日立Astemoレースクイーンの楠瀬るりです。
5月21日(土)、22日(日)に、2022MFJ全日本ロードレース選手権シリーズの第3戦『オートポリス スーパー2&4レース』が、大分県のオートポリスで開催されました。
熊本のレーシングチーム『Team高武RSC』出身の作本選手にとっては、ホームコースでのレース!
第2戦に続き、全日本スーパーフォーミュラと全日本ロードレースが併催される「2&4レース」で、2輪レースはJSB1000クラスのみの開催。Astemo Honda Dream SI Racingは、ゼッケン#27の作本輝介選手が出場しました。鹿児島が地元で、熊本のレーシングチーム『Team高武RSC』出身の作本選手にとっては、ホームコースでのレースとなりました。
そんな作本選手について、前回のレポートで「チームスタッフさんの情報によると、作本選手は絞り上げられた身体からは想像つかないほどよく食べるそうです!!」と書いたことを覚えていらっしゃいますか? 今回、それを実感することがありました!
いつもレースウィークは土曜日の朝に現地入りするのですが、今回は金曜日に熊本入りした私は、夜はチームの皆さまの行きつけのお店で夕食をご一緒し、熊本の名物『馬刺し』をいただきました。とても美味しかったのですが…じつは作本選手は好き嫌いが多く、“生もの”が苦手だそうで、馬刺しや海鮮は食べることができないのだとか(お酒も飲めないそうです)。ですが、この日は夕食の前にメロンパンを食べてきたにも関わらず、4人前の大盛りチャーハンを気づいたら半分は食べていたので、「たくさん食べるのは本当だ!」と思いました。作本選手の好きな食べものは、お肉やパスタだそうです。
また伊藤監督をはじめとしてスタッフの皆さまはお酒も大好きで、サーキットでの真剣な表情とはまた違う、愉快なチームの一面に触れられて改めてほっこりしました。
いきなり余談から始まってしまいましたが、今回も私から見たAstemo Honda Dream SI Racingの魅力をたっぷりとお伝えして参りますので、ぜひ最後までご覧ください。
決勝レース1が行なわれた5月21日(土)
私はレースの前は緊張してしまうのもあり、この日もあまり寝つけなくて、オートポリスに向かう山道に酔ってしまいました。でもオートポリスに通ずるミルクロードでは、沿道に大好きな牛や馬が見ることができてとても元気が出ました!
こちらのミルクロードや大観峰の眺めは、作本選手、伊藤真一監督もオートポリス周辺のオススメスポットだとおっしゃっていたので、ぜひ皆さまもオートポリスにお越しの際は、動物を見つけてくださいね。
サーキットに着いたら、小雨模様で気温は14度。前日までの東京は暑いほどだったので、想像を遥かに超えた寒さに、極度の寒がりの私は頭が真っ白になりました。
そんな私を心配して、伊藤監督をはじめとしたチームの皆さまがピット中を探してくださり、チーフメカニックの小原さんの着ていないジャケットを貸してくださいました。背が高い小原さんのジャケットはXLサイズで、私のコスチュームが全て隠れてしまうほどの大きさです。土日の2日間貸していただいたのですが、チームのジャケットを着ることができた喜びも大きく、暖かくなっても、暑くなってもずっと着ていました(笑)。
そして決勝レース1では、予選は14番手からのスタートだった作本選手が、1周目から7番手に!!! 好調なスタートにピットが大盛り上がりとなりました。
その後も何度も抜きつ抜かれつがありながら、6番手でチェッカーを受けたレース1。本来なら、作本選手の奮闘ぶりを私がしっかりお伝えしたいのですが、まだまだ二輪レース初心者なもので、レース展開の詳細はチームの公式レースレポートをご覧ください。
初めて入ったオートポリスの「ゲストルーム」!
そして私は今回のレースを、パドックビル2階のゲストルームで見ていました。日立astemoレースクイーンを務めさせていただけたことの、すごいご褒美です…!
