MotoGP世界選手権2023年シーズンの開幕戦まで2ヶ月を切った。各チームローンチイベントを行う中、2022年シーズンで3冠を達成したドゥカティ勢も新しいカラーリングと新体制を発表した。今回は現時点でローンチイベントを行ったドゥカティ陣営の3チームについてチェックしてみよう。(2/6時点)

連覇を狙うワークスチーム「Ducati Lenovo Team」は強力なラインナップに

画像: 23年型「デスモセディチGP23」

23年型「デスモセディチGP23」

2022年シーズンを席巻し、「ライダー」「チーム」「マニファクチャラー」の3冠を達成したドゥカティ。エースライダーであるフランチェスコ・バニャイアがドゥカティライダーとしてケーシー・ストーナー以来のワールドチャンピオンに輝いた。

連覇を目指すドゥカティのワークスチーム「Ducati Lenovo Team」は2023年1月23日にローンチイベントを行い、2023年型「デスモセディチGP23」のカラーリングを発表した。

そこにはチャンピオンの証であるゼッケンナンバー1が誇らしく施されていた。実は近年のMotoGPで1番をつけることは珍しいことであり、チャンピオンを獲得してもパーソナルナンバーを使うライダーが多い。1番を身につけて走るのは、MotoGPクラスでは2012年のストーナー以来、実に11年ぶりのことである。

画像: 11年ぶりにMotoGPクラスでゼッケン1が走る。

11年ぶりにMotoGPクラスでゼッケン1が走る。

近年は栄光のゼッケン1をつけて連覇したライダーがいないため、バニャイアがジンクスを破れるかに注目だが、ドゥカティは強力なライダーをバニャイアのチームメイトとしてワークスチームに迎え入れた。

それは昨年までドゥカティのサテライトチームであるグレシーニレーシングで走っていたエネア・バスティアニーニである。22年シーズンは最高峰クラス2年目だったバスティアニーニだが、移籍したグレシーニレーシングでの初戦でもある開幕戦でいきなり優勝。

サテライトチームながら開幕戦での優勝を含めシーズン4勝をマークしランキング3位を獲得した。この活躍が認められ念願のワークスチームに昇格、バニャイアのチームメイトとして今シーズンを戦う。

昨年は91ポイントという大きなポイント差を覆しチャンピオンを獲得したバニャイアは4連勝を含む7勝を挙げた。リズムに乗ると強烈な速さをみせ、他を寄せ付けない走りをしたバニャイア。一方で、リタイアが5回とかなり成績に波がある。バニャイアの連覇達成にはこの成績の振り幅の大きさを緩めなければいけない。

画像: アンダーカウルには新たに「Monster Energy」のロゴが追加されている。

アンダーカウルには新たに「Monster Energy」のロゴが追加されている。

チャンピオンを獲得するうえで大切なのは、優勝できない時に、いかに上のポジションでゴールできるかだ。年間を通して安定した成績が求められるわけだが、今年のドゥカティの戦闘力が高ければ、バニャイアのライバルになるのは他メーカーのライダーではなくチームメイトになるはずだ。22年のように前半でバスティアニーニに先行されるようなことがあれば、チームは同士討ちを避けるべく、ポイントの多いほうを優先するためバニャイアは必然的に戦う権利が失ってしまう。

さらに、今年はスプリントレースが導入されるため全42戦と今までにないレース数で行われる。これまで以上に転倒がレースウィークに与える影響は多く、一度転倒してしまうと週末を通してポイントを全て失ってしまう可能性も十分にありえる。連覇の鍵は「安定感」だろう。

2015年のホルヘ・ロレンソとヴァレンティーノ・ロッシ以来、チームメイト同士でチャンピオンを争った例はない。今年は久々に熾烈で激しい同門対決が見れるかもしれない。

サテライトでトップのプラマックレーシングはラインナップに変更なし

画像: www.pramacracing.com
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ワークス以外にもドゥカティマシンを駆る2チームがローンチイベントを行っている。まずはドゥカティのサテライトチームであり、カスタマーチームとしてファクトリーサポートを受けているプラマックレーシングから見てみよう。

2023年1月26日にローンチイベントを行ったプラマックは今シーズン用にカラーリングされたマシンを発表。マシンはワークスと同じく23年型デスモセディチGP23で、昨年と変わらず赤、紫、白でカラーリングされている。22年シーズンからイタリアの保険会社であるPrima Assicurazioniをメインスポンサーに迎えたプラマックは細かな配色の違いはあるが、昨年と同じカラーリングとなっている。

