みなさん「シティ・トライアル・ジャパン」ってご存知ですか?
今までは大阪の市街地で行なわれる、夏トライアルの一大イベントだったのですが、8月20&21日に開催された今年の開催は、全日本トライアル選手権の1戦になったのです。
ライダーたちが真剣にトライする姿を、キレイなビーチの前で観られたのはCity Trial Japanならではのシチュエーション!
どのセクション(障害物みたいなやつです)も物凄い迫力があり、レースでは異次元な技が繰り広げられていました。また、初開催ならではの雰囲気も味わえましたし、選手たちのリアルな表情の動きが近くで見られたり、声を聞くことができて、ライダーさんやアシスタントさんの"かっこよさ"を改めて感じた1日でした。
私が全日本トライアル選手権に行って楽しみにしているのは、いつも最後に行なわれるTOP10に残ったライダーが挑戦する難関セクション。
それまでにトライしてきたセクションより難しく、それを10位の人から順番にトライしていくのですが、この時だけ1組ずつアタックを行なうし、会場内にいた観客もみんな最後のセクションに集まって観るんです。
それまではいろんなセクションをそれぞれのライダーがトライしていくので、誰を観に行くのか? どのセクションを観るのか? 観客の動きはみんなバラバラ。
もちろんその時間も楽しいのですが、それを経て勝ち上がった10組をみんなで見守るあの空気感、失敗しても成功しても一喜一憂する、選手とお客さんの一体感! これがたまらないのです。
実はその最後に行なわれる難関セクションをみんなで見守るというのが、このCity Trial Japanでは全セクションで行なわれます! 面白さやエンタメがギュギュッと詰まった1戦なんですよね。
今回実際に間近でCity Trial Japanを観て印象に残っているのは、ライダーさんの凄さもですが、アシスタントさんの声のかけ方や、ライダーへの想いを凄く感じたこと!
トライアルってライダーさんだけじゃなく、指示を出したりタイムを測っているアシスタントさんがいるので、2人1組で出場されている方がほとんど。この2人の信頼関係の深さを物凄く感じたんです。
トライアルは観客と選手の物理的な距離が近いので、声が聞こえやすいという事もあるのですが、セクションがどれも難しくUP・DOWNが激しいので、それを指示するアシスタントさんも登ったり降りたり。
一緒に攻略してやるぞ!というあの団結した雰囲気と、その中でもメインで組んでるアシスタントさんの声に反応するライダーが、凄く信頼し合っているのが伝わってきて、「絆」だなと感じたのです。
レースが終わった後に、全日本トライアル9連覇中の小川友幸選手のアシスタントをされている田中裕大選手にお話しを聞くと「土曜日は1人しかアシスタントをつけられなかったけど、(今回のセクションは)難しいから2人つけたいというのをブリーフィングで(主催者に)提案し、変更してもらったんです」と教えて下さいました。
実際日曜日は朝は雨が降っていたり、初開催ということもあり、いろいろ選手側からの意見も運営側に伝え、変更できるところはしていったそうなのですが、モータースポーツに関わってからこのブリーフィングがいかに大事で大切かを感じることが多く、自分自身もラリーにコドライバーとして参戦しているからこそ、ブリーフィングで自分の知りたい事ややりたい事を明確にしたり、伝えたり、ルールを理解して時には抗議もしないといけないのですが、そうやって話し合って2人のアシスタントさんがつき、その結果、よりライダーさんもアシスタントさんもしっかり向き合いかっこいいトライが出来ていて凄いなぁと思いました。
田中裕大選手は同じTEAM MITANIである氏川選手と廣畑選手のアシスタントとしても活躍。
ベテランの腕と信頼感を発揮されていたのですが、実は待っている間もアシスタントさん同士「俺がここでこれをやるから」「このラインは...」など作戦を立てられていたんですよね。
そこは任せたぞ!と言わんとばかりのオーラとそれぞれの場所ではライダーさんに対して「ここにこれば大丈夫! こいよ!」とばかりの構えがホントにかっこよくて、見惚れていました。
このアシスタントさんとの掛け合いの中でそれぞれのライダーさん、アシスタントさんのコンビによって伝え方が全然違うのも面白く、個人的には廣畑選手とそのアシスタントの田中裕人選手の掛け合いが素敵でした。
なにが!って、余計な言葉は言わないんですよね。一言一言に重みがあり、正確に端的にでもしっかり伝える言葉。この言葉達がしっかり廣畑選手に響いている空気感があり、また廣畑選手はIAS2年目の若手ですが今回凄い活躍で会場を沸かせる場面も多かったのです。
そこにはアシスタントの裕人選手の「いいよ」も「我慢」も「前、前、前!!」の言葉も全部響いていて、セクション終わってから必ずアシスタントさんと合流してからちょっとホッとするライダーの顔、表情がまたいいんですよね。
終わってからの表情はみんな同じでどのペアもその独特な2人のアイコンタクトだったり、空間があるのもトライアルの面白さの1つ。
ちなみに小川選手と田中裕大選手のコンビはもうドッグランかのように次々と動きその動き1つ1つがもう息ぴったりで感動しちゃいました!
