ルーマニアで開催される世界一タフなハードエンデューロレース「ルーマニアクス」に日本人5人が参戦。ゴールドクラスに山本礼人、佐々木文豊、ブロンズクラスに横田悠、岡庭大輔、奥卓也がエントリーしている。Off1.jpでは現地同行取材を敢行し、その様子をリアルにお知らせしていく

ここまではルーマニアクスというレースの難易度やフォーマット、そして参戦する日本人ライダーの紹介をメインにお届けしてきた当連載だが、ついに現地入りを果たしたので、徐々に判明してきたルーマニアクスの実態や、レンタルするマシン、そしてパレードランやプロローグについて触れていきたいと思う。

ルーマニアクス開催都市、シビウへ
様々な出会いが!

平時ならば、ロシア上空を飛んで直接ルーマニアに入る航空便があるのだが、現時点ではその直行便は存在しない。今回、横田悠はマイルを使って航空券を手配し、ミュンヘン経由でルーマニアクスが開催される都市、シビウに入ったが、他の4人とOff1取材班はトルコ・イスタンブール経由でルーマニアの首都ブカレストに入り、そこからレンタカーで3時間半陸路を走り、シビウ入りを果たした。

画像1: ルーマニアクス開催都市、シビウへ 様々な出会いが!

ブカレスト空港でレンタカーのお迎えを待っていたら、ベンチに座っていたのが、明らかにルーマニアクスに出そうないでたちのこの人。山本が話しかけてみると、どうやらルーマニアクスに11回、エルズベルグロデオにも4回出場経験がある凄腕ライダー。どうやらSIMも買っていないしクレジットカードが壊れてシビウまでの移動手段もない、おまけにトランジットでブーツを紛失してしまったとのことで、シビウまでのレンタカーに相乗りしてもらうことに。

画像1: チームジャパン、ルーマニアクスへの挑戦vol.5「ついに現地入り。街をあげてのお祭りレース」

シビウに着いたらまずは受付。ルーマニアクスの本部が設置されているラマダホテルに行き、手続きを開始。ここではFIMライセンスのチェック(なくても参加可能)や連絡先の確認、パスポート番号の確認、GPSの申請など書類をもって各担当を回りハンコを集めてくるというRPGゲームのようなことを行う。

画像2: ルーマニアクス開催都市、シビウへ 様々な出会いが!

こちらはFIMライセンスのチェック。ちなみに記入に不備があると罰金の対象にもなったりする。山本はFIMライセンスを印刷してこず、メールを見せたら「このアドレスにそのPDFを送れ」と言われ、メールを送信したらプリンターで出力してくれた。

画像2: チームジャパン、ルーマニアクスへの挑戦vol.5「ついに現地入り。街をあげてのお祭りレース」

無事、ゼッケンをゲットした山本。ゴールドクラスはゼッケン1桁と2桁。シルバーが100〜、ブロンズは300〜といった感じで決まっていて、色などは全クラス同じ。

画像3: ルーマニアクス開催都市、シビウへ 様々な出会いが!

受付をしていたら声をかけてくれたのが、こちらの女性、スーザン。実はプロローグを除くルーマニアクスはヘルメットカメラ(GoProなど)の装着が禁止なのだが、メディアが申請することで特別に許可される場合があるという情報を得て、Off1.jpでは「日本チャンピオンが出場するからGoProをつける許可が欲しい」と日本からメールを出していたのだ。

しかしそのメールには2週間以上返信がなく、無視されたか、忙しくて対応できなかったのかとがっかりしていたのだが、実は昨日、取材班の携帯番号にSMSを送っていたらしい。しかしその時にはすでに取材班はルーマニアに入国してSIMを切り替えていたため日本の電話番号宛に送られたSMSが受信できておらず、返信がなく困っていたところだったようだ。

そこでスーザンから細かい規約の説明を受けたところ、「GoProで撮影した動画の内容をチェックされ、主催者側が禁止した場所や、マナー違反行為、危険行為などが映っていた場合には罰金1000€(約15万円)だがいいか?」という話だった。さらにその1000€は先払いし、違反がなかった時に返金されるというシステムとのこと。これはしっかり同意した上でGoPro装着の許可を得た。

画像4: ルーマニアクス開催都市、シビウへ 様々な出会いが!

