2022年の7月にデビューしたDUNLOPのSPORTMAX Q5は、サーキットコースの走行会やジムカーナの参加者から好感触だと、デビューから半年も経たずしてサーキット走行仲間や雑誌編集仲間といったライダー間でなにかと話題に上がっていた。個人的にとても興味がある上に、先代のSPORTMAX Q4には設定のなかった250ccクラス対応のサイズが用意されているというのだ! しかも、Zレンジで統一された規格でというのだ。今回、250ccのCBR250RRを所有するモデルの葉月美優さんに御協力いただき、サーキットから公道と幅広く走行テストをしてみた。
文:山口銀次郎/モデル・車両協力:葉月美優/協力:DUNLOP、SP忠男 浅草店

250ccクラスまで幅広いサイズをラインアップ

画像: 250ccクラスまで幅広いサイズをラインアップ

はじめに、SPORTMAX Q5がいかなる進化を遂げ、新たな思想と設計で造り上げられたかは、とてもわかりやすくメーカーのホームページにて紹介されているので、そちらをご覧いただきたい。

また、ノア・セレン先生のインプレッションもご覧いただきたい。ストリートタイヤでありながら、無類のサーキット対応スポーツタイヤの魅力の深淵に触れているレポートに刮目せよ! ですね。

先代を多角的に上回るポテンシャルを秘めるSPORTMAX Q5

画像1: 先代を多角的に上回るポテンシャルを秘めるSPORTMAX Q5

200ps前後を叩き出すスーパースポーツモデルをもメインターゲットに据え、自走からタイヤウォーマーなしでサーキット走行を楽しむ、そんなユーザーに応える性能だという。しかも、持ち得るポテンシャルの大半はサーキットでこそ活かされるという、一貫したシリーズパフォーマンスを多角的に向上させたという。実際に聞き知るところ、宣伝文句に偽りナシの誉れ高き商品力だと大絶賛なのだ。

SPORTMAX Q5のポテンシャルを知れば知るほど、「250ccではどんなフィーリングなのか?」と気になるというもの。気になりますよね? リッタースーパースポーツモデル(メガスポーツモデルも含む)加減速のエネルギーに備える構造は、250ccモデルの軽快な走行フィーリングを阻害しないものなのか? 気になるでしょ?

テストで訪れたのは、F1も誘致したことのある岡山国際サーキットで開催されたダンロップ主催の走行会「ダンロップサーキットステーション」。250ccモデルをフルに使い切るのにもってこいのフルサイズコースだ。

画像2: 先代を多角的に上回るポテンシャルを秘めるSPORTMAX Q5

コース確認も含めを軽く1周流しただけで、250ccモデルとの相性の良さがすぐにわかった。この点については、後に雨天時に公道を走る上で安心感にも繋がる、クセのないフィーリングであるということ。タイヤセンターの部分が高くなり尖った印象が強くなっているものの、直立状態から初期の寝かし込みといった動作で、バンク角が把握しやすい軽快さと安定感を生む形状といって良いだろう。もちろん、ハンドリングに抵抗感や重ったるさは皆無なので、スポーツラインディングに集中出来る設定であることは間違いない。

ちなみに、タイヤが冷え切っている走り始めから、硬質感やグリップ抜けの様なものは一切なく、しっとりと路面を捉えているグリップ力が伺えた。これは、公道の荒れた路面であっても同等で、大きな安心感を与えてくれるポテンシャルは、ストリートタイヤであることを認識させてくれる最も特筆すべき凄みといえるかもしれない。

タイヤ空気圧は、車両規定値でOK

速度レンジが高いコースなので、先生方々が言われる「フロントを潰す」等といった高度なテクニックを用いらなくても、2周軽く流すだけで素手で触っているのが不快なほどタイヤが温まっていた。前後のタイヤ空気圧は、車両指定の冷間時200kPa。初秋で曇り空の下、気温25度前後の心地良いツーリング日和の岡山国際サーキットを軽く流した私の足下は温まっている! タイヤが激温まっている! こんなにスポーツ走行に集中&安心感を与えるタイヤの熱のこもりようときたら、衝撃体験と言わざるを得ないでしょう。