あと個人的には野崎選手のアシスタントさんの中山選手の動きも印象的で、トライする前の迫力とは反対に失敗してしまったあとの声かけの優しい表情とのギャップがたまらなく、ホントに一緒に戦い支えているのがヒシヒシと伝わり、見入ってしまいました。
そんなアシスタントさんの活躍も今回は目立っていましたが、それくらい難しいセクションだったから、その雰囲気を味わえ知ることができたのかなと思います。
主催者の藤原慎也選手に、質問してみました!
今回、何故全セクションすごく難しくなっていたのかはCityTrialJapanの主催者でもあり選手としても参戦されている藤原慎也選手の熱い想いからきていました。
終わった後にお話しを聞くと「セクションはわざと難しいのばかりにしているんですよね!
真剣な姿を、アスリートとしての顔を、お客さんに観てもらいたかったから。
でも今回初開催だったし朝は雨も降って正直心臓バクバクだったんです。
スタートしてから雨がすぐに上がって、どんどんドライになっていって、結果は今までで見たことのないような展開で僕も見ていて楽しかった。あれだけみんなが全力で攻めて、若手の廣畑選手や氏川選手の活躍もあったし、こんなラウンドになるなんて、理想通り。
ホントに午前中とか不安もあったけど、僕としては満足♪楽しかった!! みなさんに喜んでもらえたし、良かったと思う」と率直な気持ちを語って下さいました。
日曜日は朝からトンカチを持って、ずっとコースと睨めっこされていた藤原さん「選手だからこそ気がつく所が多くて。雨用のセッティングも元々準備していて、あのフェンスをつけると結構グリップするんですよ!!日本人選手は自然のセクションに慣れてる人の方が多いけど、人工セクションが得意な選手はグイグイいってくれたし、ちょっとそこはわかれた所かもしれません」
今回は人工的に作られたセクションで、私も見たのが初めてでしたが、実況では氏川選手が人工セクションが得意という声が聞こえて実際のトライも凄かったですが、注目が集まった時間でもありました。
あとは、この人工セクションだからこそなのか高い所から着地する時にスポークが折れてしまうケースも散見されました。メカニカルタイムといって10分間マシンを直しに行く時間が認められているのですが、その動きの速さや対応力が観られたのはとても面白かったです。
藤原選手からは「みんなセッティングはいつもと変えてるって言ってたけど、そういう所で違いが出るのも面白さだと思うんです」と。
逆に選手として「実際にトライしてみてどうしたか?」と聞くと「思っていたよりも難しかった」と笑顔で答えて下さいました。
大会への想いを聞くと「このCity Trial Japanはライダーみんなに輝いて欲しい。凄い事をしているのを沢山の人に知ってもらいたい。今まではショーとしてイベントとして、それも盛り上がって楽しかったけど、ホントは一生懸命切磋琢磨して磨いてきた技術だったり、頑張ってトライする真剣さも観て、アスリートとしての顔・トライアルを観てもらいたいんです。彼らが息をのむ瞬間だったり、汗をかいてハァハァ言ってる表情だったり。お客さんにも一緒の気持ちになって観てもらいたいって想いがありました。いつもの大会は街から離れた場所だから中々行きづらかったりもするので、このCity Trial Japanは街に出て、みんなに観てもらって、そしてトライアルに興味を持ってもらえたらいいなと」
毎年沢山のことを考え、準備して、今回お客さんにあれだけ楽しんでもらえたのが嬉しかったと笑顔で話す藤原選手の表情はとてもかっこ良かったです。