画像: サテライトチームで唯一、23年型「デスモセディチGP23」が与えられているプラマック。 www.motogp.com

サテライトチームで唯一、23年型「デスモセディチGP23」が与えられているプラマック。

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ライダーは最高峰クラス3年目のホルヘ・マルティンと同クラス7年目のヨハン・ザルコが継続参戦する。マルティンはルーキーイヤーの21年にいきなりポールポジションを4度獲得、さらに第10戦スティリアGPではポールポジションからスタートしそのまま初優勝も達成した。22年は優勝こそできなかったが、ポールポジションを5回、表彰台にも4度あがっている。

Moto3を制し、Moto2でもルーキーイヤーから結果を残したマルティンは、小柄ながらMotoGPクラスにも素早く順応し、特に予選では他を圧倒するような走りを見せている。小排気量時代から単独でタイムを出していたマルティンは当時から高い評価を受けていたが、最高峰クラスに昇格しても印象的な走りを披露している。しかし、22年はリタイアが多くバニャイア同様、転倒回数を減らしたいところである。

チームメイトのザルコはMoto2クラスを連覇し、2017年に最高峰クラスに昇格。ヤマハのサテライトで速さをみせたザルコは、KTM、ホンダを経て2020年からドゥカティ陣営に加わり、21年からプラマックから参戦している。

誰もが認める速さを誇るザルコは最高峰クラスではポールポジション8回獲得し、表彰台には15回も上がっているが、未だに優勝がない。昨年はマルティン同様、リタイアが5回と安定感のない成績だっただけに、こちらも決勝での安定感が欲しいところ。

勝てそうでなかなか勝てない印象のザルコだが、優勝をきっかけに覚醒する可能性が非常に高いライダーなだけに目が離せない選手の1人といえる。

プラマックチームは必ず上位に食い込むチームでもあるので、トップ争いを激しく盛り上げてくれる存在だ。彼らの活躍は最後の最後までわからないレースを演出してくれるので、今年も速さをみせてもらいたいチームである。

グレシーニレーシングにはアレックス・マルケスが加入!

画像: www.gresiniracing.com
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22年シーズンはバスティアニーニが躍動し、ランキング3位という好成績を残したグレシーニレーシング。21年まではアプリリアと提携しファクトリーチームとしてMotoGPクラスに参戦していたが、同年にチーム代表だったファウスト・グレシーニ氏が新型コロナウイルスとの闘病の末逝去。

チーム代表にはグレシーニ氏の妻であるナディア・パドヴァーニが代表に就任し、この年限りでアプリリアとの提携終了を決定。22年からドゥカティのサテライトチームとして参戦した。

悲しみのなか、再出発した同チームに待っていたのはバスティアニーニによってもたらされた嬉しい最高峰クラスでの初優勝だった。サテライトチームながら勢いに乗った新生グレシーニレーシングはバスティアニーニとともにランキング3位を獲得し、大きな飛躍を遂げた。

そんなグレシーニレーシングも23年シーズン用にペイントされたマシンをお披露目した。マシンは1年型落ちのデスモセディチGP22でカラーリングは前年と変わらず、ライトブルーと赤をまとったデザインとなっている。

画像: 1年型落ちのマシン「デスモセディチGP22」で23年シーズンを戦うグレシーニチーム。 www.gresiniracing.com

1年型落ちのマシン「デスモセディチGP22」で23年シーズンを戦うグレシーニチーム。

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そして23年シーズンはバスティアニーニの昇格もあり新しいラインナップとなった。ライダーはファビオ・ディ・ジャンアントニオが継続参戦。そしてホンダから移籍したアレックス・マルケスが新加入した。

Moto3、Moto2クラスでチャンピオンに輝いているアレックスは最高峰クラスでは3年間ホンダで戦い、今シーズンからドゥカティにスイッチする。アレックスは兄のマルク・マルケスとは違い、時間をかけてマシンに順応していくタイプである。ドゥカティへのスイッチには少なからず時間がかかるかもしれないが、ワークス以外の3チームがドゥカティマシンに乗り好成績を収めている状況を考えると、ある意味ドゥカティは乗りやすいマシンなのかもしれない。アレックスがどのタイミングでマシンに順応できるかに注目だ。

継続参戦するディ・ジャンアントニオはまだ表彰台に立っていないが、ルーキーイヤーながら第8戦イタリアGPで最高峰クラス初のポールポジションを獲得するなど随所で光る走りをみせている。今年はチームリーダーとして活躍できるか楽しみである。

まとめ:河村大志

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