タイヤが温まってもハンドリングに変化はなく、フルブレーキングからバンキング、そしてコーナリング中のライン変更等々、あらゆるシーンの印象が「軽快で素直なフィーリングはそのままでグリップ力だけが増している」といった具合。多少の追い込みで生じるブレイクやスライドも、確かなグリップ力の元でコントロールすることが出来る。このフルバンクからその先の高い自由度やコントロール性は、実に味わい深く250ccモデルにマッチしているからこその醍醐味といって良いだろう。

画像: 20分間の走行を行った後、表面は荒れているように見えて、安定したグリップ力を維持しハンドリングや乗り心地に影響なし。

20分間の走行を行った後、表面は荒れているように見えて、安定したグリップ力を維持しハンドリングや乗り心地に影響なし。

車両指定のタイヤ空気圧で硬めのフィーリングになるかと思いきや、問題はなかった。タイヤの温度が上がるにつれ、タイヤ内圧も高まり多少の調整が必要かと思いきや、問題はなかった。フロントタイヤを潰したり難しいライディングテクニックが必要かと思いきや、問題はなかった。……なんだこの「どんとこい!」状態は? 250ccモデルとのセットは、軽快さが活きる懐の深さと絶大なグリップ力による無双感は、問答無用にサーキット走行にオススメです!

ストリートタイヤこそタフでなければならない

さて、ストリートタイヤであるということも気になる点なので、市街地とジムカーナ的なパイロン走行を試みてみた

様々な環境&状況下の危険が満ち溢れる公道では、「とりあえずサーキットまでの移動用に」といった安易な性能では有り得ないし許されないのは周知のことでしょう。夜間や雨天時、そして厳冬期の走行といった、タイヤの熱入れというのが望めない状況も多々あるが、実際は安定感やクセのないグリップ感(グリップ力とハッキリしたものではないニュアンス)があり、法定速度内であれば不安要素は感じられなかった。

交差点内のホワイトマーカーやマンホールの蓋、落ち葉などが舞う中でも、路面を捉える感覚が嬉しく思えた。サーキットほどバンクさせるワケではないが、クイック過ぎないハンドリング特性である程度のコーナリングも許容範囲でかなり高い安心感を提供してくれる。ただ、あまりにも順応性が高く、あまりにも器用に対応してしまうのでライフは期待できないかもしれない……。

また、なんといっても、雨天走行時ですらさほど気になる挙動変化もなく、スマートに走行することが出来たのだ。それこそ溝が残っていても数年落ちの劣化したストリートタイヤのグリップ力より、ほぼほぼカットスリックタイヤのグルーブパターンの様な(実際には先代より寝かし込み部分の排水性が向上しているという)SPORTMAX Q5のほうが確実に勝っているだろう。雨天時に若干ナーバスになっていたからこそ、それは確かな手応えとして感じられたのだろう。

画像: ストリートタイヤこそタフでなければならない

極低速での転回や狭い間隔で左右の切り返し、そして狭スペースでの旋回等々、ストップ&ゴーが忙しない上にフルバンク時の加減速を必要とする、ジムカーナ的パイロン走行も行ってみた。サーキットから街乗りと、トータル的に信頼のおけるポテンシャルを知ることができたので、なぜかジムカーナで締めてみたい、と。

加速減速転回加速減速転回加速減速転回と畳み掛ける忙しない操作をするが、素直にそして軽快に(イメージかもしれないが)応えてくれるのである。前後共に柔い設定のショックなので、さすがに雑な操作をすればバタバタと落ち着きを失いイメージを裏切る走りになるが、しっかりメリハリさえつければ後はタイヤが良い仕事をしてくれる。速度は低いものの、極端に繰り返される加減速旋回のエネルギー負担と脱荷重がもろにタイヤにのしかかるが、250ccのパワーと車格ではビクともしないといったタフネスさを発揮。さすが200ps以上のモンスター相手に開発されているだけのことはある。

最後に、250ccモデルで多くのシチュエーションを走りに走って、SPORTMAX Q5の魅力に取り憑かれた私は、幅広いサイズ展開を行い多くのモデルでそのパフォーマンスが堪能できることを、また、とても面白いタイヤの誕生(だいぶ前だが……)に今後のスポーツライディングの楽しさが増したこと、今更ながら大変喜ばしく思う次第。

画像: 「気持ちイー!」オリジナルマフラーとタイヤのことならSP忠男でキマリ!

「気持ちイー!」オリジナルマフラーとタイヤのことならSP忠男でキマリ! 

文:山口銀次郎/モデル・車両協力:葉月美優/協力:DUNLOP、SP忠男 浅草店

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