スーザンと話し終わったところにエルズベルグロデオ2022で優勝したマニュエル・リッテンビヒラー(マニー)と遭遇。千載一遇のチャンスに大興奮のチームジャパンを横目にマニーと再開を喜びハグをするスーザン。すかさずマニーに声をかけ一緒に写真を撮ってもらうことに成功。「日本から来たんだ」と言ったら「クラスはなんだ?」と聞かれ「ゴールドクラスだ」と山本が言うと「F***」と言われて笑われた。本当にめちゃくちゃフレンドリーだった。

こうしてルーマニアの初日は順調に終わりを告げた。

ルーマニアクスもエルズベルグロデオと同様
エンデューロライダーはお祭り騒ぎが大好き

画像1: ルーマニアクスもエルズベルグロデオと同様 エンデューロライダーはお祭り騒ぎが大好き

こちらは今回チームジャパンがマシンをレンタルするクロスパワーレーシングのガレージ。マシンレンタルだけでなく、セットアップやガソリン給油など、レーシングサポート全般を請け負ってくれている。このルーマニアクスではチームジャパン含めて40〜50人がここでお世話になっている。

画像2: ルーマニアクスもエルズベルグロデオと同様 エンデューロライダーはお祭り騒ぎが大好き

受け取ったマシンに持ち込んだパーツを装着していく山本。ハンドルバー、レバー、シート、リアショックスプリング、スプロケット、フライホイールなど。

画像3: ルーマニアクスもエルズベルグロデオと同様 エンデューロライダーはお祭り騒ぎが大好き

佐々木も同様にリアショックスプリング、ステップ、クラッチカバー、スプロケット、レバー、スタックベルト、クロコダイルシートなどを持ち込んだ。エルズベルグロデオでも鈴木健二が装着したクロコダイルシートに驚く海外選手の声を紹介したが、当然ルーマニアクスでも大注目。

画像4: ルーマニアクスもエルズベルグロデオと同様 エンデューロライダーはお祭り騒ぎが大好き

こちらがレースで使うコースマップを確認するためのGPS受信機ガーミン。コマ図を見て正確なルートを探りながら速さを競うラリーのように、ルーマニアクスではGPSナビに従ってルートミスをなくしつつも、速く走るスキルが求められる。なお、GPSは毎日レース後に回収され、ミスコースがないかなどを細かくチェックされ、ミスコースが発覚するとペナルティの対象となる。

画像5: ルーマニアクスもエルズベルグロデオと同様 エンデューロライダーはお祭り騒ぎが大好き

マシンのセットアップが完了し、ツーリングライドという名の完熟走行に出発するチームジャパン(とインドのクロスカントリーチャンピオン)。インドにはハードエンデューロという概念がないらしく、初めてハードエンデューロに出る彼のクラスはアイアン(ブロンズの下)。

余談だがクロスパワーレーシングのトーマスは「明日からはブロンズクラスの3人は毎晩宴会でもいいけど、ゴールドの2人は早く寝ろ」と実に親切なアドバイスをくれた。また、山本はホテルのエレベーターで一緒になった、山本の2倍くらい腕が太いマッチョマンに「何クラスに出るんだ?」と聞いたらアイアンクラスと言われ「お前は?」と聞かれて「ゴールドだ」と答えたらめちゃくちゃ笑われたという。ルーマニアクスのゴールドクラスとはつまり、そういうクラスなのだ。

街中をレーサーがパレード!

さて、チームジャパンがツーリングしている間にも大会プログラムは進んでいく。まずはシビウの街中を参加者たちがパレードランするというので、どこかで撮影したいと思って調べたが、コースがどこにも載っていない。が、どこを通るといったポイントだけはシェアされていたので、そこを探して歩いてみた。

ここでシビウの美しい街並みを写真で見ていただこう。

画像1: 街中をレーサーがパレード!
画像2: 街中をレーサーがパレード!
画像3: 街中をレーサーがパレード!
画像4: 街中をレーサーがパレード!
画像5: 街中をレーサーがパレード!

