コンセッションが受けられなくなった今シーズンは勝負の年に
2023年3月10日、他チームが続々とローンチイベントを行う中、Aprilia Racingが開幕直前にようやくローンチイベントを実施。イベントでは23年型マシンのカラーリングが披露された。
Aprilia Racingは2022年シーズンをエキサイティングな年にした立役者と言って良いほど、大きな飛躍を見せたチームである。
第3戦アルゼンチンGPでアレイシ・エスパルガロがチーム初の優勝をもたらし、エスパルガロがシーズン終盤戦までタイトル争いを繰り広げるなど、目を見張るような成績を残した。エースであるエスパルガロがランキング4位、相棒のマーヴェリック・ヴィニャーレスも表彰台を2度獲得。2台揃って上位進出を果たしたことにより、シーズン序盤の活躍がフロックではないことを証明してみせた。
しかし、Aprilia Racingは2022年までコンセッション(優遇措置)を受けており、ライバルに比べ開発の制限が小さくなかった。しかし同年に初優勝を挙げチャンピオン争いに加わるなどの躍進を遂げたことにより、23年シーズンからコンセッションの適用対象外となった。
つまり、今年からライバルメーカーと同じ土俵で戦うことになる。その上でどれほどの競争力は発揮できるかに注目が集まっているのだ。
そんな注目度の高いAprilia Racingが公開した2023年型「RS-GP」は、黒をベースに赤のストライプが入ったカラーリングで、基本的には昨年と同じボディペインティングになっている。
どうやら23年型RS-GPは22年型を正常進化版で、細かいディテールを洗練させた印象だ。昨年同様、印象的なフロントウイングは健在だが、若干の角度の違う。スプーンやリアフェンダーなどの細部の変更が施されており、空力面に関しては今年も進化を遂げている印象を受けた。
ライダーラインナップは変更なし!磐石の体制で初タイトルを狙う
上記の通り、2022年シーズンに躍進をとげ、見事初優勝を達成したAprilia Racing。この記念すべき初優勝をもたらしたのがアレイシ・エスパルガロだ。
エスパルガロは2005年にロードレース世界選手権にデビューし、最高峰クラスには2010年から参戦。2017年からアプリリアのマシン開発を行いながらMotoGPクラスで戦ってきた。
これまで優勝経験がなかったエスパルガロとアプリリアだったが、2022年シーズンの第3戦アルゼンチンGPを悲願の初優勝を達成。勢いそのままにシーズン終盤までチャンピオン争いを繰り広げ、ライダー、チームともに大きな飛躍を果たした。
アプリリア7年目となる23年シーズンはエスパルガロにとってさらなる高みを目指す1年となる。開幕前に行われたセパンテスト、そしてポルティマオでのテストでも好調ドゥカティに次ぐタイムを残している。
昨年は速さをみせながらも、第9戦ではエスパルガロが周回数を間違えて貴重なポイントを失ったり、バイクの信頼性も万全ではなかったりと、ポイントの取りこぼしも目立っていた。今年はスピードはもちろんのこと、信頼性に加え、チーム力の強化が課題となる。
常に上位でのフィニッシュに加え、優勝回数も伸ばしたいところ。エスパルガロのさらなる活躍を期待したい。
エスパルガロのチームメイトは昨年同様、マーヴェリック・ヴィニャーレスが担当する。ヴィニャーレスは2013年にMoto3クラスを制し、翌年にMoto2クラスにステップアップ。
そして2015年にMotoGPクラスにスズキから参戦し、翌2016年には初優勝を達成した。2017年にヤマハに移籍するとチームメイトだったヴァレンティーノ・ロッシを凌駕する速さを見せ、年間ランキング3位を獲得。このままヤマハのエースとして活躍するものと思われた。
しかし2021年シーズンの途中でヤマハを離脱。同年の第13戦からアプリリアに加入し、今季はアプリリアからフル参戦2年目となる。
移籍当初はマシンの合わせ込みに苦労していたヴィニャーレスだったが、昨年から徐々に成績を上げていき、特にシーズン後半は表彰台を2回獲得するなど持ち前の速さが戻ってきた。
エスパルガロが作ってきたマシンなだけに、合わせ込みには苦労したヴィニャーレスだが、ヤマハ時代に見せていた速さも戻りつつある。ちなみに今季ヴィニャーレスが優勝すれば、最高峰クラスにおいて3メーカーでの優勝という史上初の快挙達成となる。
エスパルガロの活躍はもちろんのこと、ヴィニャーレスの久々の優勝、そして史上初の快挙にも期待してしまうほど、今のアプリリアは競争力がある。昨年に引き続きシリーズを面白くしてくれる存在であることは間違いない。開幕戦から目が離せないチームだ。
レポート:河村大志