また会場には藤原選手と幼馴染で全日本トライアルのレディースクラスに参戦する小玉絵里加選手がスタッフとして活躍されていました。
藤原選手からは「彼女がいなければ回らなかった」と。実際にいろんな指示を出したり2日間走り回っている姿を見ていたのですが、絵里加選手にもお話しを伺うと「最初は全日本の1戦ってことでMFJさんと一緒にルールなども話し合って、どうなるのかなと思っていたけど、結果的にお客さんから楽しかったという声が多く聞けてて良かったし、みんな【ライダーファースト】で走ってもらうにはを考えて一致団結できたのが良かったです。もうバタバタしてあんまり記憶がないけど。でも、今回やっぱりライダーってかっこいいと思う場面が多かったし、お客さんから"凄い""かっこいいな"の声が沢山聞こえてきて、フェンスによじ登って観ている人がいたり、そういうのがホントに嬉しかったです」と教えて下さいました。
あと「やっぱり山だと好きな人しか観に行きにくいけど今回何やってるんだろう?と観てくれて"今度観に行きますね!"って声もかけてもらえたりしたのが嬉しかった♪
そう思ってもらえる人が増えて山にも観に来て、自然の険しいセクションとかも観てまた好きになってもらえたらいいな」とお客さんの声を聞けて嬉しそうに話して下さった姿が印象的でした。
また今回は国内最高峰のIASクラスのみの大会でしたが、レディースクラスもCity Trial Japanでやりたいですか?とお話しを聞くと「実際に開催する前にデモでもいいからやらないかという案が上がったんですけど、新たなセクションを作ったり、準備と時間との関係で今回は無くなってしまいました。でも、後輩が観に来ていたから"やってみたい"って思ってもらえてたら嬉しいな」と後輩の事も考えていたり、選手としてもイベントとしてもいろんな目線でトライアルの未来を考えて動かれている姿や言葉を聞いて、トライアル愛をとても感じました。
競技を広める為にも「みんな写真を撮ったら、もったいないからハッシュタグつけて拡散してね♪」とも言っていたので、是非行かれたみなさんは「#シティトライアル」で拡散お願いします。
私も沢山撮ったからツイートしなくちゃ!笑
ちなみに、今回行なわれた場所は泉南りんくう公園という場所。
今までは通天閣の前などで行ない、大人気のイベントでした。毎回告知を見るたびに行ってみたいなと思うような盛り上がりで、実際に行かれたスタッフさんに話を聞いても「あれは面白いよ! 行った方がいい!」と勧められていたのです。
泉南りんくう公園の周りにはグラウンドやビーチがあり、サッカー少年達が練習の合間や終わりに観に来て「かっこいい!すごーい!」と楽しそうにしていたり、いつも以上に黄色い声援が飛び交っていたのが印象に残っています。
選手の皆さんにもお話を伺いました!
そんな中、今回優勝したのは#2 黒山健一選手。
実は土曜日はあまり調子が良くなく、日曜日に徐々にクリーンを増やしていき、逆転優勝という感じで見応えがあったのですが、そんな黒山選手にもお話しを聞く事ができました!
「実はオートバイの調子が悪くて、対セクションではなく、対オートバイとの調整で…。たぶん僕のトライは今回速かったと思うんですけど、それはオートバイの調子が悪くて、止まらないようにそうしてたんですよー。途中からちょっと調子を取り戻してくれたから良かったです」と教えて下さいました。
確かに今回黒山選手はセクションインしてから次々と進み、人工セクションはこうやってスピーディーに走ると勢いがでるのかな?!と思って観ていたのですが、マシンの調子に合わせていたとのこと。トライするまでの時間もいろいろ試していたみたいなのですが、理由がわかり納得でした!