こんなところをオフロードバイクが500台以上もパレードするのだ。そんなことが許されてしまうのか……!

画像6: 街中をレーサーがパレード!

きた! 右も左もわからないシビウの街で運良くパレードランを先頭から最後までしっかり撮影することに成功した。みな自分の国の国旗を掲げ、ハッピーな空気に包まれている。

画像7: 街中をレーサーがパレード!

多くのライダーが目立とうとウイリーにチャレンジするも、ちょっとフロントが上がるのが関の山……と見ているとずっとウイリーで走ってくる2台が。まさかと思ったら写真右のライダーはグラハム・ジャービスだった。

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今回は我々は日本国旗も持ち込めてなかった上、レース前にマシンに慣れるための大事な完熟走行があったためパレードには参加できなかったが、次回があればぜひこれにも参加できるようなスケジュールで渡航したいものだ。

例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

ここ2年は山の中を使ったマウンテンコースだった予選だが、待望のインシティ・プロローグが3年ぶりに復活した。ストリートを封鎖してタイヤや丸太といった人工セクションを設置、そこをタイムアタックするというもので、例年では大きいジャンプや危険な飛び降りなどがある、リスクの高いものだった。

画像1: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

こちらがスタートゲート。巨大なRed Bullゲートにテンションが上がる!

画像2: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

丸太に板を張った一本橋。途中の段差がまた嫌らしい。

画像3: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

斜め丸太はもはや序の口。

画像4: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

真ん中のジャンプは着地点との間に地面がない。つまり落ちたら3mほどの高さからアスファルトに叩きつけられる。

画像5: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

ロックセクションも忘れてない。

画像6: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

タイヤ。障害が少ない左のラインを選ぶと、その先には垂直のステアが待ち受けている。

画像7: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

どうしろっていうの?

画像8: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

そしてラストジャンプ。完全にフリースタイルモトクロスの様相。

画像9: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

パレードランを終えたゴールドクラスライダーによるプロローグのデモラン。一回だけでなく、時間内無制限で何度も挑戦できる、いわば練習時間。日本人のゴールドクラスライダーもこれに混ざっておきたかったところ。

画像10: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

垂直ステアを楽々こなすタディ・ブラズシアク。

画像11: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

マリオ・ロマン。

画像12: 例年よりも安全性が増したインシティ・プロローグ

マティアス・ウォークナーのファイナルジャンプ。このジャンプでは両手離しや捻りを披露しているトップライダーもいて「フリースタイルクラスはありません」とアナウンスが冗談を飛ばしていた。

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と、こんなプロローグだが、下見を終えた日本人ライダーの感想は「思ったほど危なくない」という評価。ブロンズクラスにはエスケープもあるし、スピードもそこまで高くないだろう、ということでブロンズクラスの3人は基本的にプロローグへの参戦を決めた。ゴールドクラスの佐々木は不参加。山本は直前まで未定とのこと。

実はルーマニアではすでに「コロナウイルス? なにそれ?」な雰囲気で、PCR検査を受けられるところがほとんどない。しかし当然、日本に帰国した際には陰性の証明書が必要なので、ルーマニアを出国する前に必ずPCR検査を受けなくてはいけないのだ。日本を出る前に調べた時には、やっているはずだったところに実際に行ってみるとすでにやっておらず、「この日本人はなにを今更PCRなんて言ってるんだ?」という顔をされる。

すると、決勝レースの1日をキャンセルして受けるしか方法がなくなってしまうため、出場しなくてもペナルティで済むプロローグをキャンセルし、PCR検査を受けられる施設探しに時間を割く、というプランが浮上する。もしも午前中いっぱいとかで運良く見つかれば、山本がプロローグに出走する可能性も、残ってはいる。

プロローグは以下の公式ホームページにてライブ配信が予定されている。ぜひ日本から出場するチームジャパンのライダーに熱い声援を!

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