成田亮をちゃんと語り継ぐ必要がある
2017年、山本は日本へ凱旋。いよいよ全日本タイトルの獲得に期待がかけられることになる。ただ、ときは成田亮の長い長い王座時代。さらには、その成田が同じチームであるHRCにいて、ホンダのツートップとして走ることになるのだった。誰かが、倒さねばならない、そんな空気感が漂っていたし、逆に成田にどこまでも頂点を目指して欲しい、という空気もあった。
「僕の話だけでいえば絶対に結果を残さないといけないというタイミングでした。もちろんそれまでも自分のベストを尽くして結果を残さないといけないタイミングっていうのはありましたが、生き残りを肌で感じるような、生き残るのか生き残らないのかという戦いはそこにありましたね。
自分も引退したので言えますけど、僕が大切にしていたのは成田さんとの距離感。尊敬している人ですし、凄い人だと思いつつ、絶対にこの距離感よりは内側に入っちゃいけないな、相手の土俵に入っちゃいけないなという距離感は感じていました。そこに入らなかったからこそ学ぶことが多かったと思います。
成田さんは、人を吸い寄せる人間です。それが成田さんの魅力。計算づくかもしれませんが、負けてしまう人は、自分がその魅力に引っ張られちゃってついていっちゃっている。成田さんは僕に対してライバル意識をすごい持っていて、僕は、僕以外に対しての成田さんはあまり見ていないのでわからないのですが、成田歴が長いメカニックの人とかに聞くと、1回は絶対成田さんの土俵で戦うように成田さんから仕向けてくるらしいんですね。ご飯に行こうとか、お前の良いとこはここで悪いところはこうだみたいな。向こうからの何かしらのアクションがあった。僕は一切ご飯に誘われたこともないし、自分もご飯いきましょうよと言うこともしなくて。まあ25歳という年齢的にもちょうどよかった。そういう風にいられたっていうのがよかったです。
何が成田さんの強さだったかというと、覚悟ですね。本当に覚悟が座っていた。僕が戦ってきた中でダントツですね。僕が負けない理由は覚悟して戦っていたからだと思っているんですが、それと同等の覚悟を持っているライダーと戦うわけです。だから+ αの覚悟が必要だってことになるし、それがとても大変でしたね。僕は、成田さんと戦っていた年は、絶対に結果を残さないといけないタイミングでした。もちろんそれまでもありましたが、この年は生き残るのか生き残らないのかという戦いでしたね。3年間です、同じ土俵で、同じチームで、同じ武器で戦っていたわけなので、でもやりがいはめちゃくちゃありました。好き嫌いとか忖度とか一切抜きで、成田さんを引退したライダーとして話しますけど、彼をちゃんと語り継がないとそれこそ日本のモトクロスの停滞につながると思います」と山本。