そんな中で優勝するって凄いなと思うのと同時に黒山選手を見ていて今回、スピーディーな動きや決断力、真剣な表情がホントにはっきり見えてめちゃくちゃカッコ良かったんですよね。
お話しを聞く中で「City Trial Japanって今まではイベントでもっとお客さんとの距離が近くて、自分ももっとショーとして盛り上げていたけど今回は全日本の1戦だからそんな事はできないから、(お客さんが)ちょっと遠く感じました」とアスリートとして戦う反面、ファンサービスをしたい気持ちとの葛藤を話して下さり、サービス精神旺盛な黒山選手らしいなと感じました。
また実は今回かっこいいBGMも流れていて、会場の空気を作っていたのですが、その事についても聞くと「海外ではガンガン鳴っているんですよね。今回トライするまで流れていて、トライする時に静かになったから、(運営に)おもてなしをされている感があって、あれは素晴らしかったですね」と海外の事も知っている黒山選手ならではの意見が聞けました。
ちなみに会場の空気とかBGMでの緊張感みたいなのはありますか?と質問すると「全くない」と即答され、さすがプロのライダーさんだなと感じました。
ちなみに1番難しかったセクションについても聞くと「2と9で使った丸太のセクション。あれがいっちばん嫌い」とこれまた即答。
でも、この9セクションというのは黒山選手だけクリーンをとって大拍手が起こった場所なんですよね!!「最後の一本橋みたいに渡る所はホントに難しくて、捨て身ラインでなんとか。あれはホント危ないですよ」とまさかの感想に驚きましたが、それだけ攻めたからこその大拍手が起こったんだなと感じました。
そして、今回2位となった野崎史高選手にもお話しを聞く事ができました。
率直な感想をと言った瞬間「いやー、暑かったですね。暑いか雨かって、もうちょっと丁度いいコンディションだと良かったですよね。土曜日はホントに暑いし長いしで大変だったんですよね。予選が良かったから待ち時間が沢山あって、それだけで熱中症になるんじゃないかと思った」と、真夏の大会だからこその率直な感想を教えてくれました。
実は野崎選手はこの予選がめちゃくちゃかっこよく、予選って通常の全日本トライアル選手権ではないものでCity Trial Japanだけの走行の順位決めをする特別なスピードレースなんです。
2人の選手が同時にスタートし、タイムを競うのですが、その時野崎選手と一緒に走る事になったのが氏川選手。
息ピッタリくらいの進み方をしていて、それまで時間オーバーした選手もいる中、凄いスピードでトントントンって進んでいき、みんなが「凄い!えー!きゃー!」と叫ぶくらい圧巻の走りだったのです。
予選は1位氏川選手、2位野崎選手となりラストから2人目に走行する事になったので、それが逆に辛かったとお話しされていたのですが、でもこの予選がホントにかっこ良かったんですよ!!
また土曜日についてはいつもと違う点があり、1セクション始まると連続で4つのセクションにトライしなければいけなくて、終わるまでみんなに注目された状態が続くスケジュールになっていました。その事について聞くと「おじさんにはちょっと辛かった」と笑いながら、熱さとこの集中力の大変さを語って下さいました。
「でも、沢山の人、観た事のない人に観てもらえるのは嬉しいですね。トライアルは爆音でやる事もないから、お客さんの声援が凄い聞こえたし、凄く励みになった。また、ちょっとやってみたいなとか憧れを持ってもらえていたら嬉しいですね!」と笑顔で教えて下さいました。
実際に観ているお客さんから「あれは無理だけどちっちゃい丸太くらいなら越えれるかな」なんて声もチラホラ聞こえていたのですが、プロの方が沢山難関セクションにトライしていると小さい丸太くらいなら簡単なのかもと思えたり、やってみたくなるんですよね♪
野崎選手はイベントなどにも力を入れているので、今回「セロー乗ってるんです! セローで来ました」って声も聞けて嬉しかったそうです。
ちょっと長くなってしまいましたが、今回このCity Trial Japanは IASクラスのみの戦いだったこともあり、1人1人の選手に注目できる時間が長く、トライアルの良さであるチームの掛け合いから、それぞれの個性を知れたり。
正直アクセルワークとかタイヤの位置とか細かい所も凄いのはわかるけど、どう凄いのかって事まではわかりません。
でも、そんなことわからなくても、観ていて迫力があったり、そのトライしてる姿も技もかっこよくて、思わずどの選手にも拍手したり一緒に悔しくなれるくらいの空気感を味わえるのはこのトライアルだけなんだと改めて感じました。
City Trial Japanが来年どういう形で開催されるかはわかりませんが、今年観に行く事ができて、ホントに面白かったし、良かったです。
またCity Trial Japanは全日本トライアル選手権の第5戦として行われましたが、第6戦中国大会は今週末の9月4日(日)に行われます!
気になった方は是非全日本トライアル選手権のHPをチェックしてみてね☆+°
写真/梅本まどか