めたマイナーチェンジ版と想像していたが、この予想は完全に外れた。後継モデルというよりも、現実的なツーリングシーンでストレスなく走れる独立したモデル、といった仕上がりだ。
これは同社ラインアップに『パワー5』が加わったことも関係しているだろう。パワー5は「ストリートでのパフォーマンスに特化したスポーツタイヤ」という謳い文句ながら、実際はツーリングにも適したキャラクター。僕もニンジャ1000にパワー5を装着していたが、ツーリングユースで不満を感じたことはない。スポーツ性能の高いパワー5があるからこそ、ロード6をよりツーリングに振ったキャラクターにできたのだと思う。
ロード5と6を比較試乗して最初に感じたのは、ロード6のハンドリングが自然で、バンク角や速度に影響されにくいこと。高速スラロームやハードブレーキで大きなGが掛かっても腰砕け感がなく安心できる。とくにCB1300SBのような重量車では、その傾向が顕著に現れた。逆にCBR400Rのような中型車では少し硬い感触。試乗車は車両指定の空気圧だったが、前後とも15%程度低くするだけでぐっと快適性が増すはずだ。
峠道のように小さなコーナーが連続するハンドリングコースでは、加減速による荷重変化を利用して操る楽しさを秘めたロード5に対し、ロード6は積極的な操作なしでオートバイなりに寝かせば素直に向きが変わるイージーさが特徴。絶対的な旋回力とグリップ力は同等で、膝やステップが接地するまでペースを上げてもまったく不足はない。
ウエットグリップは15%アップとのこと。正直言って明確な違いは体感できなかったが、ウエット路面で同速度からABS頼りでフルブレーキングすると、確かに制動距離はロード6のほうが短かく、公道用タイヤとしてトップレベルのウエット性能であることは間違いない。さらに耐久性は10%向上。僕がロード5で1万㎞以上走った段階では5分山程度で、偏摩耗によるハンドリング悪化、乗り心地の低下は出ていなかったから、ロード6を使い切れば2万㎞超えの可能性もある。
ロード6は大排気量車やタンデムライディング、荷物量の多さでタイヤに掛かる荷重が大きい車両や使い方をするライダーに最適、というのが僕の結論。タイヤの暖まりや路面状況に余計な気を使う必要もないから、寒い時期でも雨でもガンガン走るという旅ライダーには最高に信頼できるタイヤとして仕上がっている。
ドライ路面からウエット路面まで安心して走れる
250〜400㏄クラス用のサイズもラインアップされている。「気楽に走れて長持ちするタイヤがいい」というライダーにもお勧め。CBR400Rとの組み合わせでは安定性が増し、重量車的なハンドリングになる一方、乗り心地はロード5より若干硬くなる。車両メーカーの指定空気圧は標準装着タイヤが対象なので、個人的には車両指定空気圧よりも低めにセットしたほうがロード6が持つタイヤ全体のパフォーマンスが活きると思う。
サイズ設定
サイズ展開が豊富なこともロード6の特徴。250〜400㏄クラスから1000㏄クラスの大型車、重量級の大型ツアラー、フロント19インチのアドベンチャーにも対応する。
■FRONT
110/70ZR17▲
120/60ZR17
120/70ZR17
120/70ZR18
110/80ZR19
120/70ZR19
120/70ZR17※
■REAR
140/70ZR17▲
150/60ZR17▲
160/60ZR17
180/55ZR17
190/50ZR17
190/55ZR17
150/70ZR17
170/60ZR17
180/55ZR17※
190/50ZR17※
190/55ZR17※
※ロード6及びロード6 GT(重量車用)もラインアップ ▲2022年6月発売