初めてのゲストルームからの眺めは最高で、作本選手がホームストレートで300km/hを出し、1コーナーで前方にいた濱原選手を抜かす瞬間を直に見ることができました!!! それはもう大興奮で窓ガラスに頭をぶつけてしまったほど(笑)。私は他の選手が280km/h台や290km/h台という数字の中、作本選手だけが出していた “最高速度300km/h” という数字が特別なものに思えて(モニターパネルに赤く表示された300km/hの数字が輝いて見えました(笑))、作本選手に「300km/h出た時は体感でわかりますか?」と質問してみました。
作本選手は「慣れてしまっていて体感はあまりわからないです。マシンにはスピードメーターも付いていないため、他の選手と比較して追いつくと自分が速いと思ったりすることができます」とおっしゃっていました。
また、抜かすタイミングやスタートの意気込みについても聞いてみると、いつも「スタートを決めて、なるべく順位をあげたい気持ちでいる」こと、「抜けるチャンスがあったら抜く機会をいつでも見計っている」ことを教えてくださいました。
作本選手はインタビューされた時や、話しかけられた時、誰に対しても大きな目でしっかり相手の目を見て話を聞いてくれます。きっと皆様も作本選手とお話したら、あの大きな目に吸い込まれると思います!(笑)
決勝レース2が行なわれた5月22日(日)は、朝から晴天で暑いくらいでした
レースは序盤で5番手となった作本選手はそのまま単独走行となり、5位入賞を果たしました。
レース後の作本選手にインタビューしたところ、「単独走行は後ろとのタイム差を気にしながら走っていました。予選で低迷していたので、スタート前からトップについていくのは厳しいとわかっていましたが、最善を尽くしました。課題の分析データも取れたので、次のSUGO戦ではマシンの改善と自分のライディングも磨いて上を目指したいです」とコメントしてくださいました。
私はその言葉を聞いて、予選の時点でトップに追いつくのは難しいと判断できてしまうレースの厳しさに圧倒され、でも作本選手はそれを受け入れて、決勝で最善を尽くしていたのだと知って胸が熱くなりました。
というのも、私は幼少期にとても負けず嫌いで、1位が取れなかったら悔しくて泣いていたからです。それは学校の成績だったり、リレーの選手だった時に抜かされてしまったり、徒競走で1位が取れなかった時に発揮される負けず嫌いでした(笑)。しかし大人になるにつれ、挫折を味わい、負けを認めて努力するようになりました。
そんな自分と比較するのはおこがましいのですが、作本選手も人生をかけた勝負でつねにトップを目指す中、今の自分では追いつくとこができないと悟ったレースでも一生懸命向き合い、努力されています。きっと自分より速いレーサーに対して尊敬と悔しい気持ちを持って、自分の実力と向き合い、つねに努力されているから、毎レース着実に順位を上げているんだと感じましたし、その姿に心が熱くなりました。
レース後の伊藤監督にお話を伺ったときも、監督は「作本選手は世界に行きたい気持ちを持っているし、チームとしても確実に世界を狙える選手だと思っているので、着実に一歩一歩進んでいきたいと思っています。日立astemoさんにサスペンションやブレーキのスポンサードしていただいていることもあり、これからもっとタイムは上がっていくので、必ずトップ争いに食い込めると信じています」とおっしゃっていました。
第3戦の作本選手の走りを見て、チームの皆さまはあらためて「作本選手は速い選手だ」と口を揃えていました。その言葉からも、チーム一丸となって着実に順位を上げていく作本選手を後押しし、表彰台を目指すんだという気持ちが伝わってきました。もちろん私もレースクイーンとして、さらに熱い気持ちで作本選手を応援させていただきたいです!
そして今回は『0.1秒を争う2輪レースの速さの裏側』をいろいろ取材することができました!
まず、土曜日のレース1の後、夕方のキッズウォークまでの時間に、メカニックの方々が今日の作本選手の調子を聞いて、サスペンションの微調整を行なっていました。
その真剣な姿を後ろから見学していて、この微調整が0.1秒の世界の勝利を分けるのだと実感し、あらためてチームおひとりお一人が自分の役割を最大限発揮して勝利を目指しているのだと思いました。
サスペンションについては、オートポリス終了後の5月25~27日に開催された『人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA』の日立astemoブースに伺った時にも、詳しく教えていただきました。
全日本ロードレース用のバイクのサスペンションは、とても滑らかに動くそうです。仕組みについてはまだまだわからないことばかりですが、チームのメカニックさんは毎戦後、ライダーの走りに合わせてサスペンションの中身を微調整しているのですね。
また今回のレースでは、Astemo Honda Dream SI Racingに大型12tトラックを提供して、チームの荷物を全国に運んでくださっている、臼杵運送株式会社の方々にもお話を伺うことができました。
臼杵運送株式会社は大分県に本社があり、第3戦オートポリス スーパー2&4レースでは従業員の方々が現地に来てくださいました。
トラックを提供してくださるようになったきっかけは、臼杵運送株式会社の社員さんが趣味でバイクに乗っていて、チームライダーの渡辺一馬選手とお知り合いだったことからだそうです!
astemo仕様にラッピングされた大型トラックには選手の用具一式が入っているほか、予備のエンジン、カウルのスペアなども収納されていて、荷物の重量は合計6トンにもなります。大人100人ほどの重さですね…とても重いですね…。
お話を聞かせていただいた社員さんは初めてのレース観戦だったそうですが、チームの皆さまの優しさに触れ、自分達もチームの一員であることを実感したとおっしゃっていました。また、私のSNSも事前にご覧になってくださり、薬学部に通う学生であることも知っていてくださって、とても嬉しかったです。
そして私が1番驚いたことは、トラックの荷物は大分までフェリーで運送されていたことでした! 今回の荷物は埼玉から、フェリーで2日間かけて運んでくださったそうです。
フェリーで運搬する理由は二酸化炭素の排出量を減らし、環境に配慮した運送をするため。フェリー1隻で500台くらいの車を載せて運べるそうで、トラック1台ずつ高速道路を使い、陸上を走って運ぶことと比較すると、二酸化炭素の排出量を抑えることができるそうです! 荷物の運搬にも、そこまで環境に配慮されている点に驚きました。
まだ航路が大分しかないため、フェリー輸送はオートポリスのみとなるそうですが、ちょうどその機会にお話をうかがうことができて良かったです。
しかも臼杵運送株式会社の社員さんは、チームスタッフさんと連携をとって大きなチームフラッグの管理をしてくださったり、ピットのテントなどの片付けも率先して手伝ってくださっていました。『運送』という業務だけではなく、チームの一員として協力してくださる心の温かさに感動しましたし、レースは表には見えない所で、大勢の方々の支えやご協力があってこそ成り立つのだと実感しました。
臼杵運送株式会社 公式サイト
https://www.usukiunso.co.jp/
さらにオートポリスでも、チームのメカニックさん達にはたくさんのことを教えていただきました
今回はタイヤとディスクについてご紹介します。
作本選手のタイヤはブリヂストンです。ブリヂストンのサービスガレージでは、タイヤチェック、タイヤ交換などのサポートが提供されていますが、こうしたサポートを受けられるのは速い選手だけなのだとか。
作本選手が速いライダーだということが、受けられるサービスにも影響しているんですね!
メカさんと一緒にサービスガレージを見学させていただいた時は、エアゲージ(空気圧を測る機械だそうです)の精度チェッカーで、チームのエアゲージの精度を確かめさせていただきました。
たとえばエアゲージで150 kPaを測る時には、タイヤの内圧がピッタリ150kpaでならないといけないそうで、この精度チェックが大変重要なのだそうです。理由はタイヤの内圧が指定した数値と違うと、タイヤの固さとグリップ力が変わってしまいます。その影響はライダーの走りに直結しますし、ライダーのコメントを聞いてメカニックさんが内圧を決めているので、ピッタリ数値が合ってないと正確に調整できないのだそうです。本当に、勝利のためにはすごくシビアな数字の管理が必要なんですね。
ディスクブレーキについても、今回おもしろいものを見せていただきました
インナーローターなのですが、そこには緑、オレンジ、ピンクの色のマーカーが引かれています。このマーカーはなんと! それぞれの設定温度に達すると白色に変色します。
緑 430度
オレンジ 560度
ピンク 610度
この色の変化で、ライダーが走った時にインナーローターにどのくらいの熱が発生しているかがわかるのだそうです。見えないところでも、さまざまなマシンの変化が測定されているのがとても面白いですね。
そしてこうした1つひとつの細かい測定や調整を重ねていくことが、バイクを速く走らせ、ライダーに合ったバイクを作っていくことにつながるのだと、2輪レース初心者の私にも実感しました。
こういったお話を聞けば聞くほど、チームの魅力を感じ、全日本ロードレース選手権の面白さを伝えたいという想いが強くなります。そのため書きたいことが多く、いつもレポートがとても長くなってしまいます…。
そして今回も、レースクイーンの大切なお仕事であるピットウォークでは、astemoTシャツやキャップ、伊藤監督のTシャツを身につけてサーキットに来てくださるファンの方と何度もお会いできてとても嬉しかったです!
まだ皆さまと直接の交流はできませんでしたが、キッズウォークも開催され、可愛いお子さん達にお会いすることができて、無邪気な笑顔に癒されました。
いつもインスタグラムやツイッターでコメントしてくださる方々とも、やっとお会いできたことも光栄でした。
現地で直接お会いして、一緒にエスアイレーシングの応援ができることはとても一体感が生まれて、心が温かくなりますね!
今回もつたなく、長いレポートを最後までご覧いただき、ありがとうございました。
次戦の第4戦は、6月4日(土)、5日(日)に宮城県のSUGOサーキットで開催されます。
SUGOは伊藤監督の地元であり、先日、チームで訪問させていただいた日立astemoの福島工場の皆さまも応援に来てくださるということで、より一層チームが盛り上がりを見せることは確実です!
引き続き、Astemo Honda Dream SI Racingへの熱い応援を宜しくお願い致します。